モラと桃次郎と私のネコ的生活

モラと桃次郎と私のネコ的生活

いかれ帽子屋的日々vol.2娘の旅立ち


婚約者と生活を始めるために。
時代は変わったとはわかっていたけど、結婚への手順がこんなにも親と子で違うのかと改めて思う。
私たちが育て、私たちのことをみて育ったのだから・・・と思っていたのに、娘はこの3月に
「とりあえず同棲したいから彼が挨拶に来るから」と私に言った。
「とりあえず」という言葉からも「同棲」という言葉からも結婚という発想にはほど遠いものを感じた。
「とりあえずじゃなく、結婚すればいいんじゃない?」と言っても
「それは後でするからとりあえず」
「それは」って、結婚をなんと心得ているのか?!
わたしや夫と何度も話し、そのたびにかみ合わない議論となり、冷戦状態。
それでも相手側のご両親も同じ価値観を持っていてくれたようで両家の顔合わせ、略式の結納と進んだ。
結婚式は来年の1月にお互いが休みがとれるときに、入籍は二人できめた8月のある日に。
と具体的に決まったが、どの日から生活をともにするのかとなるとやはり考えが食い違う。
「もう!お母さんたちの都合(?)を考えてたらいつまでたっても決まらないじゃない!」と逆ギレがはじまり「7月から彼と住みます!」ということになった。
身の回りのものを紙袋にざっっくりと詰め、彼の車に積み込んだ。
私が「これだけは持っていったら」と、娘が生まれたときに夫の父がお祝いにと贈ってくれた市松人形だけが場違いな一荷物だった。
娘が出て行き、リビングの市松人形を置いてあった一角ががらんとすると改めてその存在の大きさに気付く。
「何か花でも飾ったら?」と夫はその空間がたまらないらしい。
ふと気づくとリビングのカレンダーのところに「お母さんへ」という手紙がはさんであった。
あんなにばたばたと「とりあえず行ってきます」という形で私たちの元を離れた娘だったけど、けっこう準備はしていたのかな。
夫の前ではさらりと読み、翌日ひとりで読み返した。
巣立った寂しさと大好きな彼との生活の希望にあふれる娘を想い、心からよかったと涙がでた。
幼い頃も思春期になってからも私とは違う感性をを持った娘だったから、そのせいで何度もぶつかったが、これからは娘とホンネで人生を語り合える親友になれる気がした。

私の子どもに生まれてくれてありがとう。


                             (2010年7月)


手紙

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