モモちゃんち

モモちゃんち

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北から来た友達は、今年もまた巣をかけた。
「できるかぎりのことはするからね…。」
3年目の正直……。 3年越しの想い。。。
暑い日には、水を打ち、週末には会社の前を見回り、 
夏祭りの夜は、ヒトが入れないようにする。そしてまた水を打つ。

そして、ようやく今年の卵が孵った。。。
小さな頭が見えた。 あぁ、4羽うまれたんだ。。。

他の家の軒先のツバメはもうかなり大きい。
ぴぃぴぃぴぃ と鳴いて、親にえさをねだっている。
それなのに、会社のツバメはまだ生まれたて…。
それは、今年もまた1度、巣を落とされたから…。
まだ、卵を産む前だったんだけど。。。 
そしてまた、親鳥はあきらめずに巣材を運んだ。
(また1からやり直すのか。強いよね。)

そして。。ようやく、今年はかわいいヒナが生まれた。
まだ、ピィとも鳴かないくらい小さいけど…。



7月の第2週。週末にいきなり雨が上がり、猛暑が襲った。
4匹のヒナは、少し大きくなってきたのに。
暑さにやられたのか、ぐったりとして巣から落ちてしまった。
社長が会社に戻ると、2匹のヒナが2m以上下のコンクリートの地面に落ちていた。
あわてて近寄ると、それでもまだ、息があった。
社長は2匹をそっと巣へ戻した。

翌日、心配になった社長がそっと巣をのぞくと、
2匹のヒナはつめたくなっていた。。。
私は、休日の会社にむかった。
2匹のヒナは、まだ産毛が残っていて、羽は生え揃っていなかった。
うずくまった姿勢のまま、ぐったりと。
「こんな暑いところで、よくがんばったね。
もう暑くないからね。涼しいところへいこうね。」
(土に帰ろう。。そしてまた、生まれ変わろうね。)
2匹のヒナに声をかけた。涙が出てきた。
(ヒトはこんなにも弱いのか。 私はこんなにも無力なのか…。)

何もできないって、泣いてるだけ? 
ダメでも、無力でも、それでも…。
なにがなんでも。私だって、諦めちゃダメだよね。
できること、やらなくちゃ、ね……。
泣くのをやめた。。。

残された2匹を守らなきゃ!
ううん。守るなんて大層なこと、私にはできない。
親鳥の味方でいたいってことダケ…。それだけ。
わたしはホースをひっぱり出した。

焼けたコンクリートは、水をすぐ蒸発させる。。。
ホロの上にも水を撒く。
脚立によじ登り、水をまきながら、そっとのぞくと
残りのヒナ達も、ぐったりとしていた。
(がんばれ! ちびちゃん、がんばれ。)

日曜日……。 心配になって、会社へ行った。
車を停めたとたん、コンクリートのうえに、小さな黒いカタマリ……。
まさか!! そっと近づくと、やっぱりヒナだった。
そーっと、つつくと ヒナがピクッと動いた。
「よかったーっっ! 生きてる!まだ生きてるよ!!!」
私は社長に連絡を入れた。社長は会社の鍵を持って、かけつけてきた。
昔、友達が野鳥を保護したとき、動物園に保護してもらったことを思い出していた。
タウンページを開いて、動物園に問い合せる。
市立動物園では、獣医さんが親切に相談に乗ってくれた。

ツバメの場合、ヒトが触って匂いがついても、育児放棄したりしないそうだ。
でも、飛べないヒナがみずからすすんで 
巣から出ようとするのは尋常じゃない。と言われた。
それでも、親が巣の周りにいて、育児放棄していないなら
巣に戻したほうがいい、と言われた。
万が一のときには、保護もしている。とも言ってくれた。

私たちは獣医さんの指示に従うことにした。
脚立をひっぱりだして、そっと巣をのぞくと、
もう1羽のヒナはどこにもいなかった。。。
この子と同じように落ちたのか、カラスに攫われたのか…。

とにかく、この子が最後の1羽になってしまった。
ぐったりとした姿が痛ましかった。
ヒトに触られるなんて、怖いのだろうに、逃げる元気もないなんて…。

そっと、巣に戻し、水を撒き、その日は家に帰った。。。

夜。 眠る前に ふと、明日まであの子が生きていてくれるか心配になった。
どうか、元気になっていてくれますように……。

次の朝。 出勤すると、小さな頭がピコッと動いた。
「よかった! 1日生き延びてくれたんだ!」
シトシトと降り始めた雨模様の空を見上げて、ホッと肩の力が抜けた。
神様、ホントありがとう!
今日1日、雨よ。やまないで…。
せめて、この子が体力が戻るまで…、梅雨よ、明けないで!
せめて、もう少し、もう少しだけ。。。

梅雨のきまぐれか、女神の機転か、その1週間、雨はシトシトと降り続けた。。

1週間、10日と経つと、チビちゃんは ぐんっと大きくなった。
少し産毛は残ってたけど、羽も生え揃って、
巣の縁にちょこんと留まっている。。。
「もうじき、飛びますよ。」 社長が上を見上げながら言った。

次の日。。。
巣には、親の姿も、チビちゃんの姿もなかった。。。
(あぁ。 飛んだんだ。。。 )
空になった巣を見上げて、少し寂しくて、すごくすごく嬉しかった。

空、 飛んだんだ。 私の友達が。。。。

そうして、今年。初めて、会社のツバメが 空を飛んだ。

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