木樽とは明らかに出来が違いますが、リースリングとしては酸化効果がある木樽の方が明らかに高級となりと思います。つまりブルグンダーの扱い方としては価値があるかと思います。

「密封に使った粘土が乾燥してヒビが入った」とかは論外ですが、こうした試みには木樽の汚れなどを恐れているような気配があり、その問題点が葡萄の健康だということを気が付いていない醸造親方の無知や傲慢さが見え隠れするようで嘆かわしい。

これはミネラル風味を味付けする行為ではないか?勿論壺のワインはそれなりの魅力はありますが。 (2015/03/23 09:03:31 AM)

2015/03/22
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また脇道にそれてしまうが、ドイツのアンフォラワインについて少し補足しておきたい。


ドイツでは2005年にラインガウのペーター・ヤコブ・キューンがスペインから購入したティナハ(スペインでは素焼きの醸造容器をティナハという)でリースリングを醸したのが最初だ。その醸造には数年を要し、酸化して褐色に染まり、最初の一年は濁っていたのがいつしか唐突に澄んで、予想もつかない展開をした醸造だったらしい。キューンではコンテナに葡萄畑の土を詰めて、そこにティナハの下半分を埋めて、蓋にはシリコンのシートの上に珪岩の円形プレートを置いて、その上に葡萄畑から持ってきた珪岩を置いて使っている。ドイツのビオディナミの先駆者だけあって、色んな所に拘りが感じられる。(キューンのティナハの写真は こちら か、Weingut Kühn Amphoreでググると出てくる)

例えば、ティナハをセラーの床の上に置かずに、わざわざコンテナに土を詰めて半分埋めている点。ジョージア流に首まで埋めることをせず、かといって南ティロルのフォラドリ流に床の上に立てることもしていないのは、おそらく考えがあってのことだろう。一つには醸造温度と容器内でのワインの循環を考えたのかもしれないし、シュタイナー的に天と地のエネルギーのバランスを考えたのかもしれない。そして珪岩のプレートを乗せるのは、単なる重しではなく、そこに天体のエネルギーによる効果を考えているのではないかと推測される。もっとも、私の勝手な思い込みなので、本人に聞くと笑われるかもしれないが。

そもそも、ティナハは厚手の容器なので、本来土に埋める必要はない。ジョージアのクヴェヴリは薄手…確か厚さ2cm前後だったか…なので、埋めなければ中に液体を入れると壊れてしまう。さらに焼成後まだ暖かいうちか、再加熱してから内部に蜜蝋を塗布して浸透させ、気密性と衛生を確保してから用いるが、ティナハの場合はどうなのだろう。確か何も処理しないと聞いた気がするが、今度確認してみよう。そしてクヴェヴリは埋める前に消石灰のペーストを厚く塗り重ねて、強度と衛生状態を確保してから地面に埋める。首まで埋めて、発酵するときは炭酸ガスが抜けるようにするが、熟成する際は石板か木の板を乗せその上に厚く粘土をかぶせて密封し、炭酸ガスを抜く穴を一つだけ開けるそうだ。

長年ジョージアでワイン造りを見て来て、現在カッパドキアでキュプ(トルコでは陶製の容器をキュプという)でワイン造りをしている ウド・ヒルシュ 氏によれば、アンティークのキュプの用途は開口部で見分けることが出来るという。開口部が膨らんでおらず、平たくなっていて、上に蓋を載せて密封できるような形状になっていれば、それはワインの醸造に用いられたものなのだそうだ。ヒルシュ氏はキュプの縁にペーストを盛って、その上に円形のガラス板を乗せて、中央によく醸造用の樽やタンクに刺さっている、ガス抜き用のパイプを突き刺して醸造しているが、彼の場合もラインガウのキューンと同様、キュプの下半分を埋めた状態のものもあれば、完全に埋めたものや、床の上に置いているものもある。肝心なのは、蓋を密封することにある。詳細はヴィノテーク2015年1月号参照。


ウド・ヒルシュ氏が数百年前に製造されたキュプで醸造している白ワイン。発酵中は炭酸ガスが表面を覆っており、ガスを逃がす必要があり、また一日に何度か果帽を押し下げ酸素を供給する必要があるので密封しないが、2, 3週間して発酵が終わると密封する。





シェッツェル醸造所のティナハ。ガラス板とティナハの間にペーストが見える。気密性が破れると液面に皮膜が出来るので目視確認も有効。


キューン、シェッツェル以外にも近年は、私の知る限りではファルツのバッサーマン・ヨーダン、ハイナー・ザウアー、オーディンスタールがティナハで醸造している。ハイナー・ザウアーとバッサーマン・ヨーダンは、ザウアーがスペインに所有する醸造所に調達させたティナハを使っているのだが、その開口部はふくらんでいて密閉しにくそうだ。とはいえ、スペイン南部の伝統的な醸造容器はそうなんだ、と言われればそれまでで、フォラドリのセラーにあるのも同じく縁が盛り上がっている。密閉する蓋にノウハウがあるのかもしれない。


ハイナー・ザウアー醸造所のティナハ。陶製の蓋とティナハの間は粘土で密封するが、2011年に最初に醸造したときは気密性が保たれなかったティナハがあり、短期間で酢になったと悔しがっていた。密封に使った粘土が乾燥してヒビが入った際、ルーマニアから来た研修生が塩を混ぜるとよい、と言うのでその通りにしたら上手くいったそうだ。ルーマニアにもアンフォラ醸造の伝統があるのだろうか。ちなみに、バッサーマン・ヨーダンではセラーの床の上に立てている。オーディンスタールは首まで埋めている。ティナハで醸造する葡萄品種もそれぞれ生産者の考え方があって興味深いが、その話はまた別の機会に。ヴィノテーク2015年3月号にも少し書いてあります。







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Last updated  2015/03/23 12:06:24 AM
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李斯。@ お久しぶりです。 御無沙汰しております。 何時も拝見してい…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その64(04/05) 「ムスカテラー辛口」は私も買おうかと思…
mosel2002 @ Re[1]:ひさびさのドイツ・その54(03/14) pfaelzerweinさん >私の印象では2013年…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その54(03/14) 私の印象では2013年からは上の設備を上手…

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