「奈良の大仏」と「サグラダ・ファミリア」が語りかけているもの
(今も建設中のサグラダ・ファミリア)
サンティアゴ巡礼街道の アントニ・ガウディ
の設計による建造物について調べている際に、バルセロナに建築中のサグラダ・ファミリア教会に出会った。もちろんこの教会が、ガウディの作品であり、100年の歳月を経た今も建築途上であることは、世間によく知られていることである。
(サグラダ・ファミリアの外観)

今も工事は続いている。
ゴシック様式の理想を追求しているガウディ・
塔は天に鋭く昇る
ガウディは詳細な設計図を残しておらず、大型模型や、紐と錘を
用いた実験道具を使って、構造を検討したのだという。
(錘を使った構造モデル:下に鏡があり、
逆にすると形が分かる)
しかもその模型や資料の大部分は、
スペイン内乱で消失してしまったのだと言うのである。
聖堂内部の柱:森の樹木を連想させる列中
バロセロナ市の中央に高く聳える
サグラダ・ファミリア(聖家族教会)
それでも、
職人の伝承や大まかなデッサンなどわずかなものから推測して、
その時代その時代の建築家が建設を続行している。
100年以上の歳月が流れている。
世界中の建築家や職人が参加して、壮大な大聖堂を完成させようとしる。
このような息の長さ、このように次々とそれに携わる人々が現れる
ガウディの建造物の魅力は何処にあるのだろうか。
何が人々をかくも駆り立てるのか。
このことにとても驚き感銘を受けた。
(東ファサード全体像:イエスの誕生)
東ファサードには、日本人の外尾悦郎が手がけた作品群がある。
この生誕のファサード部分はアントニ・ガウディの作品群として、世界遺産に登録。
(東ファサード・ファゴットを吹く人:外尾悦郎作)


聖堂の塔を飾る破砕タイルによる幾何学文様
世界中から職人や 建築家が
やって来て
建設に参加している
奈良の大仏さま
ちょうどその頃、私たち夫婦は奈良の東大寺をたまたま訪れた。 私たちは、小中学校の修学旅行以来、奈良の大仏さまにはお目にかかっていなかったが、私も連れあいも、半生紀余りの齢を重ねて大仏さまに再会した。
(東大寺・秋の青空に聳える大仏殿・by fujiko)
「子どもの時は、ただ大きいと思っただけで、
あまり印象に残っていなかったが、
今見るとそのすごさ感動ものだねぇ」などと
口々に言い合あって、その壮大さに改めて感銘をうけた。
そして、天平時代に、
こんなにも壮大な仏さまや大仏殿を建造した人々のことに思いをはせた。
(奈良の大仏さま: fujiko撮影)
奈良の大仏 世界最大の鋳造仏 香取忠彦著: 穂積和男・絵 (草思社)
この「奈良の大仏」という本は絵本形式になっており、十数年前に読んだものであるが、大仏再訪後に再読した。
天平時代の人々が、どうやってこの巨大な仏さまを作ったのか。なぜ作らねばならなかったのか。そして、今日、奈良に大仏さまがあるのは、どのような伝承によって今に至っているか。などなど、壮大なスケールで、この本は描いている。 公地公民の律令体制が確立して、国家としての統一を果たした天皇家の巨大プロジェクトとも言うべきこの大事業。中国や朝鮮からの渡来人たちの高い技術や文化に支えられ開花しよとしている日本の仏教。この工事を支えてきた技術者や労働者は、延べ人数にすると、当時の国民の約2人に1人が参加している大事業である。
現代で言ういわゆる環境破壊や工事による犠牲者も甚大である。
ここまでして、行なった大事業。
この「奈良の大仏」の本は、当時の人々の暮らしぶりや大仏建立への並々ならぬ熱気や、完成したときの驚き・畏敬の念などを、まざまざと現代の私たちに伝えてくれる。
この絵本のイラストレーションが、また写実的で素晴らしい。
絵が、遠く天平の時代に、私たちを引き込んで、大仏鋳造の現場に連れて行ってくれる。想像力を豊かに育む手助けをしてくれる。
天平時代が、若々しいエネルギーに満ち溢れ、世界の文化を貪欲に吸収して、民を巻き込んで国を作ろうとしている息ぶきを感じ取ることが出来る。
天平の大仏は、その後の歴史の風雪に崩壊したり、焼失したりしてしまった。しかし、その度に、それを復興し再興しようとする運動があり、今日に受け継がれてきた。千二百年あまりを人々とともに生き続けている。この伝承するエネルギーの凄さ。
ガウディのサグラダ・ファミリア聖堂は、現在進行形の建造物であるが、奈良の大仏さまの建立とその継承は、根っこのところで共通する人々の思いがあるように思われる。建築物に対する普遍的な何かがあるように思われる。
天平の時代を、生き生きと考え想像すること可能にする本「奈良の大仏」。
歴史を学ぶとは、どうあるべきかを語っている本「奈良の大仏」。
修学旅行で奈良に行く小中高生たちには、ぜひ読んでもらいたい本の1冊である。
A3の大型版で95ページ・イラストレーション入りで、かなり骨のある読み応え十分の本である。
「草思社」は最近、経営不振で倒産が伝えられているが、このような良質な本を数々発行している。アマゾンで調べたら、現在もこの本は在庫あり発売している。勿論、図書館にはあるはずである。
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