楽しい南の島

ナマステおばさんとの攻防!

『ナマステおばさんとの攻防!』

テープ屋から、ちょっと行った所に
そのアンティークを扱ってるお店はあった。

「ねえ、店員さんが、また床に転がってたらどうしよう?」
要らぬ心配をしながら、入り口を覗く。

そう言えば、バリのお店はみんなドアが開けっぱなし。
それに、薄暗い。
日本が明るすぎるのもあるけれど、
慣れるまで、なんとなく変な感じがした。

そのお店は、格段に薄暗く人の気配がしなかった。

「昼寝タイムで留守なんじゃないの?」
「いくらなんでも、あけっぱなしで留守にしないでしょ?」
ごしょごしょ言っていたら、奥から恰幅のいい女性が出てきた。

「いらっしゃい! 何をお探しですか?」
にこやかに彼女は言った。
「更紗とイカットを見せてください。」
ウンウン、と頷くと、棚から生地を出して見せてくれた。

ワクワク、どんなのかな?
…ちょっと、安っぽいぞ。
「もっと違うのが見たいの!」
こっちの反応を伺いながら、違う物を出してくる。

え~? これも変じゃん!
妙に派手。それに雑なのね。
10枚くらい全部変だよー。

じっと見ていたと思ったら、またまた棚から運んでくる。
今度は枚数も多くて、期待が膨らむ。

…………。なんだよ、これ~。
もう、帰ろうかな~。

彼女は、気配を感じたに違いない。
満面の笑みをたたえて、両手一杯に布を運んできた

これは美しいじゃないの!
最初からこれを出してよ! 全く~!

ん? 待てよ。
今まで見たあれを
「おお! 素晴らしい!」
って言って、お買い上げになるアホな観光客が多いってこと?
同類に見られてたのね。トホホ。

今まで見たのとは段違いの色使い、細かい表現。
これは、もう芸術品だね。

クリーム色の地色に鳥が飛び、花が舞う。
一目ぼれで、更紗はこれに決めた。

イカットも、何十枚も見せてもらった。
おばさんは最初とは別人。
楽しそうに説明してくれて、迷うとどっちがいいか教えてくれる。

全体に薔薇の花が織り込んであるのに決めた。
黒をバックに多色使いの縞模様に挟まれ、薄茶、ピンク、こげ茶で花が、浮き上がるデザイン。
サウ島の肩掛けなんだって。

とっても時間をかけた買い物だった。
最後の方は、芸術鑑賞みたいになっちゃったからね。

さ~て、ここからが勝負だわ!
「ディスカウント」してもらわなくっちゃ。

なにしろ、百万ルピア単位の買い物だからね。
根性いれて、安くして貰おう!!

「ビサ クラン スディキッ?」
お願いちょっと負からん?

おばさんもやりとりを楽しんでいるみたい。
よっ!太っ腹、そうとう安くしてくれた。

帰り際、
「テリマ カシ。」
と言う私達に、

「ナマステ。」
と両手を合わせて彼女は言った。
んん? インド人? 何処の人?

謎を残しつつ、買い物は終わったのだった。

あら、素敵なカゴ! その正体は?


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