みんなだいすき

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散歩…

昔、クロという犬がいた。

パパが飼っていた雑種犬だが、それはそれは怖かった。
飼い主さえも近づくことを許さない。
故、 実家には置いてもらえず、義父の会社の敷地にある うっそうとしげった木の下で日々過ごしていた。

付き合っていたある日、
「今日は日曜で、会社に誰もいないからクロに餌をあげに行く」
というので、一緒に行った。

これが、クロとの初対面だった。
初めて見るクロは、それはそれは恐ろしい目つきでこちらを睨んだ。
そして、
「ヴヴゥ~~~~~~」
と、低い声で威嚇してきた。

餌をあげる様子を興味深く見ていると、呻き声の中、パパは腰を曲げて木を避け、恐る恐る餌の入れ物を取りに行く。そして、家から持ってきた残り物を器のなかにひっくりかえした。
クロは今にも飛び掛って来そうだ。怖い…
それを木の下に置くと、パパは一目散に逃げて来た。プ゚ッ(* ̄m ̄)

食べてる…

が、見ているこちらが少しでも体勢をかえようもんなら、すぐさま反応してまたこちらを睨みながら呻き声をあげる。

食事が終わると今度は散歩に行くと言う。
ええっ!どうやって連れ出すのだ!?
私は少し離れたところからその様子を見ることにした。

またパパは、腰を曲げクロに近づいて行く。
クロもまた、警戒体制に入る。
これでパパともお別れか…と思っていたその時、木に繋がれている鎖ごとクロを連れ出して来た。よくご無事で。。。
そして、その長~~~い鎖は外されることなく散歩に出発となった。

「え…?そのまま?」
思わずパパに問い掛けた。
「うん。」
「………。」

散歩には、リードと呼ばれるヒモを付けて行くものだが…

クロは、その長~~~い鎖の音をジャラジャラと響かせながら、ヨタヨタと走り出した。まるで、囚人の様。。。

後日、なんでリードをつけてあげないのか!重くてかわいそうだ!と抗議すると、
「そんなことしたら噛み殺される…」

ごもっともな答えであった。


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