もいっか★フィンランド

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「フィンランド」を読む- 冬将軍との対峙

冬将軍との対峙 ~フィンランド冬事情~

「フィンランドの冬はどうですか。とても寒そうですね」「こちら(広島)は雪ですが、そちらの方がはるかに寒そう。どんな感じですか」「寒いでしょうが、お体をお大事に」―フィンランドに滞在してもうすぐ半年が経つが、日本の知り合いとのやり取りの中、圧倒的な質問、感想が上にあるような天候に関すること。これは別に不思議でもなく、北欧のイメージからどうしても冬、それも「厳冬」がコミュニケーション上無視できない話題だ。逆に、「バンハネン(フィンランドの現首相)氏の対EU外交政策は、いま現地ではどのような評価ですか」みたいな質問がいきなりだと、個人的には大歓迎だがやはり世間一般のレベルだと相当マニアックだろう(しかしそうした質問は本当に歓迎する)。

私自身、こちらの冬天候は初体験、もっとも気になることの一つで、その時折の所感をメール等で述べてきた。このレポート執筆時(2月上旬)ではまだ何ともいえないが、冬がようやく峠を越えた感じはする。今回はフィンランドの冬、そして冬生活についてつづってみよう。

さて「冬は如何?」の質問だが、結論からいうと「 寒いが、問題ない 」ということになろうか。実をいえば、今冬は暖冬らしく例年に比べて「異常に暖かい」らしい。「らしい」とただし書きするのは、あくまで現地人の感想であり、私からすればやはり寒い。例えばここ数ヶ月で気温が氷点「上」になったのは1日だけである。主観的に暖かいと感じるのがマイナス3~5度ぐらいで、マイナス5~10度で「うん、寒いかな」、10~15度「寒いの~」(なぜか広島弁)、15~20度「おいおい、寒いぞこら」、20度以上「さぶっ」。10度を超えると厚手の手袋でも寒さがしみてきて、15度あたりで鼻の内側が凍ってくるのがわかる。寒いという感想は厳密にいうと、痛いに近い。僕の住む町のあるフィンランド中部はそれでもマイナス30度近くまで下がるらしく、マイナス一桁など序の口もしくは序二段であろう。

ではなぜ「問題ない」のか。一つは室内の暖房施設が充実していることが挙げられる。暖房完備は徹底しており、室内で寒さを感じることは稀といってよい。入り口のドアは全て二重でその間隔も広いので冷気が入り込まない。建物間は室内通路で連結されている場合が多く、わざわざ郊外に出る必要がない。またこれは設備と関連があるかは不明だが、蛇口をひねると瞬時にお湯が出る。海外経験のある知り合いフィンランド人が、「イギリス、オランダの冬はきつい」「日本は意外に寒いね」と述べているが、これはある意味当たっている。室内は日本の方が冷え冷えで、朝は布団から出るのも億劫、といった感想をこちらでは体験しないからだ。また防寒服や防寒具が充実しているのも見逃せない。例えば靴はしっかりしているせいか底冷えの感覚がない。ジャケットや帽子、手袋などはデザインも豊富でしかも安価なものが多い。

独断だが、冬天候も大きく二つに分けられるのではないかと思う。一つは降雪、もう一つは晴天だがマイナス2桁台。これは気象庁に問い合わせてみたいが、雪が降るのは大体マイナス3度前後で、極寒でしかも雪が降る、という現象はまだ経験したことがない。こちらは粉雪で見た目には降っているのかという感じだが、積もるのはことのほか早い。生活上、難儀なのは寒さではなく、むしろ突然の降雪のほうである。除雪が間に合わないため、道が「消滅」してしまい、移動に手間取る。自転車だとわだちを作りながら進まなければならない。冗談ではなく通学帰宅途中、路頭に迷うことがあった。雪景色は通常の地理感覚を麻痺させてしまうのだ。また雪があまりにも身近なせいか、日本でいう雪景色を愉しむことに疎遠になってしまったようだ。

まとめるとフィンランドの自然現象としての冬は厳しいが、日常生活ではむしろ快適な部分が多い。問題は寒さではなくむしろ降雪、積雪であり、今回は書けなかったが、温度上昇にともなう路面凍結が目下、悩みの種である。


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ポスト・スクリプト

某情報紙に寄稿したものの転載。現地の冬に関する感想は、特に変わっていない。本文でも少し言及したが、実は路面凍結の方がやっかいで、ひどいときは普通に徒歩で歩いていても滑りこける。まして自転車運転は無謀かも(しかし僕は乗り続けたぞ。しかもまだ1回「しか」こけてない)。

さてと今年の冬はどうなるんだろうか。
(2004年9月19日)


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