★ＲＹＵの事・・・『５』

入院から　５ヵ月経っていた。

食事が取れないことは変わらず　体重は４３キロぐらいのまま・・

でも何故か身長は伸びているようだった。

ここでは指示能力の残る右足と骨折で右肘が真っ直ぐ伸びなくなっていた為リハビリである。

朝夕リハビリ担当の医師が来て　専用の機械を使い右の膝を伸ばす。

ＩＣＵにいる間ＲＹＵの状態が悪く手術も繰り返された為リハを始めては　中断の繰り返し・・・

結局間接が固まってしまっていたのである。

それを伸ばすには　かなりの痛みが伴うが　これをやらない事には手足も曲がったままである。

左足は骨頭から１０数センチ骨を切られた為　右足よりも膝から足の付け根まで短くなっていた。

麻痺ではないが　指示能力はない。

一般病棟に移ってからは　ＩＣＵにいる時のように　すぐそこに看護士がいるわけではない。

まだベットの上で　１人で身動きのとれないＲＹＵには　不便ではあったが個室と言う事もあり　

精神的には落ち着いていた。

ビデオデッキと　プレステ２を持ち込んでいたので　毎日映画を見たり　ゲームをしたり・・・

少しずつベット上で　ベットを立てていき座る練習も始まった。

ＩＣＵにいる時　状態のいい時にベット事何度か病院内を散歩したことがある。

ＲＹＵもそれが楽しみでいつも行きたがったが　看護士さんの忙しい時は中々行かせてもらえなかった。

大きな病院内で　コンセントの位置を確認し　それでコースを決めた。

相変わらず体の痛みはひどく　同じ体制を続けていられなかったからだ。

一度の散歩は２０分ほど・・その間に何度も電動ベットの線を病院内のあっちこっちにつなぎ

ベットを上げたり下ろしたり・・・それでもＲＹＵも私達も楽しかった。

わずかな時間とはいえ息の詰まるＩＣＵを出て外の空気を吸える事はいい気分転換になったのだ。

散歩に行けると分かっている日はＲＹＵは良く食べた。

と言っても２～３口が４～５口程度だが　食べないと散歩に連れて行ってもらえないからだ。

時にＩＣＵを出ると高校の友達が２０人以上いた事もある。

茶髪、ツンツン頭、モヒカン・・

みんな同じなのは制服のスラックスが腰パン状態・・・

旦那と苦笑したもののとてもありがたかった。

ＲＹＵもとても嬉しそうでそんな日は　散歩に行かず　ロビーでお友達と話をして過ごした。

何度も足を運んでくれた子　人づてに入院の事を聞き　遠くから見舞いに来てくれた子・・

感謝してもしきれないぐらいありがたかった。

車椅子になるとわかって「もう学校へはいけないかもしれないけどＲＹＵを忘れないでね。

退院しても遊びに来てね」みんなに言った・・・

子供達から私達親の知らないＲＹＵの一面も聞いた。

学校をさぼってみんなでゲームセンターに行った事・・

ＲＹＵが学校でタバコ所有を見つかり丸坊主にされて帰宅した日一緒に坊主にされた子はあの子・・

あそこにいるかわいい女の子は元彼女・・・

「え～っ？あんな可愛い子が？」思わず本人に聞いてしまった。

「ＲＹＵの元彼さん？」その子は明るい笑顔で「はい！もう別れちゃったけど」「そう」私も笑った。

学校をさぼったりはいい事ではないが　事故に遭うまでＲＹＵが１５歳を十分に楽しんでいた・・

それだけでも救いだった。

一般病棟に移り　見舞いに来てくれる人数は減ったものの　ＩＣＵと違い自由に出入りが出来る為よく遊びに来てくれた。

少しずつ少しずつではあるが前に進んでいるんだと思えた。