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再設計:増幅回路の設計方法




ここでは、トランジスタを用いた増幅回路の設計方法について記したいと思います。

読んでいただく方としては、

 1.トランジスタにはバイポーラタイプとFETタイプがあることを知っている。
 2.バイポーラには、ベース、コレクタ、エミッタという3つの端子があることを知っている。
 3.トランジスタは入力信号を増幅することができることを知っている。
 4.そのような回路図をどこかで何となく見たことがある。
 5.ただ、抵抗値を何Ωにするとか、何ボルトかければよいとか、、、設計方法が全く分からない。

という方を対象としています。



0. はじめに

世の中には、トランジスタについて書かれた数多くの書籍やネット上での解説が氾濫しております。
私も学生時代に習ったのですが、ほとんど覚えていなかったため最近になって設計方法についてきちんとおさらいしておきたいと思いました。
そして、書籍やネットを調べてみたんですが、、、、読んだだけで「分かった!」と思えるものがありませんでした。
仕方が無く、回路図とにらめっこした結果、ようやく理解することができました。。。

ここでは、トランジスタを用いた増幅回路について、分かりやすく解説してみたいと思います。
世界で一番分かりやすい解説を目指したいと思います。



1. トランジスタの増幅回路の種類

 一応、前提知識として「言葉だけ」知っておいて欲しいと思い、書いてみます。
しかし、正直のところ種類が何種類あるか、ってのはどうでもよく、応用の利く1つだけを覚えて欲しいと思います。

 (1)エミッタ接地
 (2)コレクタ接地
 (3)ベース接地

要するに、トランジスタのどの端子をグラウンドに繋ぐか、という違いです。これによって増幅率が異なったりするわけで、用途に応じて使い分けていくことになります。

 ここで解説する回路の形は「エミッタ接地増幅回路」というものです。
回路図は、下のようになります。


 (図はあとで挿入)



2.回路に流す電流の種類、形

 トランジスタを動作させるためには、用途に応じて正しく電圧をかけておく必要があります。
 しかしこれも詳細にはこだわらないようにしましょう。

 (1)固定バイアス回路
 (2)自己バイアス回路
 (3)電流帰還形バイアス回路

(3)が温度変動などに対して最も性能の良い回路が作れます。なのでここでは(3)について解説します。


 つまりここでは、「エミッタ接地、電流帰還形バイアス回路」を取り上げることにします。



3.設計


回路図を見ますと、決めなければならないパラメータがたくさんあります。
電源電圧Vcc、各種抵抗値、、、

さて、これらの値をどのように決めるか、これには手順があります。
それに従って順番に決めていけば、全部のパラメータが決まっていきます。
まあ、パズルを解くような感覚で決めていくと思えばよいでしょう。


(1) トランジスタの特性を調べてみよう

トランジスタの特性ってものは、すでに決まってしまっています。
データシートを見れば分かります。例えば、「Vce-Ic 特性」ってのは、固定です。

設計のときに使う事実としては、下の3点です。

 1) Vbeは固定で、0.6V ~ 0.7V となる。
 2) VceとIcとIbの3つの関係は、「Vce-Ic特性」のグラフによって決まる。
 3) Ie = Ic+Ib であるが、Ibは小さいので Ic=Ie と近似できる。

この事実だけは頭に入れておいてください。

ちなみに、トランジスタには「個体差」ってものがありますので、必ずしもデータシートと一致するわけではないです。
ここではその個体差は無視して、データシートどおりのトランジスタが存在するとして設計しましょう。



(2) 前提条件を決めよう

回路図には未知数なパラメータがいっぱいあります。
しかし、どれかをある値に決めてしまわないと、先に進めません。

一番最初に決めてしまうパラメータは以下の通りです。

 1) 電源電圧 Vcc
 2) 負荷に流す電流Icの最大値 Icmax

たったこれだけです。

1)の電源電圧は、回路の使用条件により決まってきます。
通常は、3Vか5Vを選ぶことが多いです。もちろん、12Vなどもあります。

ここではUSBから電源を取るという「大前提」がありますから、Vccは5Vにしましょう。

2)のIcmaxは、負荷の種類によってまちまちですが、通常は1mA程度で良いと思います。
特に、直接大電流を流す必要がある場合はそれに合せてもっと大きな値を設定しますが、
トランジスタのIcの最大値として、定格最大電流がデータシートに書かれているはずです。

通常は、この定格の1/2の値よりも小さな値になるように決めます。
それでは足りないという場合は、FETをかませて別電源から供給することを行いますが、
ここでは全く関係ありませんので、忘れてください。



(3) 負荷曲線を描いてみよう

前の段階で、VccとIcmaxを決めましたね。

すると、Trのすぐ右側の縦一列、すなわち Vcc→Rc→Vce→Re→Gnd のラインの電圧の関係を決定することができるんです。

注目するのは、「Vce」です。
「Vce」ってのは、IcとIbが決まれば自動的に決まるというのは、トランジスタの特性で述べました。

なので、「Vce」はIcとIbのさじ加減に応じて、いろんな値に変化するわけです。

ここで重要なのは、この取りうる範囲は、0VからVccの間になる、ということです。
当然、電源がVccなのでこれ以上の値にはなりません。

仮にVce=0となったとしましょう。つまり、Trのコレクターエミッタ間に抵抗値が全く無い状態ってことです。
RcとReは完全固定(値はまだ決まってませんが)なので、Vce=0の状態が最も抵抗値の低い状態となります。
つまり、Icが最大電流になるってことですが、Icmaxは先ほど決めましたね。

よって、Vce=0 のとき、Ic=Icmax という関係が成り立ちます。

同様に、もしVce=Vccとなるときは、この一列に電位差が生じないことになりますので電流は0です。

よって、Vce=Vcc のとき、Ic=0 となります。

抵抗と電圧の関係は、線形、つまり直線になります。
上の2点を結ぶ直線を、Vce-Ic直線に引いてみましょう。

こんな感じになります。
この線のことを、負荷曲線と呼びます。


 (図は後で)


つまり、Icmax と Vcc を決めると、RcとReを決めることができます。
ただし、厳密にはRc+Reが決まります。



(4) RcとReを決めてみよう

負荷曲線を決めた時点で、Rc+Reの抵抗値が一意に決まります。
これは、 Vcc=Icmax*(Rc+Re)という、オームの法則を用いるだけです。

今までの例で言うと、Vcc=5,Icmax=1mAなので、Rc+Re=5kΩとなります。

さて、Rc+Reは決まりましたが、RcとReをそれぞれ決めなければなりません。
このとき用いる関係は、

 直流の電圧増幅率は、Rc/Reになる、

という事実です。

、、、が、交流の電圧増幅率はIc/Ibで決まってくるらしいので、交流増幅に対してはあまり神経質にならなくても良さそうです。
とりあえず、仮に直流増幅率を考慮するとして、入力の変化に対して10倍の出力が欲しいと決めてしまいましょう。

今回はこの値は適当に決めます。
なにせ今回は、出力信号が出てくれば良い、っていう程度のものですから。

そうすると、 Rc=4.545kΩ、Re=454Ωとなります。
ただし、こんな厳密に値を求めても、実際に使う抵抗値ってのはこんな端数のものはありません。
なので、この辺は大体でよいのです。

つまり、 Rc=5kΩ、Re=500Ω ← この値も実在するかは不明です。近い値を選んでください。

こんなところでしょうか。


解説にもよりますが、Rc/Reの比率でReを決めるのではなく、Rcの1/10程度という経験値でReを決める人もいるようです。


さてさて、、、RcとReが決まりました。次は何を決めましょうか。



(5) 動作点を決めてみよう

上記のように、設計した負荷曲線に従ってRcとReを決めました。

Trを動作させるためには、定常的にIbとIcを流しておき、入力がマイナスの変化を起こしたとき、出力がマイナスにならないようにします。
これをバイアスといいます。

イメージとしては、下の図のようになります。

 (図は後ほど)

交流信号を入力信号として与えたら、入力は増加もしますし減少もします。
例えば入力が0mA(無信号)のときに出力が0mAだったとします。
入力が1mAになったとき、増幅率が10倍だったら出力が10mAになるのは分かるかと思います。
しかし、逆に入力が減少することを考えると、ちょっとややこしいですよね。
無理やり表現するならば、入力が-1mAになったときは出力が-10mAになる、ということになりますが、
負の電流っていうのは取り扱いにくいです。普通は負荷に負の電流は流しません。

そこで、入力が無いときでも定常的に正の直流電流を流しっぱなしにしておいて、負の変化があったときでも常に正の電流が流れるようにします。

たとえば常に入力に5mAを流しておくと、その結果、出力に50mAが定常的に流れます。
もし入力が1mA増えたときは入力が6mAとなって出力が60mAとなり、
もし入力が1mA減ったときは入力が4mAとなって出力が40mAとなるため、常に電流が正の値になるんです。

入力が無信号のとき、どの程度のバイアスを流しておくか、ということを決めるために、
動作点、というものを考えます。

上述まででRc,Re、Vccを決めてありますので、Vce,Ic,Ibの関係は上述の負荷曲線のどこかに決まります。

負荷曲線の図を下に示します。

 (図は後ほど)

例えば、定常状態でVce=Vcc/2にしておきたい場合、Icは負荷曲線より0.5mAとなりますね。
そのときのIbをグラフから読み取ると、Ib=0.005mAとなっています。
つまり、この負荷曲線において、Vce=Vcc/2としたい場合は、Ibとして0.005mAを流してあげればよいことになります。

このとき、動作点は印の付いている場所になります。


ここで、この動作点はどういう観点で決めればよいのでしょうか。
それは、増幅回路の設計の仕方で決まります。

 1) 入力が正の変化でも負の変化でも、どちらも歪み無く出力に反映させたい
 2) 入力が正の変化をしたときだけ出力に反映すればよい

などなど、、、です。

上の図で示したように、交流の入力があった場合、その波形を忠実に増幅して出力したいことが多いかと思います。
このときは、動作点をVce=Vcc / 2の点に取るとちょうど良いんです。
なぜならば、正の変化、負の変化、どちらにも対称的にマージンがあるからです。
その様子を下の図に示します。

 (図は後ほど)

一方、入力が負の変化をしたときは出力は出さなくてよいから、正の変化をしたときにはより大きな出力を出して欲しい、
という要求もあります。
この場合、動作点をVce=Vccの付近に取ります。
このときの入力と出力の関係を下に示します。

 (図は後ほど)

これらの違いは、増幅回路の設計方針によって決めます。

ちなみに前者を「A級増幅回路」、後者を「B級増幅回路」といいます。

今回は、仮に「A級」とするように設計してみましょう。
電子ドラムのように、叩かれたことだけを検知したい場合には「B級」でも良さそうですが、これは後で検討しましょう。

まとめると、

 動作点を決めるためには、Ibの流れる量を決めてあげればよい

となります。



(6) Ibに、動作点になる値の電流を流れるようにしてみよう

動作点は、Vce=Vcc/2となるように取ることが決まりました。
A級増幅回路にするってことですね。

このとき、Vcc=5V,Icmax=1mAとしたので、無信号状態ではIc=0.5mA、よってIb=0.005mAとなりましたね。
Ibをこの値に狙い撃ちするために必要な条件は、

 Vb を決定する

ってことです。

しかし、Vbはどうやって決めればよいでしょうか?

Vbを決める関係式は、下の2通りありますね。

 1) R1とR2がVccを分圧しているので、R1とR2だけでVbは決められる。
 2) Vbeは0.65Vで固定だし、無信号時のIeは0.5mAと分かっているので、
    Vbは Vbe+Re×Ie、すなわち0.65+500×0.5mA = 0.9Vとなるはず。

さて、、、これらの関係を解きほぐしましょうか。

まず、1)は絶対的な条件ですね。たしかに、Vbは計算すると、Vb=Vcc×R2/(R1+R2)になりますよね。
なのに、2)によってVbは0.9Vと決まってしまいました。これってどういうことでしょうか?

よく見ると、2)の条件って言うのは、Ieが固定だったら成立、っていう、不安定な条件なんです。
つまり、Ieが0.5mAになるようなVbは0.9Vですよ、といっているだけですね。

よって、1)の条件で、Vb=0.9Vとなるように、R1とR2を決めてしまえば、Ieは0.5mAが流れてくれるってことです。
Ieが決まると、Vce-Ic曲線の条件からIbも決まりますね。なので、Ibを意識せずともVb=0.9Vにすれば、自然とIb=0.005mAになってくれるってことです。

1)を使って、Vbが0.9VになるようにR1とR2の値を設計しましょう。
面倒なので、Vb=1Vとなるように、大雑把にしても問題ないです。

Vcc=5Vより、R1:R2=4:1とすれば、R2にかかる電圧、すなわちVb=1Vになります!(当然、R1には4Vが掛かりますね)

が、、、R1とR2の比率が4:1っていうだけが決まっていますので、
 R1=4Ω、R2=1Ωでもよいですし、
 R1=8kΩ、R2=2kΩでも条件を満たしますね。。。

これらの具体的な値を決めるために、経験的には、

 R1に流れる電流値を、狙っているIbの値の10倍流れるようにする。

というものがあります。

たしかに、R1の電流が狙ったIbより少なかったら、Ibには狙った電流値が流れないだろう、ってのは分かりますよね。
なので、十分マージンを用意しておくという観点より、10倍流れるようにしておけば安心、ということになります。

従って、I1にはIbの10倍となる0.05mAを流すとして、R1=4V/0.05mA = 80kΩとなります。
R1:R2=4:1なので、当然、R2は20kΩとなります。


ここを纏めると、次のようになりますね。

 1)狙ったIbを流すためには、R1とR2の比率をうまいこと調整してあげる。
 2)R1には狙ったIbの10倍の電流が流れるようにしてあげる。



(7) 出力を得よう

 ここまでで、すべてのパラメータを決めることができました。
 つまり、回路的に完成です。
 実際では、交流を増幅するためにReと平行してCeを入れてあげましょう。
 入力が比較的高周波数の交流の場合、増幅率はRc/ReではなくHfeとなるようです。

 この回路で出力されるVoは、見てわかるとおりVe+Vceとなります。
 入力が無信号のとき、このVoには常にVcc/2=2.5Vが掛かっていることに注意してください。

 入力信号が正の方向へ変化する、つまりIbが無信号状態のIb=0.005mAより大きくなる場合、
 Vce-Ic曲線を見ると、Vceが動作点の位置より小さくなりますね。
 逆にIbが小さくなると、Vceが大きくなります。

 つまり、この回路は、入力が大きくなると出力が小さくなる、という性質を持っています。

 この事実を間違えないようにしてください。




(8) まとめ


 トランジスタの知識がないと、何を手がかりに抵抗値を決めてあげればよいかってのが分からなくて困ってしまうかと思います。
 しかし、前提条件を一度決めてしまうと、ドミノのように決まっていくことが分かるかと思います。



 厳密に信号を増幅させたい場合(例えばオーディオアンプなど)では、もっと高度な知識が必要かと思います。
 ここでは電子ドラムの入力の有無を拾ってあげる程度を前提としているので、波形が多少歪んでも問題なく、上述の知識で十分です。


おまけですが、Reの存在意義について考えてみましょう。
実は、Reというのは「回路の安定性を保つ」役割があるようです。
つまり、設計したIcの電流値が温度変動などで変化してしまった際、設計値に自然に戻るようにする働きがあります。

たとえば、

 Icが上昇→Ieも上昇→Reの電圧が上昇→Vbが低下→Ibが低下→Icが低下

というループが生じます。
すなわちIcが上昇すると、Icが低下するようになるんです。Reが入っていないとこのようなことが起こりません。



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