みみ の だいありぃ

みみ の だいありぃ

差別と偏見2


「先生、相手の人はアメリカ人?」
「なんていう名前なーに?」
「どんな人?」
「写真みせてー」
いかにも、予想通りの反応です。
でも、アメリカ人と答えた時、「へー。じゃあ金髪の子供ができるのかな」にはちょっとびっくり。

おいおい。白人だけがアメリカ人じゃないんだよ。

うちの生徒たちはたいていカリフォルニアのロサンゼルス近郊のパロスバーデスという高級住宅街に住んでいます。
そこは山の上にあって、ビバリーヒルズとはまた少し雰囲気は違いますが、同じくらい高級で、平和そのもの。
学校には、各学年に1、2人の黒人がいればいいところ。
ほとんど白人とアジア系なのです。
そんな中、みーんな両親に守られ、日本の子達より全然すれないですなおーに(そしてかなり世間知らずに)育っています。
そして、そんな中アメリカ人は白人、となってしまうのです。
ま、それは仕方ない。
彼らには非はないのです。

さて私は旦那がアフリカンアメリカンであることに誇りをもっています。
私の子供だってアフリカンアメリカンになるのです。
私が選んだ道です。
自信をもっています。
でも、彼は生徒達(つまり保護者)に彼の正体を明かすな、と言います。
つまり、黒人であることを隠せ、と。
理由は一つ。
きっとそういうのを嫌う保護者がいるだろうから、ということ。
教育関係に携わっている限り、KEEP IT SECRET JUST IN CASE.
もちろん、プライベートなことだから、まあ、わざわざ言う必要はないですけどね。

彼はノースカロライナ出身です。
初め、良い地域に住んでいたため(と書くこと自体さみしいけど)、学校はほとんど白人だったそうです。
そこで、幼いながらに先生達からさえ人種差別を感じたそうです。
「君はすごく頭がいいのに、黒人なんだよね」
間もなく、黒人の多い地域に引越し転校したそうです。

それから彼は中学生のころからスポーツで頭角をあらわし、バスケのスター選手だったため、特別扱いをされるようになりだしました。
ある夜、黒人の仲間と白人サイドの町を歩いていたらパトカーに止められたそうです。
警官がフラッシュライトで顔を照らし、「ああ、君、バスケやってる○○でしょ。送っていくからここから離れなさい。ここは君たちの場所じゃないから。」
さて、バスケをやっていなかったらどうなっていたでしょう。
パトカーの後ろに手錠をかけられて、座っていたかもしれません。

白人で仲のいいバスケ仲間がいたそうです。
その子の両親もクールで、うちの彼の事をすごくよく扱ってくれていたそうです。
でもある時、その友達が問題を起こし、警察の留置所に入れられたことがあったそうです。
あんなにナイスだった友達のお母さんは「あんたたちと付き合っていたからこうなったのよ」と言ったそうです。

書き出したらキリがありません。
これは実際に彼が体験した話です。

日本で彼と住んでいたときの事。
電車のホームでケンカをしていて、彼を私が押してしまい、ホーム(始発の電車以外とまらないホームです。念のため)
から彼が落ちたことがありました「あぶねーな、クロンボ」

電車の中でも露骨に嫌な顔をして私達を見て、「きたねーな」と言った人々もいっぱいいました。
だいたいが中年以上。
仲良かった会社のおじさん(ごめん、偉かった)も、私が黒人と付き合っていると知って態度をかえた人も一人や二人、いました。

そんな中、彼はいつもわざとそういう人たちに微笑みました。
笑顔を浮かべ「ハロー」と言いました。
時にはウィインクかましました。

こちらも書き出したらキリがありません。
これは実際に彼と私が一緒に体験したものです。

私は人種差別のことなんて本当に分かっていない。
分かったフリは出来るけど、真剣に考えることはできるけど、彼みたいに小さいころから身近にあった問題じゃない。
大人になって初めて体験したこと。
ある程度人間が出来上がってから入ってきた「情報」となんら変わりないのです。

彼が小さい頃から身をもって体験したこと。
全部が全部人種差別者だとは限らないけど、少なくともそういう人は世の中に存在すること。
そのせいで私の評価が間違っても落ちて欲しくないとのこと。

職場仲間(つまり他の先生方)は私の旦那が黒人であることを知っています。
でも、子供たちには今のところ知らせていません。
(数人の生徒には実際にばったり出会ったこともありましたが、幸い、なのかな、その子達は日本帰国寸前まで私を慕っていてくれました)

私はまだ人種差別を根本から分かっていません。
まだまだ勉強不足です。
でも、彼の意見をリスペクトし、
「先生の子は金髪になるのかなー」という質問に対し「さあ、どうだろう」としか言っていません。

腹立たしい。
なぜ、金髪になってしまうのか。
素敵なチョコレート色の肌じゃ駄目なのか。

でも、彼のママ(おっと、私の義理のママ)の時代はもっと違っていました。
彼女が高校生の時、初めて黒人と白人両方が通えるよう学校が統合されたそうです。
デンゼルワシントンの映画でもありましたよね。
タイタンズでしたっけ?

黒人が奴隷として苦しんでいた時代だってまだつい最近。
でも徐々にましにはなってきています。

いつか、世の中が変わることを、もっともっと変わることを強く願います。

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