気になる作家  あ行 

気になる作家 あ行 

芥川龍之介

「藪の中」「蜘蛛の糸」「舞踏会」「トロッコ」「戯作三昧」「杜子春」「芋粥」

 明晰な文章で冴え冴えと物事の真実を描く。子どもでも読めるくらい簡潔に真理をついたものも多い。「藪の中」を読んだ時はかなりの衝撃で身震いした。


阿刀田高

「冷蔵庫より愛をこめて」「ナポレオン狂」「古典にエロスはよく似合う」「小説家の休日」

 どろどろはまりこんでの追求型ではなく、知的で愉しい作品が多い。
 しかし、人生のさまざまな情景をとらえる巧みなミステリーはさらりとどきっとさせてくれる。読書やミステリーの楽しみをいっしょに楽しむエッセイもおもしろい。知の博物館のよう。 
 この人の前職は国会図書館職員。この仕事、私もあこがれていた。


安部公房  

「他人の顔」「砂の女」「燃えつきた地図」「箱男」

なぜか惹かれる。難しくてわけがわからない…とよくいわれるが。説明できないのに、とにかく好き!時々むしょうに読みたくなる。平凡な人間がある時、図らずしも非日常の世界に導かれ、寓話的、前衛的なその世界の中をあてどなくさまよう。
その焦燥感と諦念。やるせないが、どこかに新たなる自分の生きる道を照らす光がかすかに見えているような気がして…


石坂洋次郎

「陽のあたる坂道」「あいつと私」「若い人」

 なぜか中学生の時、よく読んでいた。戦後の青春を描いたもので、新しい時代をつくっていく若い人たちの恋愛や家族がテーマだ。いろんなことに悩みながらも素直に生きていくはきはきとしてのびやかな若い女性が描かれていた。当時の期待された女性像だったのか。
 石原裕次郎や吉永小百合のでてくる日活映画もたくさん見た。私は好きだが。


今江祥智

 「ぼんぼん」「優しさごっこ」「兄貴」

 ふわあっとあたたかい語り口が心地よく、学生時代よく読んでいた。長編も家族や人間の歴史・時代を男の子の目でとらえ、つつみこんだ物語などとてもおもしろく読めた。重いテーマもふくんでいるが、おおらかさや明るさで逆に響いてきた。




江國香織

 「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」「きらきらひかる」「つめたいよるに」「それぞれの週末」「絵本を抱えて部屋のすみへ」

 ふんわりつつみこんでくれるような優しい読み心地。でも的確で鋭い。だから好きだ。はりつめた孤独、ぼんやりとした孤独。人間関係の不思議さを描き出す根底には孤独がある。ふとした情景の中に絶妙にそれが表現されている。
 読む前と読んだ後で読んだ人が、何も変わらなかった…というような作品を書きたいという言葉は逆説的だが、潔くシニカルなこういう感覚、私好みだ。




江戸川乱歩 

 「人間椅子」「屋根裏の散歩者」「芋虫」「鏡地獄」

 血肉を感じさせるような生々しいミステリーである。そして、斬新なアイデアやトリックで人間の恐ろしさやかなしさや狂おしい人恋しさなどをえぐりだしていく。こわいほど、的確に。でもこわくても気味悪くても読みたくなる。


遠藤周作  

「悲しみの歌」「私が棄てた女」「沈黙」「海と毒薬」「孤狸庵閑話シリーズ」

 学生時代よく読んだ。人間の悲しさ、寂しさ、醜さ、せつなさ…ネガティブな部分を掘り下げて書いている。極限状態に追い詰められて人間はどうするのか、それでも他者を思うことはできるのか…真正面から切り込まれる。その一方、ユーモラスであたたかいエッセイ(同じ問いかけがあると思うが)はおもしろくて楽しい。



大石静  

 「私ってブスだったの?」「男こそ顔だ」

 さばさばと、思い切りよく真実をとらえる。冷静にして情熱的。男と女について・恋愛とは・結婚とは…魂をゆさぶるような経験をふまえて語ってくれる。結婚生活については、きれいごとではない部分も臆することなく…
 実生活のエピソードも豊富でエッセイは一気に読めてしまう。


小川洋子 

 「凍りついた香り」「シュガータイム」「ホテルアイリス」

 平凡な人間たちが、織り成す日常も平凡でない人間の奇妙な生活も、不思議な世界に読み変えられていく…物語の世界。ひとつひとつの事象の奥底をていねいにていねいにひも解いて…やはりなぜか惹かれ、時々ひたりたくなる。



大江健三郎

 「死者の奢り」「性的人間」「セブンティーン」「見るまえに跳べ」

 初期の短編をよく読んだ時期がある。鬱屈した生のエネルギーと死の存在感のあいだでたゆたう人間を感じた。

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