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2004.06.18
オイディプス王5 東と西
(2)
テーマ:
【演劇】何か見に行きますか? 行きましたか?(3487)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
「 東と西を重ね合わせることが、我々のやりたいと思うオイディプス王 」
「 アジアの人間がやるのだから、アジア的な身体を体現してほしい 」
演出・蜷川幸雄 談
前に書いたものと一部重複してしまうが、今回のこの舞台、
主役に狂言師・野村萬斎、 音楽・舞に雅楽師・東儀秀樹、
振付に日本舞踊家・花柳錦之輔を配し、衣装、美術も含めて、
全体的に非常に東洋的なものを感じさせる舞台となっている。
***
今回の脚本家・山形治江著 「 ギリシャ悲劇 」 に、
1904年、英のB・チェンバレンがこの2つの共通性を指摘したとのこと。
その共通性とは
・宗教劇
・地歌に似たコロス ( 合唱舞踊団 )
・俳優 ( 仕手 ) の少なさ
・一種の舞踊劇
・男優のみの仮面劇
・台詞は詩の形
・野外公演
・登場人物は神々、英雄、など
日本でも活発化したその比較論は戦後消滅してしまった。
唯一、1971、1972に 「 冥の会 」 によるギリシャ悲劇が上演された。
しかし、この実験公演は、ギリシャ悲劇と能楽が融合できず、相殺しあい、
両演劇の異質性が際立つことになった、とある。
「 冥の会 」 とは、
狂言師・野村兄弟 ( 万作、万之承 )
新劇の劇団・青年座 で作られた劇団
クレオン役・野村万作氏は、今回のオイディプス役・野村萬斎氏の父上。
観世氏は、蜷川氏が劇団青俳に俳優として所属していた時の演出家で、
40年来の知り合いとか。
野村萬斎・主役起用、 というのが、
単なる思いつきではないということがわかる。
そこへ雅楽とその舞も加わり、西洋人にどういうインパクトを与えるか、
考えるだけでドキドキする。
蜷川氏の 「 東と西が激しく対立しながら融合点に達しないかなぁ 」
という言葉の重みがわかる。
今再び、ギリシャの地で、蜷川さんが挑戦しようとしていることが、
ちょっぴり見えてきた気がする。
***
* 東洋を演出する小物達 *
< 香炉 >
舞台前面中央にて御香がずっと焚かれている。
香炉は、長方形で、葬儀の時に焼香をするものとほぼ同型。
香は魔よけの意味も。
< 紙垂 ( しだれ )> < 榊 ( さかき )>
よく注連縄 ( しめなわ ) に下がっている白の切り紙が紙垂。
降臨する神様 ( もちろん日本の ) の衣服を表し、
榊は神の繁栄の象徴といわれる。
今回は神官の胸元に神垂が添えられていたり、
王妃イオカステが紙垂のついた榊を持って現われたりする。
前回、オイディプス、クレオン、神官等の胸元を飾っていた、
大振りのアジアンティックなアクセサリーは、今回取り除かれている。
日本の古来の神と、ギリシャの神を融合させようという意図なのか、
雰囲気としてのジャパネスクなのか、
私には、ここらへんの意図がよく見えない。
< 蓮の葉 >
疫病、飢餓に苦しむ死の国テーバイを象徴する枯れた蓮の葉の群生
今回の舞台では、背景の城壁のほかには、
このブラックグレイ蓮の葉のみが舞台演出
蓮の花はいわずと知れた仏花。
泥土の中から世にも美しい花を咲かすことから、
どんな状況下にあっても、泥に染まらず、強く気高く生きることの象徴
極楽、復活再生、清浄を象徴
反対に、枯れた蓮の葉は、死、絶望を表しているのであろうか。
後半、コロスたちが、やり場のない悲しみと怒りをぶつけるがごとく、
この蓮の葉を舞台にたたきつける壮絶な場面がある。
< 低重心 >
コロスの動きを見ていると、特に円陣になって歩くところでは、
腰を落として重心を下げ、すり足で歩いているのがわかる。
パンフの観世氏の話によると、上下に揺れず、
「 線 」 として歩くのが能の動き。
これは 「 農耕民族の動き 」 と。
茶道の時、畳を歩く所作にも、よく同じことを言われる。
縦揺れせずにすっすっすっと。
なるほど、「 線で 」という言い方はとても解り易い。
古典雅楽の歩き方も、共通したところがあるように思う。
蜷川氏いわく、
「 身体的な重さを人生の重さに置き換えようとしているんだ。
人生の破滅を見た思いを重量に置き換えて、願いを込めるように歩く。
重心が下がるのは、歴史や思いの重圧なんだ 」
最後のコロスの円陣は、中腰の姿勢に近い低い歩きで退場してゆく。
< 雅楽 >
2002年度に引き続き、音楽監督をしているのは、雅楽師・東儀秀樹。
大陸のどこかで生まれ、シルクロードを渡り日本に伝わった、
1400年続く伝統音楽
ただ、今回使われている音は古典雅楽曲ではなく、
雅楽器を使った東儀秀樹オリジナル。
2002年度版オイディプスのために何曲か書き下ろしていて、
それも今回の劇中に使用されてはいるのだが、
このたび、ひとつひとつを新たに作り直したという。
「 大好きな蜷川さんの劇の歯車のひとつになれることがとても嬉しい 」
と語り、より良い音を現場で作るため、極力お稽古に通い、
「 音楽監督でこれだけ稽古に来る人は見た事がない 」と言われたという。
コロスのひとりひとりが笙を持ち、円陣を組んで歩きながら吹いたり、
笙の美しい円錐のようなフォルムを生かして、
コロスの身体表現の一部として使ったり。
そして、前にも書いたのだが、
涙止まらぬ、オイディプスが娘たちを抱いて嘆き悲しむ場面で流れる
笙の曲 「 光り降る音 」 は、
私には、この劇の持つものを大きく左右する重要な音に思えた。
この限りなく優しい、まさに天からの光に思える音が流れたことで、
運命をただ呪うオイディプスではなく、漠然とした言い方だが、
「 許し 」 のようなものが感じられ、救われた気がした。
ここで、また山形治江著 「 ギリシャ悲劇 」 からの記述なのだが、
伝説の舞台、1984年、ギリシャ古代劇場での
蜷川幸雄演出 「 王女メディア 」 でのこと。
絶賛の嵐の中、音楽効果だけが各方面から非難を浴びた。
ギリシャ有力紙は、絶え間なく流れた描写性と情緒過多の音楽が、
「 神話劇をお涙頂戴のメロドラマにしてしまった。 」と批判した、ということ。
そういう意味では、今回起用の東儀秀樹奏でる雅楽の音色が
西洋の人々にどんなふうに届くか、とても楽しみです。
篳篥のインパクトある音からの幕開け。
様々な雅楽器の音にシンセなどの現代楽器も混じって。
東儀さんいわく
「 抽象画を描くように 」
「 音楽だけが独立したものではなく、舞台空間に音楽が溶け込むように 」
作ったとのこと。
私には、この音なくしては、この舞なくしては、というところまで、
一体化していると感じられました。
雅楽の舞、衣装、色彩の東洋性については、
オイディプス王 (1)で触れたので割愛します。
*
以前の私のオイディプス鑑賞日記
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Last updated 2004.06.19 01:09:31
コメント(2)
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Re:オイディプス王5 東と西(06/18)
蘇芳色
さん
深いですね・・・。
いつも舟をこいでしまいました・・・。
今から考えると、私自身、蜷川さんが観客に投げる「球」を受ける技量がなかったのではないかと。
今でこそ、「和」の魅力に取り付かれていますが、当時はそうでもありませんでしたから。
蜷川さんの舞台は、いわゆる玄人好みで、私のような素人には、とうてい理解できないのだわ・・・なんて考えていました。
が、きゆら*さんの日記を拝読したり、他の楽天お友達のサイトを見せていただいたりしているうちに、時期があわなかったのだろうか?と思い始めました。
今現在の私なら、蜷川さんの舞台を楽しめるかもしれない。そう思えるようになりました。
機会があれば、「オイディプス王」をぜひ見てみたいです。 (2004.06.19 23:00:59)
返事を書く
蘇芳色さん
きゆら*
さん
こんばんは、蘇芳色さん
>今現在の私なら、蜷川さんの舞台を楽しめるかも
そういうのって、ありますよね。
私も2002年度に見た時には、のめりこみませんでした。
席も良くなかったし、ただ血みどろが怖くってイヤだったの。
その時は、血みどろからが延々と長かったし。
そうしか思えなかったのが悔しくもあって、
DVD何度か見るうち、おもしろくなりました。
コクーン楽日前日にカメラが入っていて、
7月よりフレッツ配信するそうですよ。
私もまだ調べてみていないので、よくわからないけれど、
http://www.bunkamura.co.jp
トップページ左中「フレッツ」のバーナーをクリック
ってチラシに書いてあります。
(2004.06.20 01:50:36)
返事を書く
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