アパートメントの住民用に備え付けられた、プールサイドのデッキチェアーに寝そべりながら、私は誕生日に夫から贈られた最新のMDウォークマンで、日本から持ち込んできた80年代に流行ったポップソングを聴いている。南部特有の湿り気を帯びた生暖かい風が私の頬を横切っていく。飲みかけのマルガリータの中のアイスキューブが、グラスの中でカランと音をたてて溶けた。サングラスの端っこのほうに、大きな声で話しながらこちらに近づいてくるご婦人方を捉えた。同じアパートメントに住む顔見知りの奥さんたちで、彼女たちは余計な詮索をしないでくれるので気楽に「HI!」と私は声をかけた。ひとりが、あらここにいたの、実は来週主人の転勤でシカゴに行くことが決まったのよと言うと、彼女はシカゴだけど私は来月NYに引っ越すのよ、ともうひとりが言った。 「そうなの。寂しくなるわ」 と、私はアメリカ特有のこういうときの常套句を言う。寂しくないわけじゃないけど、寂しいわけでもない。それでもこの国では必ず「I am gonna miss you」と言う。あなたも、来年にはここを離れるんでしょ、ここは皆が腰を落ち着けて定住するところじゃないものね、地元でもない限り、と更にもうひとりが言い、私たちは週末のカクテル・パーティで再会することにして別れた。アメリカの最南端。キーウエストを臨む町、マイアミ。英語よりスペイン語が多く飛び交い、人々がやって来ては去っていく町。言ってみればVisitorsがあふれている。