
シマノ鈴鹿ロードレースは、今回で34回目となります。アマチュアレースでは、日本最大のお祭り的レースとなります。初心者から上級者まで楽しめる草レースとなるのです。
2日間に渡る数あるカテゴリーの中から、私たちは1日目のサイクルマラソンというカテゴリーのレースへ参戦します。
サイクルマラソンとは、鈴鹿サーキットのコース西側の周回コース2.8kmを1時間という決められた時間内に、どれだけ長い距離を走ることができるかを競うレースとなります。
早朝4時に、会場の入場門へと向かいました。
まだ4時だというのに、すでに100人ほどの参加者が開門を待ち構えていました。開門すると、まずは場所取りです。33番ゲートの一角に場所を確保すると、後は受付を待ちます。
鈴鹿サーキットは、2年ぶりの入場となりました。グランドスタンド席前のストレートの真ん中に立つと、そのスケールに圧倒されます。まだかなり時間はあるので、参加者の数も少なく寂しさもあったりします。あまりにも幅広いコースは、なんとも非日常的に広すぎて、海の真ん中にプカンとでも浮かんだように心もとない感じとなります。
「今日はここで、目いっぱい走ることができるんだ!」と考えると、おもわず胸がキュンキュンしてしまう自分がいました。初恋のときに味わった期待と不安が同居する恋心に、少し似た気分です。
現場に立つと、なんと言っても日常では感じることのないスケール感や緊張感が湧き上がってくるのです。
「やっぱり、鈴鹿はいいな。」とひとりつぶやきます。
今回のメンバーは初めて鈴鹿を走る方が多かったので、私のリードで、はじめの1周回を一緒に走ります。
この鈴鹿サーキットを自転車で走ることができることに対して、初めての方はどのように感じているのでしょうか?私とはまた違った格別な思いで、臨んでいるのでしょうか?
私以上に興奮していることは、間違いなさそうでした。その興奮が危険に至らないように、抑えるのが私の役目でもあります。
試走時間が始まり、各自コース内へと入って行きます。もちろん路面状況は抜群に良く、タイヤのグリップも小気味良いほどにしっかり感が伝わってきます。ペダルを回すほどにグイグイと進んで行く感じなのです。これらも日常では味わえない感覚だと言えます。小気味良く思い以上の加速感に「もしかしたら、走れるかも知れない!」と勘違いする(笑)ほどに軽快にペダルを回すことができるのです。
しかし、試走ではそこは抑えてゆっくりとペダルを回します。かみ締めるように、過去の記憶を思い出すかのようにゆっくりと回すのです。
西コースに入りしばらく走ると、緩やかな下りとなります。広々としたコース上では、ブレーキの必要もないほどにゆったりと走ることができるのです。日常では味わえることのないスピード感に思わず酔ってしまいそうです。
しかし、そこでハッと我に返ると、このスピードで何かのっぴきならない事態が起これば大変なことになってしまうのでは?という危惧も沸き起こってくるのです。
初めて走るライダーにとっては、この浮遊感に似た感覚が、自制心を失わせてしまい、技量以上のスピードで走ってしまいかねません。
これがまさしく鈴鹿サーキットの魔物なのです。知らず知らずの内に、自分の実力以上の走りをしてしまっているのが、この地に魔物が住んでいるからに他ならないのです。
車のレースでも、何度かこの地を訪れています。友人のレースを観戦するために訪れたときに、目の前での激しいクラッシュシーンを目の当たりにした記憶があります。
あたかも自分がヒーローにでもなったかのような気分にさせられ、いつの間にか悪魔の妖気に包み込まれているのもこの地だからなのです。
強い自制心を効かせる必要があるのも、この鈴鹿サーキットだからなのです。
つづく