waiting for the changes

waiting for the changes

03話:彼女の理由



飛び交う銃弾、飛来する小型ミサイルとそれを迎撃するミサイル。戦場と化したオーストラリア北西部。高層ビルが立ち並び、インド洋の拠点として発展してきた。
「ミサイル第7波接近!迎撃せよ!」
地上からGによる射撃と迎撃装置によって接近するミサイルは市街地の上空で爆発する。反政府軍のG部隊が次々に港から上陸し、制圧戦を仕掛ける。立ち並ぶ高層ビル群が上手い具合に弾避けとなって、世界政府軍の有利な戦闘が続いていた。
「桜!!」
「はい!!」
「そろそろ引くぞ」
「わかりました」
深い緑色のGから通信が入る。彼は桜の部隊の隊長でもあり、人生のパートナーでもあった。桜が「Gパイロットになる!」と言ったとき彼は反対しなかった。彼はそのときにあきらめたようにこう言った。「桜は一度決めたら聞かないだろ?」桜は嬉しかった。大切な人と共に戦えることが。
引き上げようとしていたそのとき通信が入って来る。
「戦闘機・・・いや、Gタイプらしきものが急速接近中・・・機体照合・・・、これは!“漆黒の鷹”です!!」
「何?」
既に世界政府軍にも知らぬ者はいないだろう。“漆黒の鷹”1年ほど前、メキシコに突如現れた黒い戦闘機、それはGへと形を変えた。技術的に不可能とされた世界初の可変型のGだった。その圧倒的な戦闘能力は世界政府軍にとっては脅威以外の何者でもなかった。
「どうするんですか?」
桜は彼に問う。
「こっちのこの数と地形を利用すれば勝てない相手ではないさ。このビル相手だと“鷹”は人型にならざるを得ないからな」
「わかりました」
「よし!警戒しつつ、3ブロックまで前進」
盾とライフルを構えた深い緑のGは歩みを進める。その後ろに同じ型のGに乗る桜が続く。
「第2、3,5部隊全滅!」
「・・・っ、予想以上の強さだな・・・」
押し殺したような声が桜に届く。そのとき、2ブロック先で閃光が走った。
「何だ!?」
「ああっ・・・」
ビルの間を吹き抜ける突風に桜たちのGもよろめく。Gに強い衝撃が襲い、モニターにノイズが走る。思わず目を閉じた桜が目を開けるとモニターには赤いものが映っていた。血だった。
「何が起きたんだ?」
司令部に通信を送るが返事が来ない。他の部隊にも送るが、・・・返事は無い。2ブロック先は隕石が落ちたような跡があった。
「何だこれは・・・」
そのクレーターの中心には何かが地面に突き刺さっていた。ちょうどGが1機入るくらいのカプセルだった。そのとき、彼の機体を弾丸が掠める。
「ちっ・・・、さっきの衝撃でイカレたみたいだな」
どうやら、このカプセルは反乱軍のものではないらしい。先ほどの衝撃で通信機能も故障したらしく、“漆黒の鷹”の声が聞こえてきた。彼は通信を開く。
「漆黒の鷹!お前のものじゃないのか?」
「何だ?通信?何処からだ!」
「ここはお互い引くことにしないか?」
「ああっ!?」
そう言った矢先、カプセルが開いた。湯気を吐き、薄暗い中から異質な見たことも無いモデルの白いGが現れる。
「・・・お前は!あのときの!!」
「な、なんだ?どうしたんだ?」
どうやら、“漆黒の鷹”とあの白いGは顔見知りのようだ。もっとも、会話からは仲が良いとは思えない。
「排除する」
「上等だ」


先に仕掛けたのは鷹だった。ロングライフルを切り離し、両手にレーザーブレードを構え、一気に距離をつめた。あのカプセルのお陰でビルが吹き飛び、結構な広さが出来上がった。鷹にとっては能力を生かすにはもってこいの場所だった。白いGもブレードを構えた。ブレードを構え、鷹の攻撃を受ける一連の動作は桜には人間の動きのように見えた。あれほど滑らかに動くGは見たことが無い。その白いGはあの、「漆黒の鷹」を翻弄していた。
「ちっ!どういうことだ!?見切られている!!?」
鷹の驚愕の声が聞こえる。
「桜」
「は、はい」
今まで黙っていた彼が口を開いた。そのあと鷹に聞こえないように接触回線を開いた。続けられた言葉に桜は驚いた。


「鷹を援護する」
「どうして?鷹は世界政府の敵なんですよ?しかも、あの白いGにやられてしまえば私たちは嬉しいじゃないですか!」
「鷹がここで敗れれば、俺たちはどうなる?」
「それはー・・・」
桜は答えられなかった。どちらかと言えばまだ鷹の方が話は出来た。あの白い方は「排除する」としか言わない。恐らく、鷹を撃破したあと、目撃者である私たちを排除することは目に見えていた。
「桜はここにいろ。今の装備ではやつらには無理だ」
「・・・はい」
「心配するな。この状況だと鷹も援護はうれしいだろ?ちゃんと帰ってくるよ」
そう言って彼は開けた場所に飛び出して行った。


「くっ!ヤバイ!!」
白いGの左腕に内蔵されたエネルギー砲が火を噴く。鷹は2年前のデジャヴを覚えた。そのとき、2機の間に割って入る深い緑のGがあった。そのGはエネルギー弾を盾で受け止めた。攻撃を受けた部分が一瞬で蒸発する。
「何のつもりだ?」
「ここは協力したほうがいいだろう?」
「・・・そうだな。悔しいが助かったぜ」
鷹が協力を受け入れることには自信があったが、鷹はそれ以上の反応を示してきた。そのとき彼は思った。鷹は自分たちが思うほど悪い人間ではないのではないか?と。
「行くぞ」
「おおっ!」
黒いGと深緑のGが白いGに斬りかかった。
「・・・ターゲット増加。排除する」
桜は祈るしかなかった。モニターは血で前は半分ほどしか見えない。それに狙撃用ライフルだけではどうしようもないのだ。2人の声は既に聞こえない。聞こえてくるのは火を噴くブースターの音とブレード同士がぶつかる音だけ。それがさらに恐怖を掻きたてた。
「があっ!!」
「大丈夫か?もう下がれ!」
さっきまで敵だった鷹が自分の心配をしている。とても不思議な感覚だった。やはりこの鷹は今まで戦ってきた反政府軍の中でも何かが違う。そして、彼はある覚悟をした。
「鷹、よく聞いてくれ・・・」
彼はある提案をした。
「バカなことを考えるんじゃねぇ!!今は一応仲間じゃなねぇか!」
「その言葉を聴いてますます、こうしたくなった」
「くっ・・・」
「もう方法は無いぞ?」
しばしの沈黙のあと、鷹は一言だけ答えた。
「ああ・・・」


爆発が起きた。
桜は我慢が出来なくなった。
そして彼に回線を開き、広場に飛び出した。
そこには衝撃的な光景が広がっていた。
「・・・漆黒・・・鷹・・・り・・・うぁ」
彼の乗るGからの最期の言葉だった。Gのコクピットを鷹のGのブレードが貫き、白いGがバラバラになって燃えていた。
「きゃあああぁぁ~!!!!」
黒いGはゆっくりと彼のGから離れ、こちらを見た。桜はキレた。
半分見えないモニターにもかかわらず桜は黒いGに飛びかかった。黒いGは桜の突進をかわした。
「よくも、よくもー!!!私の!!!」
黒いGは残されたもう1つのブレードで、桜のGの足を切り落とした。バランスを崩し、地面に落ちる。通信で鷹が何か言っていたが、桜には聞こえなかった。黒いGは戦闘機へと変形しその場を後にした。


あのとき以来、桜は「漆黒の鷹」に復讐することが人生のすべてとなった。
パイロットとしての腕も上げ、接近戦を得意としたブレード2刀流のスタイルを取った。
“乱れ桜”という名前もここから付けられた。
これも、あの鷹に復讐を果たすためにあえて同じスタイルを採った。
その美貌と実力を兼ね備えることが出来た桜は世界連合でも有数の大部隊の隊長となった。
部下にも信頼され、よき隊長の姿の桜はそこにいた。

しかし、内に秘めたものを知る部下はほんの一握りもいない。


「いつか・・・、きっと」
彼女が再び“漆黒の鷹”と対峙するときはそう遠くは無いだろう・・・。



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: