waiting for the changes

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13話:SKY CRASH


「パイロットは至急ブリーティングルームまで集合してください。繰り返します、パイロットは・・・」


「鷹山君、ハイオルス君、カールトン君。そろそろハワイだ。鷹山君はオセアニアでの戦闘の疲れが残っているかもしれないが、頑張ってくれ」
「ああ、心配すんなって!」
艦の指揮官に翼は胸を叩いて答えた。ヴィラもバラッドも同じように頷く。翼たちと同じような反政府軍の腕利きのパイロットで編成された独立部隊が12部隊編成された。その中でもナンバーワンの実力を持つ部隊だった。といってもメンバーは翼が特別編成した“部隊”とメンバーは変わらないのだが。
「分かっているかと思うが、傭兵部隊も排除しなくてはならない。彼らは世界政府軍より厄介かもしれない。彼らも同様に世界の敵となり得るからな」
指揮官は大型のモニターに映し出されたハワイのマップを指し示す。衛星で手に入れた基地の映像も同時に映し出した。
「この艦は空を飛べるが、他の艦は水上戦艦がほとんどだ。機動力は望めない。よって、君たちは、先行して我々のGが上陸する突破口を作って欲しい・・・出来るな?」
「ああ、イケるぜ」
指揮官からの命令に翼は自信たっぷりに答えた。が、バラッドは質問を投げかける。
「俺はどうすれば良い?2人と違って俺の機体に飛行能力は無い。先行は厳しいな」
「心配するな。飛行アタッチメントが用意してある。作戦領域に入れば機体を投下するんだ。後は遠隔操作でアタッチメントはこっちが回収する」
モニターにはその飛行アタッチメントの映像が映し出された。短距離を飛行するための簡素なものだが、スピードは結構出そうだ。
「おー、コレで上等じゃねぇか。な?」
モニターを見ていた翼が振り返って、バラッドを見て笑った。バラッドも「コレならいけるな」と笑っていた。作戦開始はもう直ぐだ。


「どういうことだ・・・?」
「あー、見た感じ・・・はっきり言って、ぶっ壊されてるな」
飛行能力を持っている機体に乗るレッシュと翔は上空からそれを見ていた。隣接している、といっても50メートル離れている第8、9フロートだが、橋で繋がっているため、隣接というより1つのフロートと考えたほうが早い。そのフロートが完全に破壊されていた。反政府軍の仕業なのだろうか。
「レッシュ機からです。EVEからのフロートの接近映像・・・でます。」
レイザーの大型モニターに破壊されたフロートの映像が映し出された。それをクルー全員が見ていた。ミコがそれを見て気づく。
「爆撃・・・じゃないわね。これは熱による融解」
「そうだ、上空からのエネルギー兵器による攻撃だ」
レッシュが通信でミコの言葉に続ける。フロート、エネルギー兵器、戦闘機。“あの時”とほとんど同じ状況に背筋に汗が流れる。上空を旋回しながらレッシュは思い出していた。
「しばらく私と亜実と亜希は出れないんだねー」
「私たち全員無理よ。あとは、貴子がレイザーの上に取り付いて迎撃するだけね」
あーあ、と言っているクルスにミコが言う。飛行能力を持たない彼女たちの機体では今は役に立たない。海に消えるだけだ。
「では、私は準備しますね」
そう言って、貴子はコクピットから出て行った。レイザーのコクピットは通常の“輸送機”とは比べ物にならないくらい広い。艦に関するすべての事をシェリーと友子の2人で行えるようになってはいるが、こうして人手が余っているときはクルスたちがその「お手伝い」をしている。
「機影ゼロ。警戒続けます」
「フロート上に“生きている”機体は見当たりません」
亜実と亜希がそれぞれの目の前にあるモニターのデータを読み上げる。次々と更新される情報は変わらないものばかりだ。優美は情報を解析しながらまとめていた。
「隊長?そっちはどうですか?」
クルスがレッシュに向かって呼びかけた。レッシュからは「異常は無い」と返ってくる。クルスはため息を付いてシートにもたれ掛かった。
「さっさとハワイまで入っちゃおうよ」
「もう少しね。完全なデータが取れたらさっさと離脱するわ」
その時だった。コクピットルームに赤い灯が点る。クルスはビックリしてシートから落ちそうになった。亜希が叫ぶ。
「ロックされました!!」
「どこよ!?貴子さん!見える?」
クルスがレイザーの上で取り付いている貴子に通信を送る。貴子はスロウ内のコクピットで辺りを見回したが見えるのはフロートの残骸と赤い戦闘機と灰色の機体、それと青い海と空だけだ。
「隊長!本艦がロックされました。至急防衛にあたってください」
友子がレッシュと翔に通信を送った。が、既に2人はこちらに向かって来ていた。翔はもうレイザーの下側に到着し、急停止する。
「どこだ!?」
空を切り裂きエネルギーの塊が真っ直ぐレイザーを捉えた。それは艦の死角と呼ばれる艦後方下部からだ。直撃コースだった。
「下!!ダメ!!」
クルスは正規のオペレーターではない。オペレーターとしての訓練も受けていない。友子より早く気づいたクルスだが、とっさのことに抽象的な単語でしか表現できなかった。シェリーが目一杯回避運動を取った。間に合わない。光の塊が噴射口に吸い込まれる瞬間だった。その光が眩いばかりに拡散した。拡散した光の流動が消えたとき、そこには赤いGが盾を構えて飛行していた。
「大丈夫か!?」
レッシュからの通信にコクピット内がどっと沸いた。皆に安堵の表情が見える。クルスはほっと胸をなでおろし、優美の方を向いた。モニターに釘付けになっていた優美も同じように胸をなでおろす。亜実と亜希は顔を見合わせて笑った。
「隊長、機影は?」
友子がレッシュに冷静に問いかける。
「そっちは“見えてるか”?俺は“見えている”」
「え?」
理解するのに難しい言葉が返ってきた。レッシュは“自分の目”で見えているものをレイザーに送った。EVEがあの文字をモニターに映し出し、叫ぶ。そして、レッシュは一言付け加えた。
「ヤツだ」


そこには3機の白いGがいた。それは宙に浮いている。あの時見た機体とバックパックが若干違う。飛行タイプなのだろうか。
「嘘・・・あれって・・・」
「あの時の白いG!」
クルスとミコが青くなっていた。それはモンゴルで見たあの白いGだった。その圧倒的な力を二人は知っている。ほかの彼女たちもレッシュを倒したGだということだと分かっているが、現場でその力を目の当たりにしている二人は違う。見えているが、レーダーには映らない。あの時と同じだった。
「シェリー!離脱して!無理よ!」
「お・・・、O.K!」
ミコの剣幕に押されシェリーは出力を上げる。
「隊長も早く戻ってきて!」
「無理だ。ヤツからは逃げ切れない」
クルスの叫びをレッシュは断ち切った。翔もスピルスをレッシュの機体の横にフワリと付けた。
「俺も付き合うぜ」
「悪いな、もし死んだら俺の運命を呪ってくれ」
「今更何言ってんだよ。お前は前から運がいいじゃないか」
翔の言葉にレッシュは真面目に返した。だが、翔はおどけて言う。一瞬だが緊張がほぐれた。EVEが2人の間に割って入る。
「無理です!勝つことなど不可能です!」
「もう、遅いよ」
レッシュはEVEにゆっくりと語りかけた。「サポートしてくれ」の言葉に間を置いて「了解」と言った。やはり、不思議なAIだ。
「じゃあ、行くぞ!!」
レッシュは機体を戦闘機に変形させ一気に仕掛けた。それに翔も続いた。


「Linkerシステム起動!EVEサポート頼む!翔!援護してくれ!!」
「了解」
「任せろ!」
視界がクリアになる。感覚も鋭くなり、機体の隅々まで自分の思い通りになっていく。レッシュはミサイルを放ちエネルギー砲が火を吹いた。3機の白いGはあっさりと回避する。だが、レッシュは回避されることは予想して攻撃を放った。そのうちの1機の回避先に灰色の機体が居た。抜いたブレードで左腕を切断する。直撃を避けた上に致命傷にも至っていない。
「何!?速いな」
翔がぼやいた。あれだけの距離を一瞬にして詰め、そしてレッシュの作戦を一瞬にして理解した翔も流石だが、白いGはそれに反応し、致命傷を避けた。やはり、勝つことはできないのだろうか。
「貴子さん!そこから狙える?」
「・・・やってみるけど、速すぎて厳しいわ」
貴子は改造された400ミリ砲のロックを定める。ある程度距離をとったレイザーではレッシュたちを援護しようと試行錯誤していた。優美はレッシュに通信を開く。
「レッシュ!援護します!」
「やめろ!狙われるぞ!」
レッシュの言葉に優美はビクッとした。考えてみれば、このまま攻撃するとレッシュたちに当たる恐れがある。もし、白いGに命中しても白いGは攻撃目標をこちらに変える恐れがある。レッシュはそれを避けたかった。
「こいつらの狙いは俺だ!そのまま離脱しろ。ある程度片を付けたら追いかける!」
「でも・・・!」
「心配するなって。俺は大丈夫だ」
それっきりレッシュは通信を切った。優美は目をぎゅっとつぶって手を組んで祈る。もうそれしかできなかった。祈る気持ちは皆同じだった。
「“F”か」
「損傷軽微、左手を欠損。作戦に支障は無い」
「・・・スピルスを確認。排除の確認を」
白いGのそれぞれが仕掛けてくる。機動力に置いてはクリムゾン・イーグルとスピルスの方が上だった。白いGのエネルギーライフルの攻撃を回避する。3機はコンピューターのように正確なコンビネーションで攻撃してくる。そのうちの1機のGはスピルスに追いついてきた。
「速い!!だが!」
スピルスはただ速いだけではない。戦闘機に匹敵するスピードと切り返しによる超高機動機体。そのためグラビティ・キャンセラーをも振り切れてしまう。そのGに耐えられるパイロットしか操ることができない機体だった。翔は追いついてきた白いGの真横に回りこみマシンガンを至近距離で発射した。だが、全く効いていない。
「ジェネレーター・フィールドか!?」
レッシュが攻撃を回避しながら叫ぶ。翔は攻撃が効かないと分かると囮になって、白いGを撹乱し始めた。スピルスのスピードに白いGたちは全く追いつけない。完全に翻弄されていた。
「レッシュ!今のうちだ!」
「ああ!」
レッシュは機体を人型に変形させた。同時に戦闘機形態の腹部に取り付けられていた銀色の長いライフルを構えた。長方形の砲身が上下に展開し内部は筒状の砲身が現れる。6連の大型のリボルバーが1つスライドした。銃後方に放熱装置と出力安定装置を兼ねたフィンが展開した。EVEの環境最適化が100%となった時、レッシュはトリガーを引いた。リボルバーが輝き、砲身からエネルギーが溢れる。強烈な光が収束し、白いGを捉えた。一撃で急所を捉え跡形も無く破壊した。
「・・・すごっ」
「今の何?一発であいつを倒しちゃったし」
レイザーのコクピットは、今度は静まり返る。レッシュの機体に搭載された、真琴製作の新兵器“シルバー・アロー”。白いGたちの連射できるエネルギー兵器を元に作り出したのだという。どうやって作ったのかはわからないが、前から連射できるエネルギー兵器を作りたいと言っていた。そして、“シルバー・アロー”がそれだった。
「2号機ロスト」
「危険レベル3に移行」
白いGの1機は目標を変えた。一気にレイザーに詰め寄る。
「くそっ!間に合え!!」
翔はスピルスでその白いGを追いかける。それをもう1機の白いGが妨害する。
「“F”と共に消えてもらう」
「ちっ!」
その妨害した白いGは赤いGに妨害される。右足を“銀の矢”が貫いた。その白いGはバランスを崩して失速した。そして、攻撃対象を“F”に定めた。レッシュは翔に叫んだ。
「行けっ!!翔!!」
「迎撃!!」
クルスの号令でミコがマニュアルで迎撃システムを起動させる。ミサイルや砲撃が白いGに向かっていく。しかし、簡単に回避され、命中したものもジェネレーター・フィールドに阻まれる。迎撃の攻撃スパンの隙間に一気に詰め寄られ絶体絶命に陥った。
「シェリー!回避して!」
クルスの言葉と同時に白いGからエネルギー弾が放たれた。そして、それとほぼ同時に貴子の400ミリ砲が火を噴いた。400ミリ弾が白いGを捉えた。頭部が破壊され、バランスを崩したが、白いGの動きは止まらない。エネルギー弾が発射された。シェリーのとっさの回避もあって、艦への直撃は避けられた。だが、艦上には貴子のスロウがいた。エネルギー弾が貴子のスロウを捉えた。
「きゃあぁぁぁ!!!」
スロウの頭部、右腕、400ミリ砲が爆発する。スロウが炎に包まれた。
「貴子!!」
翔の叫びの前で貴子の機体は崩れていった。




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