黒い奔流


実は私、隠れファンだ。ぼーっと見ていると結構頭がほぐれる。当たり外れあるけれど。
 初期の頃のものなど、役者探ししたりするのもおもしろいので再放送もどんどんしてほしい。

 さて、今回の作品は大好きな松本清張のもので、没後10年の記念作品でずばりおもしろかった。
 キャストは辣腕弁護士・渡瀬恒彦、妻・片平なぎさ、弁護士の愛人・純名理沙、弁護士に犯人なのに無罪に導かせたさとう玉緒などである。みな芸達者で渡瀬恒彦も誠実そうだが、闇を持った人間として好演していたと思う。10年ほど前にも「証言」という清張作品で出演していたが、それも印象に残る作品だった。

 ストーリーは…
 女の策略におちていく弁護士とその愛人が苦肉の策で女を殺す。
完全犯罪と思いきや、最後、妻が真実を暴く。
 逆転につぐ逆転でテンポよく作られていた。
 そして女のしたたかさと人間存在や心理の妙が描かれていた。

 妻は夫を愛し、夫を信じるがゆえに夫の犯した罪を知っても一生だれにも、夫にも言うまいと決意する。夫の共犯者になることに、人生をともにする喜びを感じながら…しかし夫の共犯者は別にいた…夫は同じような感情を自分でなく、別の女性に感じていた。別の女性と人生をともにしていたのだ。妻は絶望するが冷静に警察に真実を語る。

 犯罪を犯した罪悪感が耐えられない孤独を呼び、共犯者である人とつながることでしか生きていけなくなるのがテーマのひとつだろう。
 が、このドラマをみて根源的に人間は(犯罪を起こしてなくても)孤独でひとりだが、人とつながりたい、人生を共有したいと欲する生き物だろうということまで実感させられた。

 原作は読んでないのだが、原作どおりにしろ、脚色してあるにしろ、ドラマとしてよかった。
 エンディングで、渡瀬恒彦の独白が続く中、一番最後の場面が、人生が変わる事件のきっかけとなるオープニングのさりげない場面につながったりとスパイスきいた構成だった。


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