旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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<真夜中のミラージュ>



    ≪真夜中のミラージュ≫

11月のアラン特集は振り返ると、結構苦手な”愛”を
テーマの横糸、縦糸にしたものを
取り上げて来てたみたいですね。

”個人生活”のクリージーは
恋人のありのままを受け入れなかった..
そこに悲劇が生じたと書きました。

”プレステージ”でのミレーユ.ダルク紛するエドヴイジュが
男の子を出産したときに,会いに行ったアランが
ドアの前でためらって会わずに帰った...シーンがありましたね。
あれからずーっと気になって考えていました。

エドヴイジュは会いにきた妹マリーに言います。
”普通の夫なら花を持って会いに来るわ。
  でも代わりを遣したわ。” と言って
笑ってマリーと抱き合ったのです。
赤ん坊は彼との思い出?と聞くマリーに”それ以上よ”と
応える。そして、”オークションは彼の夢よ”とエドヴイジュは
言った。

これがありのままを受け入れる愛ですよね。
本当にピエールを理解していた・

実生活のふたりが長く続いたのも、この受け入れる愛が
そうさせたのでしょう。
母親のように温かく包んだ愛。
いつも傍にいなくても、見守る事が出来る愛。
すばらしいですよね。

そして、ピエールも何故会わなかったか?
いつも急いでいる男は親子に取って,今必要なのは
マリーの穏やかな愛だと思ったのでしょうね。

エドヴイジュはミレーユそのものだったように
思います。

レストランで食事をするときに、
”シャンパンをついで”とエドヴイジュ。
”ソムリエを”と指を鳴らす。
”あなたがついで”と...
じゃーっと急ぎ入れるアラン。
”ゆっくりと..シャンパンは繊細よ!”と彼女は諭す。
こういう辺りもゆったりとした彼女がうまくリードする。
アランもこのときばかりは”そうだな”と素直に応える.

こういうシーンは大好きなんですよね。人間観察が出来て。
相手の存在が自分のプラスになるには
相手にも加えてあげなくては帰ってこないということ。
鏡のようなものでしょう。

さて、前置きが長くなりました。
今夜はなんとも不思議なシナリオなのですが、
わたしのとても好きな作品。<真夜中のミラージュ>を
取り上げてみます。

これも妻に裏切られ棄てられたと思った男が妻を憎み、
逃げ出すのですが、
心から追い払う事は出来ずに
不思議な夢の中で知り合う女性の中にずーっと妻を
追い求める自分がいて、それを認めようとせずに、
しかし,妻の化身とおぼしき女性がふたり登場し、
葛藤し、答えを見出すお話。

夢と現実が交差し、夢の中で心の旅は進められていく。

夢から覚めるとそれは妻への未練であったとラストのラストで
気付くアランさまのお話。

構成、シナリオがとてもユニークだし、
観終わって、なるほどそういうことだったのか...

そして、青い鳥のごとく、自分に正直に愛している妻を
許し,受け入れなさいというストーリーが見事です。

フランスセザール賞男優賞を授賞したアランの演技も
すばらしいです。

好きですねえ。こういう構成のもの。
特に愛のお話だから尚更見事と言う他は無い。


ストーリー

妻に浮気をされ、憎しみと失意の中でロベール(ドロン)は
一人旅に出ての帰りの列車。

ガラスのドア越しに一人の女性が見つめている。
話がしたいわと入ってくる。ドナシェンヌという名・

彼女はまるで、ロベールの身の上を知っているかのように
物語をしようと語り始める。

ロベールがアルコール、特にビールの中毒になっている事も
知っているし、
まるで自分の身の上話のような語りに
ロベールは身を乗り出す。
そしてドナシェンヌに誘われるまま、列車の中で愛を交わす。

ここだけの関係だから、
付いてこないで!と言う彼女の後を
列車から降りたロベールはのこのことついていくのだが
彼女には邪険にされる。

この地に安住を求めようとするが、
彼女はしつこいのは嫌いと冷たい。
結局,彼女の家にまで付いて行くロベール。
彼を追い出そうとドナシェンヌは、
彼女の友人達や、また汽車で拾った男も連れてくる。

そして、ロベールの友人も呼んで連れて帰ってくれという。
帰らないというロベールはおお暴れ。
ドナシェンヌの元恋人にコテンパンにやっつけられて、
崩れ落ちた棚の下に埋れてしまうロベール。

みんなが忘れた頃にガサガサっと埋もれた中から
這い出てくるところは思わず,笑ってしまった。

1979年の雑誌のインタビューで彼は
”僕が喜劇をやるのをフアンは喜ばないんだ!”と述べているが
そんなことはない。ちょこっとだけスパイスで入れると
いいと思うんだけど。

さて、騒ぎを聞いた隣近所の男女全員がやってくる。

ここからの場面がすばらしい。
この人たちの参加によって、
ロベールの心の内面、動き,悩みが
まるで戯曲のように運ばれ、
ロベールの心情を映像化していくのである。

つまりは彼女はロベールの妻の娼婦性の化身なのか??

観ていて、初めは戸惑うのですが、次第に
彼の心の旅を解き明かしていっているのだなということが、
伝わってきて、感情移入してみている私に気付きました。

この場面は夢と泥酔の中にまどろみ悩むロベールを
包み込む彼等の登場で荘厳ささえ醸し出す秀逸な場面です。

ドナシェンヌへの恋情が妻への未練だと
観ている我々をもまどろませすばらしい。

そこで繰り広げられるみんなの会話の中で、
ドナシェンヌは
このお隣さんたち全員と関係を持ったのだという事も分かる。

その中には彼女の恋している男もいた。
しかしその男もドナシェンヌを本気で愛している風でもない。
これは妻の浮気相手の化身である。

勧められるまま、
ある男の妻という女と関係を持ったロベールだが、
却ってドナシェンヌへの未練を強めただけだ。

夜の出来事は終わり朝が来て、
ふたり街でコーヒーを飲むが
ドナシェンヌが消えた。
彼女の家に戻ると、

そこにはもうドナシェンナはいなくて他人が住んでいた。

離婚したばかりの子連れの女性。
ここにおいてくれと言うが男はもううんざりと追い出される,

花屋の前で、
老女に声をかけられ、ビールでも?とこの人もまた
ロベールを知っているかのように、
あそこに座りなさいという。

そこにはあなたの為のビールがぎっしりと詰まった冷蔵庫が
あるわと、
   冷蔵庫はドカンと居座っていた。

そして,彼女は言う。
”ドナシェンヌのことは空想ですよ。

浮気な女で...あんたも地獄を見たのね、
  それでいいのよ。”と。

目を覚ますのよ、家にお帰りなさい。

ロベールは老女にどなたか身内はいないのですかと聞くと
  ”そうねえ、マリーテーレーズという幼友達が
    いたわね。”とつぶやいた。

   その女性を訪ねてご覧と言う。
  その人をロベールは訪ねた。

ドナシェンヌにそっくりの女性だったが、
この人は教師の妻で貞淑で上品な女性であった。

==妻への理想の姿の化身==です。

誘われるまま、彼女と結ばれ....

画面は変わって・・・・

パリの駅....

自動車修理工場の経営者であるロベールの
友人4人が
着いた列車にロベールを出迎え、探している。

列車の中にロベールを見つけたが、まだ眠っている。。。。
心配しながらロベールを起こす彼等。

というところで、
ロベールは列車の中で見ていた夢から覚めそうに。
  ああ覚めないでーーーとロベールはまどろむ。
    だって、今,教師の妻と....!!
   理想の女性に会えたんだ....
  どうか起こさないで...

  友人達は彼を案内する。
   いやだ,どこに行くんだ!。
  奥さんのところさ。
彼女は充分反省している。許してやれよ。
いやだ!会いたくない!
たいした相手じゃないんだ!

彼等はやっと説き伏せて...マンションの部屋へ...
.
そこにはあのドナシェンヌそっくりの妻が微笑んでいた。
しっかりと抱き合うふたりでした。

そうです。。。。すべては、列車の中で見た夢だったのです。

ドナシェンヌは妻の化身として娼婦や教師の妻となって
ロベールの未練の証としてロベールの夢に登場していた訳です。

ああそうだったの?見事でした。

ストーリーの運びといい、物語中盤の膨らみとといい、
アランの泥酔状態での妻への未練が
すべてドナシェンヌに向けられ、
彼女がそっぽを向いたのは妻の心が
離れてしまったと思いこんでいた心の葛藤だったし、
教師師の妻への憧憬は妻は本当はこんな女性だったという
思いが夢の中に現れたのですね。

ドナシェンヌは妻の幻影として、
ロベールに語りかけてくれたのですね。

夢の中で彼は”愛憎の旅”をして、答えを見出し、
正直に妻に向かい合えたという見事なストーリー。
大好きですね、こういうのって。

やられた!って感じでした。

  高校教師で見せた苦渋の愛にゆがむ彼から、
  もうひとつ進んで、作品としての芸術性を
   感じる作品に仕上げた。
  中盤の戯曲風なシーンはまるで中世の時代に
   タイムスリップしたような荘厳ささえ感じましたもの。
   女に嫌われる男を登場人物がみんなで
   世話を焼く..ぞろぞろと一緒に移動する..
   不恰好さも、惨めさも全部さらけ出した
  熟したアランの最高の演技の一作である..

監督/ベルナール・ブリエ
出演/アラン・ドロン、ナタリー・ベイエ
ジェラール・ダモン、ジャン・レノ
  アラン・サルデ/アラン・ドロン共同製作です・




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