旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

≪陽のあたる坂道≫≪傷だらけの山河≫




1.田坂具隆監督作品≪陽のあたる坂道≫
2.山本薩夫監督作品 ≪傷だらけの山河≫

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1.≪陽のあたる坂道≫

三時間に及ぶ文芸大作≪陽の当たる坂道≫
女性の目から見て、 もっとも裕チャンらしい、しかも
原作に劣らない そして
優れた日本のまだ良い時代を感じる青春映画である。

私達の青春時代は石坂文学は誰もが読んだと思われるくらい
流行った。
映画が作られるのが先か、読むのが先かというくらい、日活、東宝と
競って製作もされた。

青い山脈、山と川のある町、若い人、何処へ、乳母車、
あじさいの歌、あいつと私、光る海 などなど、、
複雑な家庭の若者という軸の物語が圧倒的に多い。
そういう家庭事情も戦後OPENになったということである。
若い先生と生徒、大学生の青春など戦後の若人がどのように
ものを考え、どういう学生生活を送ったか、どういう家庭のあり方で
あったか
戦後から、昭和の38,9年までの若人の変遷史である。

そして、彼等が道を外れそうになっても、軌道修正なされて
根底には民主主義の上に成り立つ開放度が溢れている。

言葉遣いのきれいな中流家庭もまだ残っているし、
かといって開放された性への興味について
家族、兄弟、友人など ずけずけと発言する。
しかも、度を外さず、理にかなった心のありのままを
発言する..。これが若者に受けた原因であると思う。
ーーーーし、初めてカラッとした性への姿勢を書いた作家である。
今、こういう映画を観ても、当たり前の会話だと思うかもしれないが
、
進んだ考えの若者、そしてついては行けないが
この小説に登場する親たち、大人達は、
負けずに、若者とどうどうと性について話す。

つまり、作者の願望をリアルに設定したということだ。

現状はそういう会話などまだする時代ではなかったが、
映画の、また小説の主人公が堂々と疑問を投げかけ、
会話をすることに自分たちを置き換え、
多くを学んだ。

さて、本題に入ろう。
裕ちゃんといえば、
太陽の季節で、デビューして、嵐を呼ぶ男、俺は待ってるぜ、
赤いハンカチ、紅の翼、銀座の恋の物語、と
男の物語がどうしてもクローズアップされてしまう。

が当時 もっとも裕ちゃんらしい映画は
この≪陽のあたる坂道≫の信次である。

田園調布に住む、金銭的に何不自由なく、伸び伸びとした
そして長い足、バンカラで、親しみ易く、ちょっと意地悪で、
都会的で...

というご本人のイメージと重なる 憧れの裕ちゃんが、
そのままそこにいるからだ。

このストーリーは優等生の兄、足が少し悪いが利口で
愛らしい妹久美子。
一見仲睦まじい両親の5人家族と、

妹の家庭教師になった倉本先生という聡明で美しい女性と、

父が外に作った ートランペット吹きの青年と
その母親(信次の生みの母でもある)との
いろんな関わりを背景に
外目にはぜんぜんわからないが、その誕生や、
幼児期に複雑な事情を持った為に
屈折した青年 信次の心理を描く。

そして、蔵本先生を兄弟二人が愛してしまったことにより、
信次の屈折した心の原因が明らかになり、
妹の不自由な足の原因や、幼児期からずーっと背負ってきた
重荷から開放されていく兄をも描いていく。

ジェームス.デイ‐ンの≪エデンの東≫とよく比較された。
優等生と思われた兄と,出来が悪くて父に愛されていないと
思っていた弟..
本当は放っておいても、大丈夫な弟と
構ってやらないとだめな兄である。
親の愛情が当たり前だった兄と親の本当の愛が欲しかった弟。

≪エデン..≫..  あれほど陰鬱ではないが。
つまりカインとアベルがベースとすれば成る程と頷けもしよう。

ゆったりとした時間の中で、一見無神経に見える信次は
ものすごくナイーヴだ。
まともに、彼女に近つ゛くことはないが、
遠くから、彼女をデッサンしたりする。

倉本先生は、最初、紳士的な兄に魅かれるが、
信次の屈折して、明るく振舞う態度の中に真の優しさと
深い洞察力にだんだん魅かれていく。

その流れがすごくいい!会話を一語一句メモしたいくらい
魅力あるシナリオだ。

そう 監督はあの東映で≪五番町夕霧楼≫や
≪湖(うみ)の琴≫を世に送った
細かい人物物描で定評のある田坂具隆さんである。

男女の木目細かい心理描写、題材は180度違うが、
石坂文学の魅力をあますところなく描いた力作である。

同じ石坂文学を映画化した他の作品と比べられたら
お分かりになると思います。

母性本能くすぐられちゃうわよねー三枝さん!
母のような、しかし、
べたべたせず信次を一生懸命理解しようとする倉本先生。

この時お二人が大恋愛中だと思うとほほえましい。

石坂文学の登場人物はとにかくよく喋る。
しかしよく喋ると言うことはその人物の力量がわかる。
やみくもにただおしゃべりと言うことではなく、
うん蓄があるってこと!

表面はカラッと明るく、華やかでも内面はナイーヴで神経質な
..。裕ちゃんの本当の魅力はそこにあると思う。

代表作と言って良いでしょう。
加山雄三の若大将と比べて同じ慶応ボーイの同じ豊かさを
持った青年なのにどこが違うか?
加山は体育系、裕ちゃんは母性本能をくすぐるし、
可愛いし、包容力もある。
あなたはどちらがお好きですか?

ーーあくまでも若き彼等を比べてですよ。
わたしは裕ちゃんで‐‐‐‐す。

製作  日活 1958年度作
監督  田坂具隆
原作  石坂洋次郎
出演  石原裕次郎/北原三枝/芦川いつ゛み
    川地民夫/轟 由紀子/千田是也(俳優座重鎮)
    山根寿子


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2.山本薩夫監督 ≪傷だらけの山河≫
一人の御妾さんをつくるということはよくある話だが、
5人も6人も作り、そのうえ又一人事業成金の生贄に
なろうとしている女がいる。

≪傷だらけの山河≫


製作  大映 
監督  山本薩夫
脚色  新藤兼人
原作  石川達三

出演  山村 聡/若尾文子/東野英治郎/丹阿弥谷津子/
    坪内美詠子/船越英二/伊藤孝雄/村瀬幸子


これはある百貨店だの、不動産だのを運営している
某企業をモデルとした高度経済期に非情な手段を用いて
のし上がった事業の鬼に、焦点を当て、
彼をめぐるスキャンダルや、彼に反発する御妾の息子の
抗戦劇と、企業戦争というものが激しくなりだした頃の物語。

ちょっと前までは、もっと複雑になった企業戦争であったが
それより前の企業戦争の原点 
と言う目で見ると非情に興味深い。

石川達三原作で当時話題になった。○武電鉄がモデル?
彼の作品では贈収賄を描いた”金環蝕”という作品も話題になり
非常に面白かった。

こういうリアルな話は役者の配置がとても興味を引くが、
各映画会社の役者というものが専属となっているから、ちょっと
難がある。

が当時の作品というのは、キー.パーソンに他社の役者を
用いたり 劇団に優れた役者が大勢いて
やはり納得の行く配役がなされている。

この映画では精力的に仕事を広げる鬼の事業主に山村 聡を配し、
ライバル会社の事業主に東野英治郎を据える、 適役である。

私営鉄道を敷いて儲ける為、まず
農地の売買をめぐってのあのてこの手の戦略。

今では私達民衆も情報量の発達で、一部始終を新聞、テレビで
簡単に掴めるようになったが、この頃はリアルタイムでそういう
問題を知ることは少なかった。

だからこの小説が話題を呼んだ。そういう時代であった。

この企業戦争の原点を知るものとして解かり易く
ドラマテイックに撮られたこの映画は楽しめる。

御妾2号の息子と、3号の息子が自分たちの思想論を語り合う。
頭脳は二人とも良さそうだ。
昔はこういう熱血漢が大勢いましたね。

何号目だかに狙われたのが、女性社員の若尾文子。
彼女には貧乏絵描きの若い恋人がいるがそろそろ貧乏に嫌気が。

この鬼は、若い男がパリに行きたがっているのを知り、
というより彼女を調べ上げて、パリ行きの交換条件を
餌とし、彼女を何番目だかの
御妾にしてしまう。が、彼女も貧乏が嫌で すんなりと
O.K.
そして、三番めの妾の息子は父の遺産が欲しい。

二人の息子は母の心を踏みにじったと思っているので
なにか仕返しを目論んでいるのだ。

本妻の息子は父の愛人と知らず、若尾さんを愛してしまい
親子で渡り合う。

人というものを軽んじ、甘く見ていればいつか足元に火がつくと
思うけどな。

2と3号の息子は認知を求めているが二人の動機は全然違うのだ。

母たちはおろおろするばかり。
この母達は今は見なくなった本当に忍耐と優しさの溢れる女性。
この男には勿体無い。

世の中を知らず、この男を通してしか世の中を
見ることが出来ない。

本妻の息子の自殺未遂。
父の生きかたを見ていて精神を病んでいく・

一家庭を守るのに身を削る殿方が多いのに
何軒もの家庭を抱え何とまー大変なことだこと!

一人は母と一緒に認知訴訟を起こし、
息子はライバル会社に入社と、 佳境に入る。
さてさてこの結末は?

ビル建設、宅地造成、大学建設と
日本人が精力的に働いた時代を重ねればこの不況時代、
懐かしくあの上向きの時代に帰りたいものだと感ぜずには
いられない。

事業はどんどん拡大し、家庭や妾宅の心配どころではなくなり、
女たちとも縁を切る、若尾はとっくに自分の生きかたの間違いに気が
つき
行方を晦ました。

金でなびく若い女が幾らでもいるからだ。

しかし本妻の息子はとうとう心身喪失で病院へ入り本妻も
家を出るだろう。
その彼を見舞う若尾の姿があった。

この映画は男の出世物語ではない。
この時代何人もいた事業の鬼達。

この人たちが豊かな日本を築いたのも事実なら、歪んだ日本にしたの
も
彼らかもしれない。

ついて行けない若者たちが多分このころから蓄積され、
その子達がまた精神を病み、
病む子等の多い日本を形成するようになったのも事実だ。

しかし大きな流れは誰も止めることは出来ない。
良き事も悪しきことも全部ひっくるめて社会であり、
順応できないものは取り残される。
がその順応できない人々を救う人たちもいるってこと。

この映画を観て、表面の日本はこういう人たちが作ったんだ。
でもプロジェクトXに見られるような人たちが作った
素晴らしい裏側の日本も忘れてはならない。

事実を側面からしっかりと見るには良い映画でしょう。



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