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msk222@ Re[1]:被災地支援(01/07) みちのくはじめさんへ ぼくの場合、感情の…
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aki@ Re:被災地支援(01/07) この様な書込大変失礼致します。日本も当…

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2006.07.29
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カテゴリ: 川柳・文芸
おんな
〈スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。ただし、それは私の体を、であって、心では決して、ない〉

〈私は、かつて晩年を迎えたことがある〉
   『晩年の子供』
〈涙は虫眼鏡の役目をはたして彼の爪を拡大させる〉
   『2・4・7』

山田詠美の書き出しの1行である。
書店での立ち読みで、この書き出しに釣られてつい買ってしまった本が幾冊かあるが、
「最初の一行さえ出てくれば、あとは書き上げられるという確信があるという。だから、本当に書きたくなる一行が発酵するのをじっと待つ」
というほど、“一行”へのこだわりは強いが、実際に僕らも川柳をやっていると言うと「そこで一句!」と、座興のように強要されることがあるが、たった一行を得るためにどれほど苦労をしていることか…。
山田の文体のたしかさ、表現力の豊かさや言語感覚の鋭さといった、優れた作品に備わるあらゆる要素が、書き出しのわずか数行に凝縮されている。作家としてのこうした素地は、天賦のものといっていいだろう。

山田詠美の文学賞の受賞歴はすさまじい。
1985年の処女作『ベッド タイム アイズ』で文藝賞。2年後には『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』で、早くも作家の勲章ともいうべき直木賞を受賞している。その後、平林たい子文学賞、女流文学賞と受賞を重ね、文壇デビューからわずか数年にして、作家としての地位を確固たるものにしている。
作家経歴だけを見ると、順風一帆な人生を歩んできているかように見えるが、この間、数多くの紆余曲折があった。
明治大学に入学して、18歳から親元を離れ、一人暮らしを始めるのだが、学費や生活費の仕送りも断り、アルバイトで生計を立てている。
大学では漫画研究会に所属していたが、すでに在学中から本名の山田双葉名で作品を発表。大学を3年で中退し、漫画家として独り立ちしている。
しかし、「絵が下手で、自分の才能に限界を感じたことや、編集者の注文に嫌気がさして」3年足らずで絵筆を投げる。
その後、漫画家時代からはじめていたホステスやモデル(ヌード)の仕事に就く。やがて、一人息子を抱える米黒人兵と同居。『ベッド タイム アイズ』の印象とも重なり、当時の経歴や私生活が、スキャンダルとしてセンセーショナルに報じられた。
山田にとって、この時期の体験がその後の価値観や小説に及ぼした影響は小さくはない、という。
「大学を中退したことで、逆に余りあるものを学んできた。風俗関係の女性たちと接することができたこともその一つ。世の中から偏見をもたれている人たちのありのままの姿を目の当たりにしてきたことで、かえって偏見のもつつまらなさや、本当に公平なものは何かを知った気がする」という。
人の価値を地位や権力、財力で判断しないで、「心のあり方で決める」という姿勢は、自身の生き方にも、また小説にも色濃く反映されている。
山田は、「18歳のときから全部、自分の判断で生きてきたけれど、どれも本当にやりたいことではなかった。
山田は、小さいころから〈小説を書くべき私〉というのがわかっていて、でも、どうやってそれに近づいていけばいいのかわからない焦燥感に駆られた」という日日を送ったという。
小説を書くべき“私”を意識していて、実はすでに19歳のときから、小説の執筆に手を染めていたのだ。
「最初の10枚ぐらい書いては破り捨て、の繰り返し。まだまだ書き出しに自信がもてなかった」
ところに目に入ったのが、作家・宇野千代がある雑誌に語った文章作法。「毎日それを読みながら作品を書き進め」、6年がかりで書き上げた小説が、応募総数653編の中から選考委員全員一致で選ばれた冒頭の一行の書き出しの『ベッド タイム アイズ』だった。時に26歳、作家・山田詠美が誕生した。

「本当に書かなければ、という使命感をもったのは、ある男の子が事故で死んでしまったときから」応募する3年前のことだった。
「自分がかかわった人間や出来事をただ記憶に留めるだけでなく、何か、の形に焼きつけておかなければ」という思いが、小さいころからの密かな願望とあいまって、作家の道を選び取らせたということだ。
僕たちも、この楽天日記にこうして書き留めておくのも「何か、の形に焼きつける」という作業であろう。




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Last updated  2006.07.29 22:38:23
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