waiting for the changes

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09話:あの場所で


「でもっ!“乱れ桜”ですよ!」
「言い訳はいらん!」
部下に隊長は怒鳴りつける。オーストラリア北西部から進攻中の反政府軍が1機のGに襲撃を受けた。全機カモフラージュマントを装備した隠密性の高い機体が並ぶ。たった1機の薄い桜色の2刀流のGがそれらを圧倒していた。
「こんなものなの?」
桜のGは急所を攻撃せず、Gの頭部や武器を持つ方の腕だけを破壊し、戦闘能力だけを奪っていく。それはGパイロットとしての腕の差を見せ付けられている証拠でもあった。機械的ながらも流れるような美しい姿だった。あっという間に残されたのは地上ステルス艦のみとなった。
「最後よ」
桜がトドメの一撃を与えようとしたとき、ステルス艦のハッチが開き2機のGが現れた。2機とも深い青色をしている。桜は感じる。「さっきまでのとは違う」そのうちの1機が突然急加速した。急加速した深い青色のGは桜のGをナックルで吹き飛ばす。
「くうっ!」
桜は辛うじてブレードで受け止めたが、反動は大きい。攻撃を受けた左側のブレードに亀裂が入る。その上、Gの左腕も反応が鈍い。どうやら左腕までやられたようだ。桜は思い切って左のブレードを投げ捨てた。ただ投げ捨てるだけではなく、深い青のGに向けて投げつけた。が、あっさりと回避されてしまうが後ろにいたステルス艦に突き刺ささった。結果オーライと行こう。
「何をやってるんだ!」
「ハッチに刺さっただけでしょうが・・・」
今まで動かなかった方のGパイロットは激怒する指揮官をさらっと受け流した。
「それよりも・・・」
そのGは2本のブレードを構える。冷静な、それでいて少し楽しそうな声でパイロットは言う。
「“乱れ桜”を片付けるのが先でしょ?」
ファイティングポーズを取るGと2刀流のG。1つのブレードを失っている桜は、絶体絶命の状況に置かれた。


「私一人で行くわ」
桜の提案に部隊の面々は心配の声や反対の声があがる。
「相手は移動に専念しているわ。それに大人数で攻めても気づかれてしまう。だから私一人が行くわ」
「しかし!」
「私が信用できないの?」
「それは・・・」
そう言われてしまうと、もう何も言えなくなってしまう。桜の実力は世界政府軍の中でもかなりのものだ。その上大きさで1、2を争う大部隊を率いている桜はカリスマ的な存在だった。
「それに、このオーストラリアの北西部は何としても取り返したいの」
桜にとってそこは最愛の人を失った特別な場所なのだから。


「きゃあ!!」
ナックルをかろうじて回避しても、すぐに2本のブレードが桜のGを掠める。抜群のコンビネーションを見せる2機のGにただ弄ばれるだけだ。機体は傷つき、あの左腕はもう無く、桜自体もコクピットが衝撃で押しつぶされた影響で、左腕を怪我していた。
「もう、ダメなの・・・?」
桜が諦めかけたその時、ナックルを持つGが被弾し、右腕が吹き飛んだ。
「何だ?」
「どうなっている?レーダーには何も反応がないぞ!?」
慌てる指揮官の怒声が響く。何処から攻撃されたのだろう、そう考えた瞬間、ナックルの深い青のGが縦に真っ二つに割れる。超高速で空からそれは現れた。通信をかけて来たので桜は回線を開く。
「“乱れ桜”か?こちらは依頼を受けて来た傭兵だ」
桜は驚く。極東地区で有名なあの“灰色の弾丸”だった。“灰色の弾丸”は機体を急旋回させ、一気に上昇する。思ってもいない増援が現れたことで、2刀流の機体は攻撃対象を変えざるを得ない。
「レーダーには反応しなかったぞ!?」
「そんなレーダーじゃこのスピルスは捉えられない」
深い青のGの言葉を知ってか知らずか、桜に開いたままの通信に“灰色の弾丸”の声が聞こえてくる。それは恐るべきスピードだった。
急上昇したスピルスは、一気に降下する。あんな動きをすれば普通のパイロットなら気絶してしまう程の負荷がかかっているのだろう。ブレード抜き、あっという間に深い青のGは、沈められた。それはまさに“灰色の弾丸”と呼ぶにふさわしい姿だった。
「あとは・・・」
“灰色の弾丸”はステルス艦に向き直った。武装が機銃程度しか施されていないステルス艦はなすすべも無く破壊された。


「どうして・・・」
「あなたの部下からの依頼を受けた。やばくなったら助けろ、と」
「・・・ギリギリだったじゃない」
「最初からいたぜ」
さらりと言う“灰色の弾丸”に桜は驚く。
「じゃあ、私がやられるのをずっと見ていたの!?」
「まあ、そういうことになるな。コイツがあればすぐにでも駆けつけられる」
確かに。高性能なレーダーでないとあのスピードを捉えることはまず、不可能と言っていいだろう。機体だけではない、彼の腕も相当なものだ。桜は苦笑して、機体のことで質問した。それと同時に傷ついた機体で構えを取る。
「そうね。でも、あなたの機体、スピルスって言ったわね?それって、あのスピルスなの?」
「そうだけど、どうする気だ?」
「何故あなたが!?あれは、世界政府連合が元々作ったGよ!」
「ならどうする?」
「傭兵の手に渡っていた以上、破壊するしかないわ」
「その状態で俺に勝てるのか?」
“灰色の弾丸”も戦闘態勢を取った。このままじゃまず勝ち目はない。しかし、“灰色の弾丸”はブレードをしまう。
「今は、依頼が優先だ。決着はいずれ」
そう言い残し、“灰色の弾丸”は去っていった。桜は見送ることしか出来なかった。
「うっ・・・」
緊張が解けると、左腕の傷がうずきだす。通信が入り、部下たちの声が聞こえる。平原の彼方に味方達の影が揺らめき始めていた。


同時刻、火星衛星軌道上。

オペレーターが珍しくない反応を見つける。しかし、その大きさは通常のものではなかった。
「・・・ゲート反応を確認!巨大です!」
「場所は?」
「2時の方向、距離2000」
「警戒態勢!待機中のGパイロットには出撃準備を」
指揮官が的確な指示を部下に与える。火星は勢力的には反政府軍の方が強い。世界政府軍は火星の衛星軌道上に部隊を展開していた。1隻の超大型空母を筆頭に10隻以上の宇宙巡洋艦や強襲型輸送艦が並ぶ。そして50機以上のGが展開していた。これほど巨大なゲート反応は一般に使われているものでは到底考えられない。軍事利用されているものよりもかなり大きい。援軍の要請、通信もない。戦時下においてのゲート利用は統制が掛けられている。つまり考えられるのは・・・反政府軍、それしか答えは無かった。
「来るぞ!!」
扉が開いた。白い戦艦が数隻現れる。それは見たことも無い型の戦艦だった。Gの姿はいまのところ確認できない。世界政府軍の指揮官は先手を打った。
「撃てーっ!!」
巡洋艦のエネルギー砲が火を吹く。しかし、それを見越していたように白い軍団の指揮官の女性は冷静に命令を出した。
「回避運動!!」
白い戦艦たちは簡単に回避し、反撃に移る。エネルギー砲を放ち、陣形を取り始める。補助のブースターを装備した数十機のGが現れ、一気に世界政府軍艦隊との距離を詰めた。しかし、それは世界政府軍のG部隊が許さない。
「準備が出来ました」
「わかったわ」
部下からの通信にその女性はうなずいた。全チャンネルで回線を開く。
「我々は、“Z・・エンジェル”我々は・・・世界連合政府、エデン計画に異議を・・唱える者です」
「全チャンネルでの通信です」
世界政府軍オペレーターは振り返りながら、指揮官に告げた。
「・・・ん?天使・・・か?」
丁度その時、世界政府軍のGパイロットが白い戦艦達の船体に描かれた天使のエンブレムに気づいた。
「女・・・だと?」
「世界政府軍艦隊に告げます。貴方達は世界政府に騙されている。エデン計画の真意・・・」
その声を掻き消すように指揮官は声の反撃に出る。
「黙れ、反政府軍め!貴様らに貸す耳は無い!」
「我々は反政府・・・ではありません」
「はっ・・・、そんなこと関係ない!我々の敵=反政府軍だ!全機、敵母戦艦に攻撃を集中!!」
「仕方・・ありませんね」
そう言って通信は切れた。そして、閉まりつつあった、ゲートから異様な形をしたGが現れる。純白の輝く細身の機体に背中に天使の羽根のような大型の何かを背負っていた。その女性がその機体に乗っていた。大人の女性というより、まだ幼さが垣間見える。
「アンノウンを確認!機体照合・・・ありません!光学映像出ます!」
「・・・なんだあれは」
映し出された映像には見たことも無い機体が映し出されていた。相手側も世界政府軍側も数隻の戦艦、巡洋艦を失い、白い軍団にはほとんどGが残されていない。
「セーフティ解除、全砲門ロック開始。Lシステム起動」
「了解」
純白の機体から人間的な男性の声が聞こえる。凄まじいスピードでGや巡洋艦にロックされていく。背中の羽根のようなものは全てエネルギー砲の砲門だった。更に腕、足、通常のGより3倍近く大きな手の指先1本1本さえもエネルギー砲である。背中の真ん中の大型の筒状のものが展開し、光が収束し始めた。コンソールパネルに「ロック完了、チャージ中」と表示された。男性の声が告げた。
「チャージ完了」
「・・・・・・」
その女性は無言で引き金を引いた。数十のエネルギー砲が一斉に火を吹いた。世界政府軍のほとんどのGは何が起きたか分からないまま、戦闘能力奪われていく。
「なんだ!?」
「うわーっ!!」
目の前の光景に世界政府指揮官は言葉を失う。純白の機体は撃ち終わると砲門をまたもとの羽根のような形に戻して、急加速してきた。Gのスピードと思えないくらい速い。
「行くわよ」
「Lシステム、100%で稼働中」
巡洋艦に一気に迫り、ゼロ距離で両腕、両指からエネルギー弾が放たれる。あっという間に3隻の巡洋艦が沈められた。
「し、信じられん」
残されたのは巡洋艦1隻と超大型空母と数機のGだけだった。その時女性から通信が入る。
「撤退しなさい」
「何!?」
「その戦力で私たちに勝つことは無理です」
冷静に女性は続ける。悔しいが撤退する以外に手はないようだ。世界政府軍指揮官は撤退命令を出した。
「全機撤退!!」
世界政府軍は火星の衛星軌道上を後にする。距離が離れると、純白の機体の女性はため息をついた。震える声で、女性は機体に話しかけた。
「どうして・・・みんなは・・・」
「まだ皆真実を見極めてはいない。それまで待つことだよ」
“機体”は優しい言葉で返してくる。その言葉に女性は涙を拭ってうなずいた。白い艦隊も撤退をし始めた。
「時が来れば、な」

純白の機体の声が女性の心に重く響いた。



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