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旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家
山本薩夫監督の ≪荷車の歌≫
先を見越して物事を始めるなり、見極める..。というのは
現代の情報社会であるからこそ当たり前と言えるが、
情報もない、しかもそういった才覚が働かない時代の
人たちが将来の夢を持ったとした話しを聞いたときに
現代社会に生きる我々はそれを馬鹿だなあと笑えるだろうか..?
忍渋に堪えて、堪えて堪えぬいて行きついた先に
待っていたものは..。
今日はそんな話。 ≪荷車の歌≫を紹介します。
原作は山代 巴という人です.
昭和6年のこと、父親が差し出した全財産だという
拾円札を握って上京し、勉学の道を選び、紆余曲折を経て
郷里に帰って老婆から聞いた話をもとに書いたのがこの物語です。
明治、大正、昭和と長い時代を地に這いつくばるようにして
生きぬいた一人の女性セキを主人公にしたこの作品を
こういった作品にまさにうってつけの
山本薩夫が監督した。
全国の農村の婦人のカンパを制作費に当てたそうである。
農村婦女が解放に向かって立ちあがった息吹のような
逸話である.
ストーリー
明治27年の事.
広島のある山村に住むセキ(望月優子)は、
地主の家に女中奉公に上がった.
朝から晩までそれはもう一生懸命に働いた。
そんなセキの姿に郵便配達夫をしている茂市(三国連太郎)は
心を引かれ嫁にと言って来た。
将来は荷車引きをして、
それから荷車の問屋を開きたいという夢に
セキは地主や周囲の反対を押し切って茂市のもとへ嫁いだ.
一緒になった二人は毎日毎日、荷車を引いて
往復十里(40キロ)の道を町へ通った。
しかしここでも姑の嫁いびりは避けて通れないようだ.
茂市には米の弁当を持たせてもセキには粟の弁当、
そんな人であった。
泣かされ、泣かされてもじっと耐えた。
それが嫁の道だと親から教えられていたからだ。
やがて、セキは子を産んだ.トヨと名づけられた.
がこの子は里子に出された。
そして今度はトメを産んだ。
そしてその頃、姑が倒れ、セキは心からの看病に徹した。
さすがの姑もセキの手を取り死んでいった・
茂市とセキはようやく念願かなって荷車問屋を開業した。
いよいよこれからと二人は仕事に精を出したが、
まもなく、この山奥にも鉄道が敷かれ、人も荷もこの鉄道で
輸送をするという事態になってしまった。
もう、荷車の時代は終わったのである。
時は過ぎ、子供たちはりっぱに育った。
貰われていった長女トヨ、次女のトメは嫁ぎ、長男虎男は
鉄道の機関手、末っ子の三郎は電車の運転手と、
セキの長い長い苦労は実り、ようやく
楽しいといえる日々がやってきた。
がしかし、そんな時にこの物語にも例によって
茂市に隠し女がいる事が発覚した。
しかもその女を家に連れ込んでくるという非常識を
平然とやってのける茂市。
苦労の末の、長い忍従の末の果てに行きつくおんなの
あり様なのか..。セキは地団駄踏んで泣いた。
そして時勢もまた暗雲の時代がやってきた。
太平洋戦争勃発である.
虎男も、三郎も召集されていった。
堪える事のみに馴らされてきたセキは黙って二人を見送った。
そして終戦。
安堵の暇もなく三郎の戦死の報せ。
そのショックに茂市は田圃で倒れてしまった。
”セキよ.長い間、よーくこらえてくれたな”
それが茂市が息を引き取る時の言葉であった。
そしてそれは今まで、良人からもらったたった一度の
愛の言葉でもあった。
ここの地方では葬儀の時に笹もちを作って供養する風習がある.
極上の笹と、薪を取って来ようと孫たちを荷車に乗せ
力強い踏ん張りで荷車を引くセキはとても老婆の
踏ん張りではなかった。
ギイ..ギイ..ギイ.。
それはセキの一生の忍従を現す荷車の車輪の回る音..であった.
行く手の前をふと見るとそこに.....復員姿の長男虎男が
うれしそうに立っていた。
現代は介護や、福祉協会のバックアップなる映画が
盛んに作られている。
これも高齢化社会の現象の産物で見るものにとっては
大変参考になり、ありがたいものである。
時代時代を表す映画での歴史。
昭和30年代まではこういった忍従の映画が結構ある。
そして40年代に入って、痴呆の問題がクローズ.アップ
され出した。
しかしそのころは問題となっただけでなす術はまだまだ未知の
世界であった。
そして今はこんなことまで出来るの?
という何段階か進んだところまで来た。
それでも、人々は口々に言う。不平,不満を・
この荷車の時代や、あのにあんちゃんの炭坑閉山による
失業などの時代から見れば本当に贅沢だ。
人間の尊厳を重視。
人間が人間らしく生きるための福祉の応援が基本となっているが
このころの人たちがそんなことを聞いたらどう思うのであろうか
とふと思ってしまう映画です。
テレビドラマの おしん を観て涙する我々ですが.。
ただただ白いご飯がおなかいっぱい食べられて、
何事もなく過ぎる幸せだけでよいと思っていた人たちの世の中に
比べて
これでもか、これでもかと不満を投げかけるわれわれ..。
自分たちが楽をしたい だけだと思われてならない.
考えてみましょう・
製作 全国農村映画協会ーー新東宝 1959年度作
監督 山本薩夫
出演 望月優子/三国連太郎/左 幸子/岸 輝子
奈良岡朋子/浦辺粂子
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