Blue kiss

Blue kiss

テンションは伝染する

テンションは伝染する



前夜の不可解なRiiの「掃除」の理由。
そして
Saaがそれからどうなったか。



翌日起きてきたRiiに
「Rii、本気で掃除したねぇ。
ありがとうね。でも、何で?」って訊いた。


Riiはまだ半開きの目を細めて
「あぁ~~」と笑い、

「終わったの!」
「小説、終わったの?!」
「そーなの。明け方終わって、テンションあがってて
寝るようなムードじゃなかったから掃除した!あははは・・」
「そっかぁ、そりゃ良かった!やっとだね。」
「そう、やっとだよ。」Riiはまた笑った。



出版のために書き始めた処女作が
脱稿したことは、
確かに大掃除のテンションに値する。


これで、
このマンションに引っ越してから初の
Riiの単独ハウスキーピングの
謎が解けた。


ストレスから解放されると
ウチの人間は
「掃除」を始めるのだ。






夕方、昨夜作文の行き詰まりに
喘ぎながら転がっていたSaaにメールした。


<今日はどうするの?帰宅は何時?>


テンションの高い、休みのRiiを誘って
テンションの低いRyoを巻き込み
お好み焼きに行くことにしたからだ。

Saaの作文の進捗状況も気になってた。

メールの返事代わりに携帯が鳴る。


「はいはい、どうするの?」
すでに、RyoとRiiとわたしは
3人で店に入り、ビールを飲み始めていた。



「ママ、あれ、終わったの!」
明るいSaaの声が返ってきた。

「え?」
「作文。」
「ホント!?良かったね~!」
「はぁ~~~~終わったよ~~!」
「そりゃ、よかった。」
「これから、学校出れるから。」




プレゼン作文。


こっちも「解放」されたようだ。
オーちゃんからOKが出たのだそうだ。

「なら、ダッシュでおいで。」
「はーい!!」




Ryoは今日、最低のことがあった。
仕事上の人間関係の中で
まったく考えられない裏切られかたをした。
そして、大金を失った。



テンション最低。
慰める言葉はない。

ねえ、お好み食べようよ。

Ryoは、このメンバーでの食事に
快く参加してくれた。



そして。


Saaが参加して4人になった
お好み焼き屋は
いつしか全員のテンションが最高潮になる。


帰りの電車でRyoが現実に戻ったとき
その現実はもう、
可能性を探すテンションになっているはずだ。




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