仮面 小学生高学年



  小学生時代   高学年


 そうして人に近付かず、離れず、一歩距離を置きながら過ごし続け幾年かが過ぎ・・・。私は小学生の高学年になっていた。
 これぐらいの歳になると、私以外の子等も変化が出てくる。小さな恋や付き合う人間・・・。
 仲良しグループや上下関係、いじめ、迫害、小さな教室の中が、まるでどこかの国の様にも見える。

 冷めていた・・・?

 そう言えば聞こえが良いのかもしれない。周りの無邪気さ故の残酷さに嫌気が差していた気がする・・・。

 私の居場所は・・・?

 私は居ても居なくても良い場所に居たと思う。
 何か特別、人より長ける才も無く、人より劣ることも無かった・・・。
 無いと言えば嘘になるが、人に蔑まれる要素は無かったと思う。
 その頃の私には、もう一人の自分が居り、いつも他人より自分を見るようになっていた。他人を眺めても変わる事は無く、きっと自分自身に変化を求めていたのだろう。

 もう一人の私はいつも後ろで私を見つめ続けた。
 自分の言動、自分の行動などを他人が見ているかの様に観察し、分析した。

 今では馬鹿らしくて笑える話だが、その頃の私はテレビなどの影響を強く受けたのか、正義感に溢れ優しさがあった。
 寂しいから、優しくなれた。独りが嫌だから、守れる力を得ようとしていた。そう思う・・・。


 この頃の私の周りには一人だけ友達だと思われる人間がいた。

 彼は同級生で隣のクラスに転校してきた少年だ。どちらかと言えば優等生タイプの男の子で、私の住む団地のそばにある社宅に越してきたのだ。
 何処から引っ越して来たのかは忘れたが、喋り方が少し変わっていて、クラスや周囲の人間と馴染めずにいたところ私が声を掛けたのだ。
 性格的には控えめで、大人しい感じだった。クラスでは友達も居らず、休み時間なども時間を共有した。
 学校が終わっても一緒に帰り、日が暮れるまで遊んだ。
 初めの頃・・・、寂しさを紛らわす為に遊んでいた記憶がある。しかし、日が経つにつれ彼は他の誰とも違う存在になっていった。
 日々、共に過ごした時間が求めていたモノを思い出させる。

 友情・・・?

 友達・・・?

 私の胸に開いていた穴が塞がった気がした。

 探しても見付からないもの・・。
 私には手に入らないもの・・・。
 そう思い、諦め、忘れかけていた想いが湧き上がる。

 授業が終わり、家に帰るとランドセルを放り投げ遊びに出て行く。
 駄菓子屋に自転車を走らせ、公園でお菓子を分け合いながら食べ、秘密基地など作って遊んだりする。そんな、当たり前が私にとっては初めてのこと。
 とても満たされた時間だった。

 しかし、そんな時間も私には長くは続かなかった。

私は、他の人間に対して、心を開くことが無かったが、彼に対しては違った。
そして、友達などは一人いれば良いと思っていた。
彼も私に対しては、そうであると思い疑わなかった。
しかし、彼にとってはそれは大きなストレスだったのかも知れない。今はそう思う・・・。
ある日の話だ・・・。
私はいつもの様に、学校の授業が終わり彼を迎えに彼の教室に向かった。
彼は誰かと話しており、私に気付かない・・。
それを見た私は嫉妬のようなものを感じ、周囲を気にせず彼を呼び、帰ろうと言った。
私に気付いた彼は、申し訳なさそうに話をしていた相手に別れを告げ、私の許に来た。
暫く、そうゆう日々が続いた後、変化が現れる・・・。
いつも一緒に遊んでいた彼は、塾へ行く、親と出掛けるなどと言って、日に日に私の誘いを断るようになっていた。
私も最初の頃は「仕方ないな・・・。」と思い家に帰り一人で過ごした。
しかし、所詮は子供・・・。
隠す事、嘘を吐く事に慣れていないせいもあり、少しずつ襤褸が出る。
昔からよく人を見てきた私には、彼が嘘を吐いている事が直ぐに判った。
問質したり、真実を直ぐに調べようとしなかったのは、彼が私に対して嘘を吐いていると言う事を信じたくなかったんだと思う・・・。

少しずつ遊ぶ時間も減って行き、彼は離れていく・・。
私の思想が真実だと思われた時、行動に移った。
自分にとっても最後の望みだったが、今、思えば馬鹿なことをしたと思う。

私は彼が親と出掛けると言った日に彼の家に向かった。
家の前に着き、インターホンを押す・・。
「はーい!!」
彼の親が元気良く扉を開いた。
彼の親が言うには友達の家に行ったと言うことだ。
私は自分の目で見なくては彼が嘘を吐いていると信じきれず、自転車を走らせ、その子の家に向かった。
その子の家が近付いてくると、私の中に寂しさと哀しさが重く圧し掛かる。
「やめよう・・・。」
そう想い、ペダルから足を下ろす。
すると、呆然と立ち尽くす私の後ろから子供達の笑い声が聞こえた。
振り返ると、彼とその友達達だった。
私に気付くと
「やぁ!!」
と、気楽に声を掛ける子等の後ろに居た彼の顔を私は忘れない・・・。
迷惑そうな、憐れむ様なあの顔を・・・。
彼にとっては友達が出来るまでの代用品だったのか?
心から友達に成れたと思っていたのは私だけだったのか?
今となっては、もう判らないことだが・・・。
それから彼とは話さなくなった。
そして、私は本当の気持ちを人に話さなくなっていった・・・。


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