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-小麦粉記-
~木簡編~
田舎の真っ暗な夜をぼんやり照らすしょぼい街灯の下に、大きく「縁」と藍字に白で染め抜かれた暖簾。
店の外見は暗くてよくわからないけれど、その大きな暖簾は入り口の戸をすっかり隠してしまうほど大きく、ちょうそ「縁」の辺とつくりの中心をぱっかり割っている切れ込みで50センチほどを残して別れている。風が無く、暖簾はすっきりと凪いでいた。
久しぶりに家へ帰るので急いでいたつもりたっだが、俺がこの町を出る前には、一度も見かけたことの無い怪しげな店に興味を引かれた。「縁」の暖簾をよけて、戸を開けた。
ストーブで温まった店の中のから暖かい風が折れん顔に当たる。寒さで突っ張った皮膚が緩む。店の中には、「スマイル0円!」を長年実施し続けた結果そうなったとしか思えないほどに顔中笑いじわが走っているじいさんが、テーブルで何かの作業をしていた。
「おや、いらっしゃいませ。ささ、中へどうぞどうぞ。今年の冬は、よく冷え込みますな。さぁ、戸を閉めておかけくださいよ。今、お茶を淹れますから…」と、テーブルから立ち上がったじいさんがふかふかの座布団を敷いて俺にすわるよう勧めた。
店の中は実演販売をしている民芸店のような造りという感じがする。たたみ二畳分くらいの玄関があり、靴を脱いで店へと上がらせてもらい、まだ俺が現状を把握していないにも関わらず急須から湯飲みへとお茶を注いでいた。買うとか買わないとかそういうこと以前にここは何をしている店なのかも全くわからない客の身分でお茶を淹れてもらうのは、ずいぶんと以居心地がよろしくない。だが、いまさら外に行きたくもないので遠慮なくお茶を飲んだ。寒さでこわばった体に、暖かいお茶が沁みわたる。おもわず「ほぅ」とため息。…ジジくさいな、今のは。
俺とじじぃが座っているテーブル以外のところには、所狭しとなにやら文字が書かれた木の札…というか木簡? が並べられている。
「ここは初めてのお客様ですな。この店「縁屋」では「縁」、つまり最近の言うところの「人間関係」を売っております」
一息ついた後、そのじぃさんはそんなことを言った。どこか信用できない商人の型にはまりすぎた笑顔。冗談にしては笑えないし、詐欺とか宗教なら笑っちまうほど安っぽい単語。
「人間関係…ですか?」と、この店に入って俺は初めて口を開く。
「さようで」
じいさんの笑いが、さらに深くなった。もとから細い目が、さらにきゅうっと細まってゆく。
天井からぶら下げられた木の札が揺られて、かりん、と音を立てる。
木のぼぅっとするような香りが、店にただただよった。
ストーブの上に乗せられたやかんが、しゅんしゅんと湯気を上げている。
「人間関係を売る商売も最近の不況で厳しくなってきて、今日で最後の商売でしてね。いやぁお客さんは運がいい。そうですな、いわゆる「閉店セール」というやつですか、最後のお客さんやし、サービスいたしますがな」
じいさんはまず初めにそういって、料金表を広げて俺に手渡した。
「お客さんはウチの店は初めてでしょう。あ、心配後無用。最後やし、懇切丁寧にお世話さしていただきますわ。料金のほうは気にせんといてください。今となってはそこに書いてある「縁」なんて、簡単にできてしまうものですから。学生さんですか…? そうですか。なんだったらもう無料でもいいくらいですわ。いまさらお客さんからお金もろうてどうのこうのする年でもないし。それでは、説明いたしましょう。まぁ、みればわかることですがね」
またニッコリ笑ったじいさんが指を指した料金表の最初には
~友人・五萬円から~
と書かれている。
「えっと、これは、友人関係を売ってくれる…ということなんですか? 五万円で」
「簡単に言うと、そういうことになりますな。料金は気にしないで結構ですよ…」
気にしないでくれといわれても、妙に気になる。友達が、五万円で買えるということだとすると、そいつは高いのか安いのか判断しがたいところだ。5万円は、俺にとってはかなりの大金であることは間違いないが、高校での友人関係を考えると微妙なところではある。俺は狭く深くつきあうタイプだから、人数こそいなくとも付き合っている連中とはそこそこ気心が知れている。そいつらが五万円の価値だとすると、まぁ、微妙だ。しかも「五萬円から」というのも気になる。
「はっは、お客さん、やっぱり料金のほうが気になりますか。たいていウチへ初めて来る方はみな料金について考えなさります。お客さん、今、自分のお友達のことをお考えになりましたな。そのその友達が果たして五万円の価値なのか、それは高いのか、安いのか。中には「わたしが求めていた友達とは、金で換算できるものではない!」と言って怒って帰ってしまうお客さんも中にはいらっしゃいました。そんなこと言われたら、こっちとしても商売上がったりですわ。わはは。
細かく言いますとウチの店で売っているのは『友人関係』というよりはその『きっかけ』を売ってるんです。なにもウチで、だれそれの友達関係はいくらいくらの価値がある、またはそれくらいの価値しかないーと言ってるわけじゃないんです。…あー、まぁ、中にはそういうことをしているものもありますけど、それは特殊なやつですな。とりあえず『きっかけ』を売っていると思っていただければ結構です」
きっかけ、ね。
「たとえばお客さんの友達、いらっしゃいますよね。たとえばその中のお一人とは、どんな形で出会って友達になられたか、差し支えなければおっしゃってくださいな」
そういわれて、高校に入学してから知り合ったやつの顔が浮かんだ。
たいした出会いではない。入学してからはじめての席替えで、たまたま俺が机の中に読み終わった本を入れっぱなしにしていたのを、そいつが「変な趣味してるんだな」と持ってきたのがきっかけだ。
そのことを話すとじいさんはしたり顔になって「そうですな。まさにそんな「きっかけ」ですわ。お客さんいい例え話してくれましたな、たいていの人は「なんとなく」とかそんな感じなんです。それでもいいんですが、たとえば「荷物が間違って届いてそれを届けたのがきっかけで」とかそういった感じのきっかけがご用意できますわ。劇的な出会いをお求めになられるほど、当然ながら料金は上がりますがね。だから五万円『から』なんで」とニコニコとした顔を崩さず、そこらじゅうに整列されている木の札のなかの一枚を俺に差し出した。
「友達」と書かれている。…実にわかりやすいね。
「もしお客さんが『友達』が欲しいときにはお金をお支払いいただき、ウチはこの木簡をお渡しします。そしてお客さんは、その『友達関係』になりたい人を見ながら、この木簡をぱきっと折っていただきます。それでおしまいですわ。そしたらそのうち、支払いいただいた値段に応じた出会いがあるはずです。もちろんできなかった場合、支払いいただいたお金は全額返還をお約束しますからご安心を。まぁ、お客さんには関係の無い話ですな、お金のことは。ははは」
じいさんの説明はひどくわかりやすい。
木の札を買って相手を見ながらそれを折れば友達になれるという、それだけだ。相手がどこにいるかを知っていれば、カップラーメンを食うよりも簡単だ。『友達』と書かれた木の札を折るだけなのだから。
ただ、じいさんが言っている内容が本当かどうかだ。いままで黙って聞いていたが、今の話を例えば学校で誰かにしたとしよう。翌日から俺は「頭がおかしい」と評判になってしまうこと請合いだ。まだしもどこかの宗教の勧誘のほうが説得力がある。たまたまふらりと入ってしまった店で「人間関係をうってますがなー。お金払ってこの木の札をぺきっと折っていただければ、出会いがありまんがなー」といわれても小学生だって信じないはずだ。詐欺か霊感商法だって、もっとうまく話をつくる。これが「お肌が良くなる」とかだったら騙される人はいても、「友達になるきっかけができる」といわれてもうさんくさい。この世はマンガじゃないんだ、金を取れるはずがない。おまけに、俺にいたっては「ただでいい」という。余計信じられない。
それなのに、じいさんの顔はいつまでもにこにこと商売人の笑顔で、実際に店のほとんどを埋め尽くす木の札が、そんな話に微妙な真実味を与えている。道端で「このダイアモンドの指輪かいませんか」とカタログを見せてくるのと、たくさんの現物が並んでいる宝石店で「このダイアモンドの指輪なんてどうでしょう」といわれるのでは、あたりまえに後者のほうが圧倒的に信用できる。そういう感じ。
「では次。これが一番需要が高い。人間、ずっと昔から男と女の付き合いに関心がありますな」
じいさんが示した~恋人・十五萬から~と書かれている。十万、だろう。
「この『恋人』という関係も、『友達』とそう変わりはないものです。お金を払っていただき、意中の方を眺めながら木の札を折る。それだけで『きっかけ』が訪れますわ。お客さん、恋人はいらっしゃる…?」
残念ながら18年間生きていて恋人がいた時間は一秒たりとも無い。好きな人はいたけれど、ろくに話もせずに卒業を迎えることになりそうだ。
「いない、そうですか。いや、すみません。恋人がおられる方には『愛人』を買っていただくようにしておりますので。もし『恋人』という関係が面倒だったら、『愛人』がいいと思いますね。ほら、お客さんくらいの年齢ならそっちのほうのことも、ねぇ。いやいや、気に入った女を好きにするのは、男の夢ですがな。ふふ」
思わず身を乗り出した。
「じいさん。もしかしてその『愛人』は、そういうことができたりするのかよ」
「そのための商品ですわ。お客さん、興味がおありで…?」
あたりまえだ。良く行く本屋の店員さんとも、いつも朝にすれ違う女子高の奴とも、木の札を折るだけでイロイロできてしまうのならそりゃパライソだ。
「ちなみに、いくらなんです?」
「十五万円。『恋人』と同じ値段でしたわ」
高い。が、このじいさんは俺には無料だと言ったはずだ。それが本当なら何枚でもっていきたい気分である。
「まま、お客さん落ち着いて。まだ大事なものが残ってます。本当は他にもいろいろあるんですけどね、店仕舞いした後も少しは手元に残したい。そうすると数が少ないのでお客さんには紹介できませんのや。『友達』『恋人』『愛人』の三つと、最後の『縁切り』で勘弁してくださいな。『縁切り』は名前の通り、付き合いを止めたい、関わりたくない人と縁を切る。それだけです」
じいさんは紐の付いたちりめんの袋にそれぞれの木の札三枚を入れて俺に差し出した。
黙って受け取ったけれど、なんだか惚けるほどに軽い。『友達』三人。『恋人』三人。『愛人』三人と、『縁切り』三人分。『きっかけ』とはいえ九人分の人間関係が入っているにしては、拍子抜けしてしまう。
店のじいさんは、空になった俺の湯のみに、もう一度お茶を注いだ。
「お客さんみたいな方はめずらしい人ですわ。たまたまウチに入った人はほとんどが疑って出て行ったり、怒ったり、または逆にのめりこみはります。それなのにお客さんは黙って聞いて、そこまで動じない。わたしの最後の商売にはぴったりの人ですわ。この商売も50年やっておりますとね、いろんな方と会います。『恋人』の札を買っていった方が婚約者を連れてお礼に来たりしたこともありますな。『潤滑』という札を買っていった町工場の社長さんが『おかげで商談がうまくいった』と大金もってこられたことも。しかしねぇ、人間関係なんてわたしから言わせてみれば簡単なものなんですよ」
そういいながら後ろの棚からかりんとうの袋を取り出し、「どうです?」と勧めてくる。
「お客さんが都合悪ければべつにいいんですがね、その札の御代といってはなんですけど、すこしわたしの話に付き合ってくれんでしょうか」
本当はいそいで家に帰るつもりだったけれど、ここまできたらいまさら家に向かったところで変わりは無い。それに、店主のサービスだからと言って合計したら百万くらいはする商品を(それが本物かペテンかは別にして)もらっておきながらその頼みを無下にするわけにもいかない。
「構わないっす。どうぞ、話してください」
そういうとじいさんはさらに顔をくしゃくしゃにして、かりんとうを袋ごと俺によこした。
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