句と首 ～その8～
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～その7へ～
*2009年 5月*
5月3日
友逝くと
メールの届く
午後の窓
みかんの花の
香り漂う
5月8日
電車待つ
人等こぞりて
仰ぎ見る
一日の終わりの
虹は嬉しき
5月10日
うつむきて
種こぼすこと
知らぬまま
五月の朝は
緑に晴れし
5月27日
甲高き
幼等の声に
交じりつつ
忘れしことども
窓よりにほふ
*2009年 6月*
6月21日
夏至の日の
コーヒーゼリーは
チョイ苦く
娘の好みに
合わせようと 父
*2009年 7月*
7月19日
ももとせを
見事生きぬき
祖母逝くも
遠くにありて
吾瓜をむく
*2009年 8月*
8月2日
葉も茎も
朱き覚悟で
夏を射る
その腕前の
嫉ましきほど
8月9日
この水を
旨しと思う
日常を
忘れまじとぞ
今日九日に
8月23日
見下ろして
七本足の
蜘蛛笑う
囲いの中では
ゆるまぬものか
8月31日
たちまちに
空白の時
飛び越えて
笑い出す友
スイッチは同じ
*2009年 9月*
9月5日
出来立ての
横断歩道の
白ければ
歩幅を変える
子等の姿よ
9月20日
秋風鈴
風手なずけて
微かなり
9月30日
群れ咲くも
漸く咲くも
それぞれに
美しきとき
定められたり
*2009年 10月*
10月3日
蔓先に
とろりと揺れし
白花は
何を想へと
望月のころ
10月5日
棘の無き
柚子植えたくも
いかんせん
先ずは待つこと
ユズノバカヤロー
10日9日
不覚にも
回る世界に
滑り込み
遠き祭りも
夢のあとさき
10月10日
宮日にて
賑わい添えし
写メールは
しゃぎりの音も
聞こえくるらん
10月21日
細枝の
幼のみのり
名を受けて
あさひこと
にしびひこ
稀なり
*2009年 11月*
11月1日
咳の子の
手持ち無沙汰の
メールかな
11月16日
落ちてなお
錦冴えたる
葉のあれば
心ひそかに
木枯らしを待つ
11月23日
甘赤く
まろき姿に
馴染めども
「林檎」と云う字に
明治の匂い
*2009年 12月*
12月9日
うつうつら
スーザン・ボイル
聴きいりて
何もせぬまま
風邪っぴきの午後
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