中国の日本人コミュニティーで不安広がる 日本人学校の男児襲われ死亡
2024 年 9 月 21 日
ニック・マーシュ記者( BBC ニュース)、シャイマア・ハリル日本特派員(東京)
中国広東省深圳市で 日本人学校に通う日本人男児が刃物で刺され死亡した事件 を受け、日本人駐在員の間に懸念が広がっている。日本の大手企業は、従業員に用心を呼びかけている。
東芝やトヨタ自動車は、暴力の可能性に警戒するよう関係者に呼びかけた。パナソニックは、帰国時の飛行機代を負担すると発表している。
日本当局は、男児殺害に対する非難を繰り返し、中国政府に自国民の安全を確保するよう求めている。
10 歳の男児が刺された 18 日の事件を含め、中国ではここ数カ月の間に外国人を狙った襲撃事件が 3 件起きている。
BBC の取材に対する回答でパナソニックは、今回の事件を受け、中国に滞在する「従業員の安全と健康を最優先する」と述べた。
パナソニックは、駐在員とその家族に会社負担での日本への一時帰国を認めるとともに、カウンセリングサービスを提供するとしている。
中国に従業員が約 100 人いる東芝は、従業員に対して「安全に注意するように」と呼びかけている。
世界最大の自動車メーカー、トヨタは BBC
に対し、「日本人駐在員を支援」し、彼らが必要とする情報を提供していると述べた。
日本の 金杉憲治駐中国大使 は中国政府に対し、日本人の安全を確保するために「最大限の努力をする」よう求めた。
岸田文雄首相は 19
日の時点で、襲撃を「極めて卑劣な犯行」と呼び、「中国側に対し、事実関係の説明を強く求めていきます」と述べている。
中国のいくつかの日本人学校では保護者に連絡を取り、刺傷事件を受けて厳戒態勢を敷いた。
広州日本人学校は一部の活動を中止し、公共の場で大きな声で日本語を話すことを控えるよう警告した。
中国に住む日本人駐在員コミュニティーからは、子供たちの安全を心配する声が上がっている。
深圳に 10 年近く住む 53 歳の男性ビジネスマンは、娘をいつもより早く国外の大学に帰すつもりだと BBC に語った。
「深圳は外国人に対して比較的オープンなので、安全な場所だと思っていた。けれども今は誰もが、安全に対して前より慎重になっている」と、この男性は語った。
「大勢の日本人がとても心配していて、たくさんの親類や友人が私の安否を確認するために連絡を取ってきた」
深圳当局はこの事件を「深く悲しんでいる」と述べ、 19 日の朝までに、事件のあった学校周辺に監視カメラを設置し始めたという。
地元メディア「深圳区報」は、当局者が「我々は、外国人を含む深圳のすべての人命、財産、安全、法的権利を保護するために効果的な措置を取り続ける」と述べたと報じた。
中国国営紙も社説で「この暴力的な行動は、一般の中国人の性質を表していない」と、容疑者を非難した。
深圳では 20 日、地元の市民が日本人学校の校門に花を供え始めた。
市民の一人は、「本当に悲しい。このようなことはあってはならない」と、シンガポールのニュースサイト「ストレーツ・タイムズ」に語った。
元教師だという別の市民は、「この子はどちらの国の子だろうと、家族の希望であり、国の希望だ」と話した。
「個別の事件」
事件による影響が広がるなか、さまざまな報道や公式ソースから、事件詳細が明らかになってきた。
事件は現地時間 18 日午前 8 時、男児が通う深圳日本人学校の外で起きた。
この男児は腹部を刺され、 19
日早朝に負傷がもとで死亡した。警察はこの男児について、「 シェン
」という名前のみ公表している。
一方、現場で逮捕された加害者は 44 歳男性の「 鐘 」容疑者と、名字のみ公表されている。
深圳の国営メディアによると、鐘容疑者は 2015
年に「公共インフラの破損」の疑いで、 2019
年には「公序良俗妨害」の疑いで、それぞれ逮捕された前科がある。
目撃者によると、容疑者は今回の犯行の際、顔を隠そうとしなかったという。
NHK の取材に応じた目撃者は、「逃げようともせずその場に立ち尽くして、学校を警備していた地元の警察に取り押さえられていた」と述べた。
中国当局は正確な動機を明らかにしていないが、今年に入り過去に 2
件発生した事件と同様、この刺殺事件を「 個別の事件
」と繰り返し呼んでいる。
中国では 6 月にも東部・蘇州市で、日本人の母子を刃物で狙った襲撃事件が起きた。この事件も日本人学校の近くで発生し、 母子を守ろうとした中国人女性が死亡した 。
これを受けて日本政府は、中国でスクールバスの警備員を雇うために約 250 万ドル(約 3 億 6000 万円)を要求した。
同じ 6
月には、北東部・吉林省の公園で
アメリカ人の大学講師4
人が刃物で刺され負傷する事件
があった。
険悪な関係
こうした中で中国当局は、これが大きな外交危機に発展しないようにしつつ、中国にいる日本人社会の安全をどのように保証するかに注目している。
日中両国は長い間、険悪な関係にあった。何十年もの間、両国は歴史的な不満から領土問題に至るまで、多くの問題で衝突してきた。
9 月 18 日は日本が 1931 年 9 月、満州侵略を正当化するために線路爆破を偽装した「 柳条湖事件 」の起きた日でもあると指摘する声もある。同事件は、 14 年にわたる日中戦争の引き金となった。
一人の元日本外交官は、深圳での襲撃事件は、中国の学校における「 長年の反日教育の結果
」だと述べた。
BBC の取材に応じた複数の日本人外交官は、日中の外交関係は緊張することがしばしばあるものの、中国との経済協力は常にそれと平行して、安定的に進んできたと話した。
しかし、今回の襲撃が国際的なハイテク産業の中心地、深圳で起きたという事実は、日中双方を神経質にさせるかもしれない。
追加取材:中山千佳(東京)、ケリー・アン(シンガポール)
(英語記事 Schoolboy's killing in China sparks Japanese fears
反日教育のせい
だと決めつける日本の一部報道に比べると、
被害者や加害者の名前や中国当局やメディア、深せん当局の発表を紹介しているバランスの取れた記事だと思います。
補足記事:
相次ぐ刺傷事件 外国人の被害も
中国では人が多く集まる場所などで刃物による事件があとを絶たないのが現状で、中国の警察当局が中国国内の人々に対して安全に注意するよう呼びかけています。
こうした中、ことしは外国人が被害に遭う事件も相次ぎ、 ことし 6
月、東北部の吉林省の公園でアメリカの大学から派遣されていた教員ら 5
人が突然、男に刃物で刺される事件
がありました。
中国当局は詳しい動機などを明らかにしていませんが、関係者や欧米メディアによりますと、吉林省と江蘇省のいずれの事件も犯行に及んだのは 無職の男
で、失業していたということです。
あとを絶たない刺傷事件などをめぐって、一部の中国メディアは「 社会への報復
」が 1
つの背景ではないかと伝えていて、みずからの不遇を社会などへの不満に転化させ、犯行に及んでいる可能性があるなどと分析しています。
中国 深セン 日本人学校の男子児童が死亡 駐在員と家族の一時帰国認める企業も | NHK | 中国
現場に花束「中国人として非難」 深圳、日本人学校児童が襲われ死亡:朝日新聞デジタル (asahi.com)
中国広東省深セン市にある日本人学校の近くで登校中の男児(10)が刺され亡くなった事件で、逮捕された男は 数々の前科
があることが明らかになった。
香港紙「星島日報」が20日、報じた。
男は44歳で、職業不詳の漢民族。
2015年に公共電気通信施設に損害を与えた疑いで東莞市警察に逮捕された。
2019年には事実捏造で公共の秩序を乱した疑いで深セン市警察に逮捕された。
男はナイフで生徒に怪我を負わせたことを深セン市警察に自白した。捜査の結果、この事件は偶発的な事件であり、男は単独犯だという。現在も慎重に捜査が進められている。
深セン市の担当者は「今回の不幸な事件に深い悲しみと遺憾の意を表し、残念ながら亡くなった学生に深い哀悼の意を表するとともに、被害者のご遺族に心からお悔やみを申し上げます」と述べた。
現在、警察と教育部門は治安対策をさらに強化し、学校や公共の場所の周囲の治安部隊を強化し、学校に安全対策を講じるよう指導しているという。
深センの日本人学校の男児刺殺事件 犯人の44歳男に数々の前科が |
東スポWEB (tokyo-sports.co.jp)
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