たんぽぽの小道

たんぽぽの小道

三つ葉のクローバー

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三つ葉のクローバー


ユイの家の前にはまっすぐに続く道がありました。まっすぐまっすぐ歩くと、ユイの通う幼稚園に着きます。朝はおばあちゃんと手をつないで歩きます。幼稚園が終わると、一人で歩いて帰ったり、おとなりの陽介君と帰ったりします。いつも幼稚園の帰りは道草しながら、ゆっくり帰ります。ユイはこの道が大好きでした。

道沿いの野原には、ユイの大好きなクローバーがたくさん咲いています。おばあちゃんに「四つ葉を見つけるとしあわせになれるし、願いがかなうんだよ。」って聞いてから、四つ葉を見つけることは日課のようになりました。それにはわけがありました。ユイのおかあさんはとても体が弱く、長い間入院しています。「おかあさんの病気がなおりますように、元気になりますように」って心の中で祈りながら、毎日さがしました。

明日は日曜日。おばあちゃんとおとうさんとで、おかあさんに会いに行く日です。病院に行く日はいつも四つ葉を持っていきます。おかあさんが元気になりますようにと心の中でお祈りしながら、四つ葉をさがしました。でも、いつもはちゃんと見つけられるのに今日に限って、全然見つけられません。おとなりの陽介君が、「ユイちゃん、遊ぼうよー。」って声をかけてきましたが、「陽介君、また今度ね。」って断りました。おばあちゃんが「ユイちゃんおうちに帰ろうね。」って呼びに来ました。「おばあちゃん、四つ葉が見つからないの。」 おばあちゃんは一緒にさがしてくれました。結局、その日はいくらさがしても四つ葉のクローバーは見つかりませんでした。

病院に行くと、おかあさんが、「ユイちゃんどうしたの? 元気がないなぁ。」ってとっても心配そうです。ユイは、「おかあさん、ごめんね。四つ葉が見つからなかったの。」おかあさんは、ニッコリ微笑んで、ユイの頭をなでてくれました。「ユイちゃん、ありがとう。ユイちゃんの気持ち、おかあさんとってもうれしい。ユイちゃん、おかあさんね。四つ葉のクローバーはもちろん好きだけど、三つ葉のクローバーも大好きなの。おかあさんのしあわせは、三つ葉のクローバーみたいにいろんなところにあるの。こうして、ユイちゃんに会えるのもしあわせ。おとうさんやおばあちゃんがいてくれることもしあわせ。毎日ちゃんと朝起きれることも、夜ぐっすり眠れることも、ごはんを食べることができる。お花を見てきれいだなとか、空がとっても青くてしあわせだなとか。ねっ、たくさんあるでしょ? 一番のしあわせは、ユイちゃんがこんなにもおかあさん思いで、とってもいい子だっていうこと。」 おかあさんの顔はとってもしあわせそうです。ユイもなんだかうれしくなってきました。「それとね、ユイちゃんにうれしい報告があるの。退院が決まったの。」 ユイはうれしくて、飛び上がりました。

ユイはおかあさんの言ったことばを考えてみました。ユイにはまだ難しいことはわからないけど、うれしいことや心の中がふんわり暖かくなることはたくさんあります。大好きなおかあさんやおとうさんやおばあちゃんのことを思う時はもちろん、幼稚園までのまっすぐの道を歩くこと、大好きなたんぽぽを見つけた時や黄色いたんぽぽから、綿帽子になって、綿帽子をふぅ~って吹く時、しろつめ草でお花の冠を作ってお姫さまのようにお花の冠をかぶる時。それから、おとなりの陽介君と一緒に遊んでる時も。

なんだか心の中がふわふわとあったかくなって、とってもいい気持ちです。こういう気持ちがしあわせっていうのかなって思いました。

「ユイちゃーん、遊ぼうよ。」

「あっ、陽介君だ。」

ユイは外に駆けていきました。


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