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この短編集シリーズも、本格ミステリの枠組みの中で、完全にお遊びなネーミング、ライトな文体と、軽く読みやすいように見せかけて、とんでもない犯人と、秘密を明かせない状況を設定することで、ダークな雰囲気の中、「答え合わせ」が出来ないモヤモヤした感情を抱かせてくれます。
学校の名前が、私立ペルム学園。
「探偵役」を担う「化石少女」の名前が、神舞まりあ。
ネーミングから「遊び」感が伝わってきます。
そして「あいにくの雨で」にも通じる、謎に陰謀と権謀術策渦巻く生徒会(笑)
麻耶雄嵩先生は、どういう高校時代を過ごされたんだろう…
てか、普通の学校の生徒会って、陰謀渦巻いてるのかな…?
さておき、もちろん、しっかりとミステリな作品です。
化石少女 (徳間文庫) [ 麻耶雄嵩 ]
「化石少女」こと、この「名探偵」、勘は鋭く、推理の筋も通っているのですが…
様々な理由から、彼女の「名推理」はお蔵入りになってしまうのです。
この「真犯人」を糾弾できないという属性は、先生の書かれた「銘探偵メルカトル鮎」や「神様」の対極にあります。
それに寄与する「ワトソン」役の「私」の存在も大きいわけですが、この関係性も、先生が様々な「名探偵」―「ワトソン」関係を描いてきたからこそ。
カタルシスをもたらしてくれないどころか、モヤモヤがつのる構成も、最後の短編に向けての積み上げなのだな、と。
そう考えると納得出来ます。
麻耶雄嵩先生らしい、人を喰ったというより、人を喰うポップでダークなミステリ作品でした。
化石少女と七つの冒険 (徳間文庫) [ 麻耶雄嵩 ]
で、その続編。
「後輩」も「探偵」も増えて、物語はさらにパワーアップ…と言いたいところですが、ダークでイビツな部分が加速しています。
さすがは麻耶雄嵩先生。
ミステリとしても難易度の高い謎が並びますが、前作以上に緊張感が増し、人間関係も複雑になっていることが、さらに問題をこじらせていきます。
この物語に「解決」はあるのか。
あるいは、「続編」はあるのか。
読むほどに深みにはまる、さすがの麻耶雄嵩印作品でした。
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