もこっぺでいきてくんだよ

黒猿(写真家)


っていうか、こいつに国籍とかいらないんじゃないのか・・・。
ニホンジンらしくない、日本人。

時間って・・?時計ってなに?みたいなやつ。
いつも、どこでも、時間のない世界で生きていた。
いつも、どこでも、焦って急いでいたわしには最初は信じられなかった。



だけど、あいつの「ジカン」のなかで一緒に過ごすことがすごく心地よくて、何にもおわれず、焦らず、思うがままにゆっくり、テキトウにすごすことで、
わしのココロはどんどん、どんどん、洗われて、あいつといる時は、無で入れた気がする。



マサは写真家で、サーファーで、旅人で、わしがダイスキだった。


どこに行く時にも重たいカメラを持ち歩き、ちょっとまっててと言いながらもういなくなって、そこらへんで夢中で写真を撮ってたりする。

ぼろくさいラーメン屋の畳で、「こっちの写真の方がいい、この光のところが・・どうのこうの」とイッチョ前にアドバイスをいったりしてたわし。

いつもいつも新作はわしが一番にガッペするように、ネガからもってきてくれたね。


一緒に小さいネガをお日様の光を通してみて あーだ こーだ 言ったね。




じゃ、モロッコいってくるから。



といきなりいなくなり、

「何日の夜、何時ごろに満月がでるんだって、サハラ砂漠の上でねっころがってみてるから、もこっぺもベランダでてみ。同じの見よう 何もない砂漠の上でもこっぺのことを愛しく想う毎日だよ」





そんな手紙が届いたかと想うと、
いきなり誕生日には国際電話をしてくれたり。


いつも二人でぼろいバイクにまたがり、山奥や、川原でデートしていた。
ボロいバイクにダサすぎるメットをかぶらされ、10時間かけて旅行にいったこともあった。
あのときは、ケツが麻痺してもうどうにでもして~~とかおもいつつも、やっぱりマサとの旅行がたのしみで、ずっとあいつの背中にしがみついてるのが幸せだとおもった。

地図も何も持たず、ただただ感を頼りに走ったんだよね。
いつの間にか山奥の中をはしってて、でこぼこ道をまっくらのなか走ったんだよね。
あんとき、あんた、わしは本当は怖かったんだよ。

夏なのに、深い森林の中にいて、シーーーンとしてるなかバイクのエンジン音だけが響いて。
なんだか、二人の孤独みたいで、怖かったんだよ。
この森の中から、でこぼこ道から、本当にでられるの・・?って。

わしが必死にあんたの腹をぎゅっとすると、エンジンにまみれて聞こえなかったけど、
あんたはそのたびに「もうすぐだから」って、そんな口してたね。

だから、あんたの半そでの腕が寒そうで、必死で両腕をこすってたんだよ。
いっとくけど、あんた、そんときこっちはあのスピードのでこぼこ道の中、ケツだけでバランスとってバイクのってたんだからさ。

だけど、愛しかったんだよ。


うちらの最初の旅行だったね、マサ。

海沿いをぐんぐんはしって、海には満月が反射してた。うちらはカーブをすべってバイクごと転倒。そのまま、わしは下着で海にはいって大喜び。


であった時はアフロ全快の頭だったわしが、旅行当日にはいきなりお嬢まるだしのストーーーンと長い真っ黒なストレートにして、あんたは最初待ち合わせでもわかってくれなかったね。
でもその髪がなびいてカーブするたびにあんたにあたると、なんだか嬉しそうな顔してたの、知ってるよ。


なんでも自然がいちばんだよ、もこっぺ。

いつもそういってたね。




マサは長い付き合いのなかで一回だけ言った。


もこっぺ、おまえは人と比べるのをやめたらもっと成長するよ


自分の好きなことがあって、それに夢中で、そのためならどんな生活もして、頑張ってるマサがうらやましかったし、いろんな影響を与えてくれる彼に、なにも与えられない自分が情けなくて情けなくて必死で「これがわし」って言うのを探していた。

でも、探してるときってみつからない。

それは一種のコンプレックスになってた。
わしらの関係って全然フィフティーじゃないんじゃないの・・?とか。


写真展をみにいこう、といろんな画廊に連れまわされたね。
写真を撮ると夢中になって置き去りにされても、あんたを森の中探しあるいて、まだ写真撮ってるあんたをみて、なんだか安心したんだよ。

いいな~ってね。


成田に迎えに行ったときは、あんた顔が濃すぎて、ヒゲも恐ろしい勢いだし、おまけにマントなんてかぶってるから、モロッコから粉の密輸人だとおもわれて、わしは到着時間からさらに2時間も一人で何もわからずまってたんだよ。



そしたら、マサがほこりっぽい格好であらわれて、そのがさがさの麻のまんとでわしのことをすっぽりくるんで、目はキラキラしてて、

無言でわしのことギューーーーーしたあと、やっと

「あ~~~もこっぺ・・・」って言葉になってなかったね。


あのときの、ホコリくさい、砂っぽい、クマのようなひげで、がさがさのマントで、でも血がめぐりまくったあったかいカラダで何ヶ月ぶりに、全く連絡の取れない状態で、ギューーーーーーーーーーってしてくれたの、

ずっと忘れないんだよ。
何も信じるのはないのに、お互い待ってたね。
一回だけ、お月様でマサと同じのをみてる、って思ったら、それでいんだ。
あーなんてあいつらしい伝え方なんだっておもったんだよ。




わしはマサの行き方、考え方、すべてがダイスキだった。
顔が濃くて目がチカチカしてつかれることはあったが。


だけど、途中から、なんだか自分自身の意味がわかんなくなり、生活をかえよう、と何を想ったのか、いきなり自分から別れたんだよね。
その時の言い訳は、就職活動一本に集中したい・・・。

そのレストランを出た後、無言で手をつないで駅まで行き、マサは改札を通ろうとするわしを真っ赤な目でみつめていた。
濃い、真っ赤な大きな目から涙がボロボロこぼれていた。

彼の家庭は凄く複雑。いつもお母さんに悩まされてたけど、愛していたマサ。
なんどとなく家庭のことをサラッとわしに言ったけど、どんなに複雑で辛くても、涙を見せたことはなかったね。

でも彼が泣いたのを見るのはコレが初めてだった。


ごめんね・・・って言って改札をとおって電車に乗ってから泣いた。

あーなんか、大きなものを自分から捨てちゃったんだ。。。

なんでだろう・・なんで別れたんだろう・・


そのご2年ぐらいは自分から別れたにもかかわらず、マサのことで頭がいっぱいだった。
何してるんだろう、あの時はああだった、今どうしてるんだろう、あいつの家族は大丈夫なのか、あいつはささえてるんだろうな、写真はどうだろう、マサ、今となりで寝ててほしいよ、マサ、マサ、マサ...

マサが恋しくてもう一回、もう一回でいいから会いたいと、必死で探し出した電話番号にかけ、泣きながら訴えると何週間かたって、

マサから写真集ラブレターがきた。



なかみは 
要するに一緒に花火見に行こう。


わしは、できない着付けを強引にがんばり、池袋でまちあわせした。
4ヶ月ぶりの再会に二人ともウルウル・・でもキモチは変わっていなかった。
マサはわしが浴衣をきてるだけで感動し、ごっつい手でぎゅっとなんどもにぎってきた。
そのたびに、二人の間にはまだ何かあるんだな、って想ってた。


そうだったみたい。


でもどうこうするわけではなく、肩書きのない付き合いを2ヶ月くらいしていた。
わしにはちょうど良かった。何にも縛られてないけど、会いたいときあう。
前と何がかわったかもわかなかった。

なのに、「もういっかいやり直したい」「じゃなかったら中途半端にあうの、やめよう」って言われた。

わしが出したのは「もう会わない」だった。

そのままわしはインドのバイトにいき、バイトが10時過ぎにおわると、なぜか胸がくるしくなり、完全に別れたはずのまさに、今すぐあいたい、飲みたい、っと誘い。


あれ~さっき別れましたよね?とか言われながら、3駅分ぐらい歩いて、ホテルに泊まり、最後に号泣しながら、セックスをして翌日プラットホームでわかれた。


振り返らなかった。泣くと想ったから。


愛しいのに、なにがどうして、もう自分がわからなくて、別れた。
震えて泣きながらヤッたのは、アレだけだろう。これは愛なの?って。


マサが完璧にわしの生活からいなくなって、切り離したのはわしだけど、今でも何でわかれたのか、よくわからない。
一回だけ聞いたら、わしが別れなければ今も一緒だよ、きっと って。
あ、そう・・・。


それから、わしが一人で自分を鍛えようって、旅にでたり、
国家試験をがんばって保母さんになったり、
波乗りに夢中になったり、

別れてから、やっと「これがもこっぺだよ、まさ」っていえるものが身についてきた。

マサ、みてみて、わし、今こんな生活なの。
マサは一回だけ言ったよね。

人と比べなければもっと成長するって。

それって難しいことだとおもったけど、マサはいつもどこでも、どこにいても、自分の空気を作れる人だね。

だからあんたはどこに言っても言葉が通じなくてもオヤジと焚火して夜をすごせるのかもしれない。

だけどね、マサがときどき なよぉ~~っと甘えてきたりするのが一番だいすきだった。
あ。わしにも居場所があるんだな、って。

だからうちらはいつもうで枕はわしだったね。かーちゃんのように,マサをつつみこんで寝ていた。それがあたりまえだったね。

わしが夜パニック発作をおおしたり、過呼吸をしてもいつも平静で、対応してくれたね。
きっとマサのおかあさんがつらい病気だったから、あんたも理解できたんだろうね。
だけどそうやってマサのいる前でパニックをおこして、いつもかまって、いつもわしをみて、いつもわしのこと気にしてて、ってアピールしていた。

あれってなんだったんだろう・・・。


マサ、結婚するんだってね。おめでとう。
式なんて絶対しないあんただから、ちょっと安心してるよ。

だけど二人で何度も夢を膨らませた子供の話は、まだあんまり聞きたくないな~。。


ちょっとつらい幼少期をすごして複雑な家庭で生きてきたマサ。

あんたにカワイイ子供がうまれたら、あんは初めて被写体を人間にするんだろうね。
あんたの心の中まるだしの、個展、開くの楽しみにしてるよ。


サハラ砂漠のすなも、あんたの手作り写真集も、誕生日にDIYで作ってくれた写真フレーム(1mはある)も、ダイジにとってあるよ。
捨てたくても捨てられないんよ。

マサもわしがあんたがモロッコにいるあいだに、必死ではじめてつくった、マフラーまだきっとダイジにもってるんでしょう。
あんた、あれ大変だったんだからね。

マフラーなんて、って言うわけがないってわかってた。
絶対大喜びするってわかってた。

成田で首にグルグルまいたら、高そうっていったね。
ふふふ、わしがつくったんだよ、ほら、ここ編み目ぐちゃぐちゃでしょ。

っていったら、感動してたね。
あんたのこと想いながら編んだんだよ、捨てるでないよ。



愛してくれて、ありがとう。


逃げ出してゴメン。


愛するってこういうことなのかな、って教えてくれたね。

マサ。アリガトウ。あんたに幸せになってほしい、だれよりも。


・・・・・あんたのち○ちんはほんとにやくに立たない、だの
ちっこくってはいってるかもよくわかんあい、だの
さんざんひどいこといってプライドを傷付けてゴメン・・



だってあんたがチ○コ手術してたなんて、チ○コにそんな悩んでたなんて、しらなくてさ。


なんでわかれちゃったんだろう・・・と愁傷漂う気分の時は、
あーーでもあのち○コは、ねぇ・・・と気分をかえるようにしてる。

今でも時々バイクで夜景を見に連れ出してくれたり、最新の写真を持ってきて見せてくれる。

まさ、あんたと出会ってわしは自分探しに必死になったよ。だけど必死になってない時の方が意外とみつかるものなのかもしれないね。

たくさんの愛情と教えを、ありがとう。


自分が味わえなかった分以上のことを、結婚したらつくってくんだよ。


あんたが最後、暗い川原の前に止めた車の中で泣きじゃくるわしに、

「もこっぺは魅力的だよ。だから無駄づかいしちゃだめだよ、本当に好きな人ができるまで」ってキス寸前で辞めたね。

ゴメン、マサ。

マサがいなくなってから意味もわからずいろんな外人とねたよ。
かまってほしかったんだ。誰かに愛されてたかったんだ。今だからわかること。

でもそれは愛でもなんでもなかったんだね。
それでもマサがくれたような愛をもとめて、ぬくもりをもとめて
いろんな男の人の間をウロウロしてきたよ。
その時はお金を払ってでもいい、だれか、だれか、お願い、ぎゅーってして、何も言わないでただ、となりで寝てって、

電車に乗りながら必死で人間観察してたんだよ。
このひと、、、話きいてくれるかな。
援交してもいいよ、わしのこと抱きしめてくれて、一瞬でもあったかくしてくれるなら、って想って千円にぎりしめていつも電車にのってた。

このヒト、あったかそう。。。って思う人が隣にいれば、寝たフリして、その人によっかかり、涙をボロボロこぼしていた。
きっとその人たちは、なんだこのこ?って思っただろうね。


マサ、愛するってなんだったの?
愛ってなんなの?
どうして「付き合う」じゃないといけなかったの?

「付き合う」ってなに?

彼女ってなに??


その枠は必要なの?それがあると、ないと何が違うの??

付き合うってなに・・?今でもわからないよ。


自分ともうまく付き合えないことがあるのに、他人と一緒にいる自分なんてケアできるか、わからないんだよ。

マサに頼ってたよって、いつもマサでイッパイだった自分がいやだった。
だから、一人でも自分の時間を有効につかえるわしになりたいと思ってた。

あんたみたいに「自分」をさがしたくて必死だった。


でもあんたのことをやっと忘れたころ、わしには今の生活がでてきて、
やっとこれが、わしなのかもな、ってのがわかってきたんだよ。

もう5年かかっちゃったね。



だけどね、まさ。マサがわしにおしえてくれたことは、ずーーとずーーとわしの基盤でずっと生きてくんだと想うよ。



たくさんの愛と、幸せと、笑顔を、アリガトウ。


手探りで愛し方をさがしてたけど、アレも愛だったんじゃないかって、今なら思うんだよ。

逃げてごめん。こわかったんだ、愛ってこういうのかな、って。


つぎ、愛することができる人に出会えたら、マサのこと、はなすからね。





         まさ、ありがとう。




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