離人症の器

離人症の器

季節風

<春>




吹き抜ける風の香りは春混じり なごりの雪がひらひらふわり




土の闇かきわけいずるふきのとう つついた指先香る緑に


春暁

ねむねむのまぶたこすって春うらら 落ちる風花ほっぺにふわり


木陰の昼寝

木の下で影を伸ばして夢心地 君のいない春花びらで隠す


風花

吹く風に春あまりある花吹雪 降りても散りても尽きぬ風花
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朝霧が隠した道の続く先 手繰るように瞳を凝らす
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公園

クローバー4つに分かれた葉を探す 君の小さな背中に幸あれ
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花散らす雨にまぎれて散歩道 変わる季節の名残を掴む
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希望

たんぽぽにからだとこころすり寄せて わたげになったら届くだろうか
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<夏>


梅雨明け

青空に雨のなごりを追いかけて 昇りつめるは白い鳥


雨上がり

夕立の洗い流した白い雲 太陽だけではまぶしすぎるよ


花火大会

暗闇を切り裂き上る夜の華 空に描くは誰の祈りか


雲路の果て

青い空見果てず望んだ醒めぬ夢 雲の向こうにエデンはあるの?


アルバム

一カ月紡いだ記憶閉じ込めた 夏の終わりの線香花火


雨のバス停

どしゃぶりの夜雨にあたって雨宿り しずくの檻の中で夢見る




過ぎ去った思い出をふり払うように 空を走った夏のかみなり




涼やかな風がさらった雨、しずく 梅雨のなごりは吹き抜けの空
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天気雨虹のたもとへ靴飛ばし 二人で祈ろう天気になーれ
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たちこめる

朝もやが隠した道の続く先 たぐるように鳴りゆく汽笛
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花火大会2

夜照らす夏の光を追いかけて 着いた砂浜波音静かに
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奇跡

雨上がり飛行機雲を追いかけて 虹のたもとに着けばミラクル
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永遠

蝉時雨君と出逢った瞬間に 声も遠のき永久を知る夏
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惜しむ夏

汽笛鳴り朝を知らせる波止場にて 帰る場のない鳥達が鳴く
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ほたる

蛍火が手のひらの中に息づいて 透けて灯るは僕の赤色
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変わり目

髪の毛をさらった風は冷たくて 8月最後は気の早い秋




<秋>


変わり目2

鈴虫が足早に告げる秋の声 暑い闇夜をぬぐってリリリ
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夕刻

焼け焦げて落ちてゆく日を見るうちに 空の綺麗な時間が終わる


予感

秋風がすすき野原に吹き込んで ざわめくように波立つ心


十五夜

月の穴覗き見すれば夢荒野 うさぎがもちつきこねた淡色


月見

十五夜のまんまるお月にいざなわれ 歩く夜道はしんしんしんと
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きのこ

雨風にあおられ飛んでキノコ傘 指差し笑う君との幸せ
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歩み寄る冬

冬近い風が奪った体温を あたためうるのは記憶のかけら
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<冬>


ひとひらのそら

もくもくと吐き出す雲は雪工場 手に取りとけるは誰の夢?


朝月

朝霜に身を震わせて見上げれば 青に漂う空のくらげ


向かう春

雪の檻寒さに震えるこの地でも 春も近いし模様替え
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*無断転載は禁止させていただきます。
 する人もいないとは思いますが……




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