★RYUの事・・・『4』



毎日決まった時間に 薬品の入った風呂に入れられ切り開いてある傷の中に手を突っ込まれ骨まで

洗われるのです。

風呂前に座薬などは入れますが麻酔もなしに毎日です。

洗い終わると傷の中にぎっしりガーゼを押し込まれその状態で一日を過ごすのです。

RYUにとっては地獄以外の何ものでもなく外で聞いている私達も悲鳴にも近い叫び声に何度気を失いそうになったか・・・

この状態は約2ヶ月続きました。


毎日洗浄を続けている為、仙骨部、右腸骨部からの排膿は治まってきましたが、左大腿の排膿が続く為

H14.1/21に左大腿骨骨切除、病巣掻爬の手術をうけました。


の後も創洗浄は続き仙骨部、右腸骨部の排膿がなくなり(床ずれの為 10数センチの大きな穴が

尾てい骨あたりに深くえぐれて開いていた)

肉芽形成良好になった為H14.2/8に右腸骨部の創閉鎖、背中の皮膚を薄く剥がし、仙骨部まで

持ってきて塞ぐ手術と 左大腿骨の骨をまた数センチ切除され掻爬をされました。


RYUはその度に呼吸器を挿入される事と手術の度に悪くなる状態に苛立ち手術を拒んだり

点滴の針をうまく入れられない看護士にきつい言い方をするようになっていました。

その頃は 医師が「モルヒネも長く使えない」という事でほとんど座薬に変わっていたのですが

到底座薬などでは痛みが治まる事も無くRYUは苦しいだけの毎日でした。

医師は体力をつける為に食事を取りなさいと毎日のように叱りましたが左側腰から下に40センチも大きな傷が

ぱっくり開き 床ずれの穴も開いている状態で食欲がわくはずもありません。

それでも何とか一口でも食べさせようと私や祖母達もRYUが「食べたい」と言う物を毎日買ってきました。

よく食べれても2~3口だったのですが それでもなだめすかし何とか口に入れさせていました。


RYUは16歳になっていたのですが何ヶ月も続く苦痛の為かすっかり幼児返りをしていました。

入院後一ヶ月を過ぎて様態が安定すると泊り込みを禁止された為毎日病院に通っていたのですが

熱が39度出た時もRYUは私を呼ぶ為マスクを何枚も重ねICUに付き添いました。

年が明けてからICUの中の個室に入っていた為 他の患者さんに迷惑は掛からなかったと思いますが

RYUに移したらと息をするのもためらわれました。

午前中に病院に行き 夜11時に病院を出る そんな毎日が続いており下3人の子供達の

話を聞いてやる余裕すらありませんでした。


一日中RYUの側にいて私がすることはベットの上げ下げです。痛みがひどい為5分と同じ体制でおられず 

医師は骨をつなげてないからあまり動かしてはいけないと言われましたが RYUは泣いて頼みます。

私は看護士さんにあるお願いをしました。

「一日に何回かでいいので 生理食塩水か何かを痛み止めと言って注射してもらう事はできませんか?」と・・・

この事は医師からすぐに許可がでました。

看護士がRYUに「一日に3本だけ痛み止めの注射をしていいと許可が出たから本当に辛い時だけ言ってね」

といいました。

これはしばらくの間効果抜群で注射をして貰うと30分から小一時間は痛みが引いてるのです。

精神的なものなのでしょうが・・・


ところがしばらくすると RYUは一日に3本以上の注射を要求するようになりました。

すると医師が「甘やかしてはいけない」と注射を禁止したのです。

禁止された事を知らず仕事から帰ってきた主人とICUに入っていくとRYUが泣きながら手を合わせて

うわ言のように何か言ってるのです。

「RYU!」と呼んでも分からず「お願いです。注射打ってください。お願いです痛み止め打ってください」

と繰り返し繰り返し泣きながら手を合わせて・・・

私達の事も分からず 看護士に必死に頼んでいるつもりだったのでしょう。

「何とかしてもらえませんか?!」と看護士に言っても「注射も中毒のようになるからダメです」と言われました。

RYUの頬を叩いても大きな声で呼んでも分からず 結局20分程経って自分でフッと我に帰ったようでした。

「あれ?おとんもきとったん?」と何事もなかったように・・


その日主人も私もやりきれない気持ちでいっぱいになりました。

RYUを押してホームへ落とした子への憎しみ。

「自分の子だけが悪いわけじゃない、加害者でない」と言い張るその子の親。

MRSAに感染させた病院。

この病院にはICUと言っても無菌室もなくインターホンで中の看護士に許可を取れば

誰でも入れる状態で一般病棟と何ら変わりはなかったのです。

何もかもに腹が立ち憎しみが募り頭が変になりそうでした。


結局RYUは11月10日に入院し、4月の中旬に一般病棟に移るまで大小7回の手術を受け

杖をついて歩けるはずだった足は車イスでの生活を余儀なくされたのです。







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