鍋・フライパンあれこれ美味
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-小麦粉記-
第七楽章下 new!!
さっきの硬直から復活した斉藤が腰に手を当てて豪邸を見上げている。
「な!お前結婚って」
「あれ、あんたは私と結婚したくないの?」
「い、いや。結婚はしたいが、あー、結婚・・・・」歴土が顔を紅くする。行った本人、斉藤の顔もさりげなく紅い。見てるこっちが恥ずかしい・・・・。
「はいはいはいはい!そういうのは二人っきりでやりなさい。さっさと入るわよ。暑いんだから。」
歴土が音声と網膜の認証鍵を開けて中へ通してもらう。相変わらず豪華な家だ。しかも隅々掃除が行き届いている。
いろんなところに大きいものから小さいものまでいろんな花瓶が置いてあり、どの花瓶にもそれにあった綺麗な花が生けられていた。さながら花の展示会といってもいいくらいだ。
「キッチンはこっちで食堂もその先。すき焼きだからコンロ持ってくるわ。包丁とか勝手に使っていいから先に準備しておいて。」
歴土がどこかの部屋に消えてキッチンに残った俺たちは早速すき焼きの準備を始めた・・・・準備といってもたいした準備はないのだけど。
どんなコンロを持ってくるかと密かに期待していたのだが、歴土の持ってきたコンロはごく普通のガスコンロで、しかもガスが残り少ないという。
「いやぁ、買い置きがあると思って、思い続けて、気がついたらないんだよなこういうのって。ちょうどいい。月見、赤井川、ガス買ってくるついでに酒買ってこようぜ。やっぱり二人以上集まって飯、ときたらアルコールだろ?しかもこの気温ですき焼きだ。ビールがうまいぜ!」
ということで近くのスーパーに買出しに行くことになった。
「あれ、なんでこんな近くにスーパーあるのにわざわざあのスーパーに来てたんだよ。」
「あぁ、ちょうどあいつとデートした後だったからな。肉の安売りもしてたし。それよりも、だ。赤井川一。俺はお前に質問がある。」
突然指名された赤井川は一瞬びくっ、っとしたが、「まぁそうくるとは思ってたけね・・・。」とぼやいた。
「お前、あの科川とヤったって言うのはほんとうか。」・・・そんなに殺気立って聞いても仕方あるまいに。
困ったようにほっぺをかきながら赤井川がことの顛末を話した。
「えーとね。ヤった、というか僕にしてみればヤられた、って感じなんだけど。この間の夜に彼女からメールが着てね、「今からハジメの家に行くから」って。そのときは母さんも父さんも旅行で温泉に行ってたし、妹も友達の家にとまりに行ってたし、どうせ断りきれないと思って「いいよ」って返したんだ。」
そりゃ凄い偶然だな。両親も兄妹もいないとは。
「それで家に上げたんだけど、部屋に入った瞬間抱き倒されて、まぁいろいろして、「していい?」って聞かれたんだよ。」
「・・・・・・。」俺たちは黙って聞いた。そういう話題ってのはみんな二やついておちょくりながら聞くものだろうけど、赤井川の話す表情は真剣で、さすがの歴土も口を挟まなかった。
「そんとき、なんだか焦ってるようにかんじてさ。
「何かあったの?」
僕の上に乗ったまま体を撫でて「していい?」と聞いていた彼女の返答をした。
「ハジメには関係ない。」
「それはないよ。いまこうして、そういう行為をしようとしている原因があるでしょ?だって、科川さん、少し焦ってるって言うか、いつもの余裕がないから。」
いつもならもっとぐいぐいリードする彼女が、なぜか今日は少しもたついている感がある。それに、密着している体が少し震えているのだ。何かあったに違いない。
「・・・・ハジメはあたしとそうなりたくないの?」
「そういうわけじゃなくて。僕だってそういうことはしたいよ。ただ科川さんの様子が変だったから。もし今こうしてるのが何かよくない原因で、このままそうなってしまったら勢いでやってしまった科川さんが後悔するでしょ?」
彼女が動きを止める。
「・・・・はぁ、ハジメにはお見通しってわけ?あーぁ、まだまだ弱いわ。本当は問答無用でヤっちゃう予定だったんだけど、そこまでばれてたらしょうがなか。」
体を起こして僕の正面に座って、乱れた服を直して話し始めた。僕も正座して聞く姿勢に入る。
「この間あたしがものすごいおばあちゃんっこだって言ったでしょ?」
「うん。」
この間きいた。彼女の両親は仕事が大変らしく、小さいころからおばあさんに育てられた筋金入りのおばあちゃんこみたいだ。
「いろんなこと教えてもらってさ、美味しいご飯も作ってくれたし、怒ったときはすごく怖いけど、言ってることがすごく筋が通っててね。一番尊敬してる人は誰か、って聞かれたら私は「おばあちゃん」って答えるかな。」
僕は祖母祖父、父方も母方も早いうちに亡くなってしまったから、正直あまりおばあちゃんやおじいちゃんの記憶がない。でも話を聞いて、その表情を見てるだけで科川さんのおばあちゃんはいい人だってことはわかったし、そんな彼女が少し羨ましかった。
「ずっと一緒に暮らしてて、どんなこともやってのけてさ、かっこよかったんだよね。だから私のおばあちゃんは、無敵だって思ってた。・・・笑わないでね?」
「うん。笑わないよ。ちゃんと、聞いてる。」
「ありがと。・・・でさ、80過ぎてもぜんぜん元気で風邪も引いたことなかったのに、この間・・・倒れたの。」
僕は何も答えることが、できない。
「病院に駆けつけたらベッドの上で私に向かって笑ってたんだけど、それ以来様子がおかしくなっちゃってね。突然「鍋が吹き零れるじゃないか。止めないと」って言ってベッドから降りようとしたりそんな風になっちゃったの。」
途中から彼女の目には涙が浮かんできて、今にも零れ落ちそうだった。
「たぶんね、脳の中の血管が切れちゃって、それでおかしくなっちゃったの。今まで無敵のおばあちゃんが、前の日まで元気で私のペン入れのほつれを直してくれてたのに、急にそんな感じになっちゃって・・・・・!」
ついに目から涙が溢れ出した。
「ねぇどうしたらいいのハジメ!?いま私はおばあちゃんに対して何をしてあげればいいのかわからないの!前とおんなじように接する自信がなくなっちゃって、病院から逃げてきちゃったんだよ?・・・どうしたらいいのよ」
そのまま泣き崩れてしまった彼女の顔を寄せて頭を撫でてあげる。何も考えない、自然な行動だった。
「えっとね。今まで科川さんはおばあちゃんにずっとお世話になってきたんだよね。でもさ、人っていうのは、いつかそんな風に年をとってしまうものだと思う。僕だって、科川さんだって、歴土君だって月見君だって、いつかはそんな風に誰かに「介護」されなきゃ生きていけなくなっちゃう。そのときに自分のことを誰も世話してくれなかったら、悲しいんじゃないかな。たとえば自分が愛情を注いで育てた孫が、弱ってしまった自分に会いに来てくれなかったら、僕は寂しい。いま科川さんは恩返しするときだよ。十何年も育ててくれたんだから、今度は逆に感謝してお世話してあげればいいと思う。たとえ少しおかしくなってしまっても、感情を忘れたわけじゃないんだから、ちゃんと接してあげればうれしいさ。・・・・ごめん。知ったような口利いて。当たり前の事しか言えなくて。」
僕が長々と話しているうちに泣き止んだ科川さんが僕を見上げて、涙を拭いた。
「・・あは。そうだよね。何してんだろ私。当たり前のことだよね。ありがとハジメ。」
チュッ。
「だけどさ、私も今、結構いっぱいいっぱいなのよ。だから後一時間だけ、私に時間をくれない?そうしたら多分、吹っ切れる。」
「うん。わかったよ。」
「っていう感じで、その夜、ね。」
歴土は黙っている。俺も黙っている。もうスーパーはすぐそこだった。
沈黙を破ったのは歴土で、「赤井川は、なんだかんだいって科川に好かれるくらい、ちゃんとした奴なんだよなぁ。やっぱり、何つーか、今の話聞いたらかなわねぇよ。俺だったら勢いに任せてヤっちまうぜ?・・・きっと漢っていうのは喧嘩とか体力じゃなくて、こういうところで出てくるわけだ。」
「そうだな。・・・今日はなんだかわかんないけど、派手にいきたい気分になってきたよ。」
「あ、お前もそうか。じゃあ・・・赤井川、お前は足りない食材とガスを探しにいってくれ。俺たちは酒を買ってくる。なんかお前の話聞いたらうれしくなっちまってよ。あぁ、俺はこんな奴と友達なんだなってさ。」
「歴土君・・・そんな大袈裟な。」
「いや、俺もそう思う。・・・・それじゃ、十分くらいでここに来よう。」
ということで、俺と歴土は酒のコーナーに。赤井川は食品売り場に向かっていった。
「俺たちみたいな高校生はビールとチューハイで十分だ。かっこつけてウォッカを飲む必要はない。そのビン戻しておけよ。死ぬぞ。」
歴土が俺に隠れてウォッカのビンを入れるのを見逃さず、速攻で却下。・・・お前が酔ったときに処理すんのは俺の役目になるんだよ。
「いや、なんでこんなスーパーにこんな本格のロシアウォッカが普通に置いてあるのか不思議でな。つい入れた。」
「つい、で入れんな。くそ、こっちは二週間に一回温泉に行った帰りくらいにしか飲めないってのに。」
ウォッカのビンを戻してから次々と缶やビンをかごに放り込んでいく。あらかた全種類くらいは味わえるだろう。
「なぁ、この罰ゲームビールって、なんだ?」
今までの財政状況から見て、こんなに買い物籠にものを放り込んだことなんてなかったし、お金は歴土持ち、ということに興奮していたのかもしれない。
普段だったら即却下の歴土のこの質問に、俺はこう答えてしまっていた。
「あぁ?とりあえず飲んだらわかんだろ。いれとこうぜ。」
会計を済ませ歴土家に到着。ガスコンロにガスをセットして点火。そんなに時間もたたずにすき焼き鍋の中はぐつぐつと美味しそうに煮えてきた。
卵を割って準備完了。
「よーし、それじゃあいただきまーす!!」
「「いただきます」」
さて、そこからは争奪戦だった。箸と箸で食べ物をつかんではいけない、という日本の習慣がなければさしずめ大惨事だ。
育ち盛りの男が二人(赤井川はせっせと鍋に食材を投入していた)に、食い意地の割と汚い女二人が同じ鍋を囲んだら、もうそれは言わずもがな。
まず俺が目をつけていた肉に箸を伸ばせば神速で歴土の箸が肉をさらっいく。次のに箸を伸ばすと掴む直前で斉藤が取っていった。三枚目に目を向けた瞬間科川が自分の取りざらに持っていく。ようやく見つけた小さめの肉は、すでに侘須我の箸が捕らえていた。
・ ・・。
どうしようもない敗北感に際悩まされて一気にビールをあおる。
・・・・いいよ侘須我、俺が悪いんだ。「あ、ごめん取っちゃった・・・・。」みたいな目で俺を見ないでくれ。大丈夫、俺にはねぎがある。
・・・・・・・・。
「教えてくれなぜまだ煮えてないのにねぎを持っていくんだ歴土。それはまだ確実にまだだろうよ。まだしゃきしゃきしてるだろうよそのねぎは。まだ俺は何も食ってないんだ。まだまだまだまだ・・・・・。」
しかし鍋の世界とは非情なもの。そんな言ってもどうしようもない言葉は胸に封印して、今度は赤井川が入れてくれたえのき、を狙う。
まだ煮えてないだろう。チューハイのんで待とうか。
・・・・・・・・・・・・・・・。
「だからまだそのえのきは煮えてないだろう?まだ上のほうはまだ真っ白じゃないか。カップルそろって食い意地が汚いこと。」
しかし鍋の世界とは非情なもの。そんな言ってもどうしようもない言葉は胸に封印して、今度は肉の第二弾を待つ。
今度ばかりは、取らせない。景気付けに新しいチューハイをあける。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「おいおいおいおいあっはっは、その肉まだ三分の一赤いじゃないか。俺は君の腹の調子を心配するとしようか科川」
しかし鍋の世界とは非情なもの。そんな言ってもどうしようもない言葉は胸に封印して、今度は豆腐を・・・・よし。豆腐ならまだ誰も手をつけてない。安心してビールを飲み干す。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「おっと、箸じゃ掴みにくいなぁって、そこで豆腐すくいなんて便利なものを使って俺が拾い上げた一個以外全部取りざらに豆腐を投入してる侘須我さん・・・?だから取ってしまってから「あげようか」なんて目で俺をみるなぁぁぁぁぁあああ!」
しかし鍋の世界とは非情なもの。そんな言ってもどうしようもない言葉は胸に封印して、今度は・・・・・・・・・。
「おいこらてめぇら!!食い意地汚すぎだぞ!なんで俺が取ろうとしたものをことごとく奪っていくんだよ!っていうかぜんぜん生だったろお前ら!腹壊すぞ!むしろ壊せ!」
しかし鍋の世界とは非情なもの。そんな言ってもどうしようもない言葉は胸に封印して・・・・・もう、立ち直れない・・・・・。すきっ腹にビールを流し込んだから酔いが早い。鍋の中身も赤井川が具を入れて三十秒以内に消えるのはどうしてでしょう。絶対そんな時間じゃ煮えないでしょうに。
「・・・・まだ、豆腐のかけらしか食べてない・・・・・・・。」
と、そんな風にいじけた俺のとりざらをとって並み居る強豪をすらりとかわし、てきぱきと肉やねぎやえのきや豆腐を入れてくれた人物・・・・。
「・・・・貴方って意外と食い意地張らないのね。てっきり歴土君みたいにほかの人の箸を押しのけて食べるタイプだと思ってたわ。はい。」
「侘須我ぁ・・・・。うぅぅありがとうお前ホントいい人だよ。一生ついていきます。だから見捨てないでぇー。」
あれ、自分でも何言ってるかわからなくなってきた。なぜか嬉しくて悲しくて涙が出てしまう。
「ちょっと、貴方酔ってるの?いちにいさんよん・・・お腹すいてるのに四本も飲むからよ!しかもチューハイのほうは大きい缶じゃない。って、ほら泣かないで。何?なんでワンピースじゃないかって?え、似合ってたのに?いやあの格好で買い物にはいけないかなぁって。そ、そーお?そんなに似合ってた?ふふん、ありがと。ってわあぁぁあだから何してるの冷めちゃうわよせっかく取ってあげたのに。」
なにやら自分の醜態を外から眺めてるみたいだ。俺って、泣き上戸だったのね・・・・・・。
「あれ、もしかして月見、酔ってる?酔ってんか?こいつが?しかも泣き上戸かよ!はっはっはこいつは愉快だ!月見鈎夜ともあろう奴が泣き上戸で自分の彼女に「見捨てないでぇ」ってよはっはっは!!おら酔い覚ませ。」
ばしゃ!
「っぶは!冷てぇ何しやがる!俺の肉とってねぎも生のまま奪いやがってその上水かけるとは許せねぇ。おいこらぁ表出ろや、ごっ・・・・・。」
意識が正確に戻ったときには侘須我の関節技で座布団とディープキスしていた。
「あー、くそ。悪酔いした・・・。すまん・・・。」
「まったくだぜ。いやぁでも月見が酔ったところ初めて見たな。あれはあまりにも情けない。」
「・・・月見君もあんまりっていうか話したことなかったけど、面白い人だね。まぁ伊勢が一番仲のいい人だから、悪い人じゃあないとは思ってたけど。よくよくみたら優しいし気が利くし、伊勢の暴走を止めれるのは月見君だけなんだよねー。」
そんなこんなですき焼きもほとんど食べつくしたところで、科川が「そういえばさっきの燎の話、続き聞いてなかったわよね。いまだとちょうどいいし話してみてよ。」と侘須我に提案した。
さっきの話、でびくっと反応する斉藤にかまうことなく「そうね、じゃあ話しましょうか。」と箸をおいて話し始めた。
「えーっと、黒いどろどろした何かが這いずり回ってて、入っていった部屋の住人がみんな怪我したり病気になったりするとこまでいったのよね。そうそう、入って入っちゃう部屋に法則性があるってとこだけど、そこはちょっと置いといて、知り合いにそのことを聞いてみたのよ。そうしたらその黒いどろどろしたやつって、一応妖怪みたいなやつで、「意水溜」もしくは「忌溜」(いみだま)って名前があるんですって。もともときれいな水に人間の負の感情が溜まって、その悪意で人の気を奪っていくらしいわ。日中は出てこないみたいだけど。気を奪われた人は病気になったり怪我したりいろんな不幸がくるって話。」
みんなそろって侘須我の話を聞いていた。
「月見君ならわかると思うんだけど、あそこの駐車場の水道って美味しいし綺麗でしょ?ここら辺ではたぶん一番綺麗な水。確か直接地下水引っ張ってきてるから。本当なら普通の水とか川とか海にそういう負の感情ってのは流されていくんだけど、あそこの水が綺麗だからみんな集まってきて「意水溜」になったみたい。それでね、あの黒い水が入ってくる部屋の順序がこうなのよ。まぁ順序って言っても全部で十しか部屋がないからたいしたものじゃないんだけど」
と、どこからともなくメモ帳とペンを出してアパートの絵を描いていく。
「最初はこの部屋。一階の右端の部屋。」
そういって肺炎を起こした馬場さんの部屋に1と書き込む。
「次が二つ左にずれてこの部屋。」
胃潰瘍で血を吐いた三上さんの部屋に2を書き込む。
「鈎夜の話で山陰さんもそうだってわかったから法則って言うか次どこ来るのかわかったのよ。山陰さんは1と2の部屋の間の部屋・・・じゃなくてその間の上。3」
「でもって寺内の爺さんが俺の部屋の下で一階の左端・・4と。」
そしてよく見ると出来損ないの市松模様になっている。
「市松模様にするならこのお部屋だよね。」と斉藤が書き込んだ部屋は二階の俺の部屋の隣・・・即ち侘須我の部屋だ。
「・・・・・・お前の部屋だろココ。」
「そう。しかも来るのが一週間おきで、寺内のおじいちゃんが水虫の薬を目にさした日から数えて、今日なのよ。」
「・・・・・・え?」
「だからちょっと鈎夜の部屋に泊めてもらいたいんだけど。というか泊めなさい。」
「・・・・・・・・・・・・え!?」
にわかに沸き立つギャラリー。顔を紅くしてこっちを見つめる侘須我。うろたえる、俺。
「む、無理にとはいわないけれど、せっかく明日出かけるのに何かあったら嫌でしょ?」・・・そんな必死にならなくても。
「なぁ月見。ここは男としてとる選択肢は、ひとつしかないよな?な?いいねぇ羨ましいねぇ。そうやってみんな俺を置いて大人になっていくんだなぁ。俺もヤりてぇよ。」
「・・・歴土、首絞めながら話しかけるのはやめてくれ、そのままいったら折れるって。まじで。」
「で、どうするのよ月見君。泊めるんでしょ、当然。ちゃんとコンドーム持ってる?あ、燎はねちょっとMだから言葉責めとか効くタイプよ。」
おいおい、もうそこまで話が飛躍してんのかよ。
最終的に周りの連中を黙らせて、「まぁ、そういうことならぜんぜん構わないから、とまってもいい。」ということに落ちついた。
すき焼きの後片付けを済ませて食器を洗い終わったころにはもう八時をまわって、すっかり外も暗くなっている。
「それじゃあこの辺で私たちは帰るわ!歴土君ありがとねー。・・・燎、がんばってねフフフ」
科川・・・・前から思ってたけど結構親父くさいんだな、お前。
「それじゃあ俺たちも帰ろうか。歴土、サンキュウな。また食おうぜ。」
「おう。休み明けに首尾を聞くからしっかりヤってこい。」
もうお前らにはそれしか頭にないのか。
歴土の家から俺たちのアパートまではそんなに遠くない。が、やはり歩くと少し時間がかかる感じのする微妙な距離だ。
八月の頭だけあって日が暮れてもむんむんとした暑さが残っていて、風が生ぬるい。
「久しぶりに大勢でご飯を食べたわ。」
ポツリポツリ、と侘須我が話し始めた。
「いっつも一人でカレーとシチューばっかり食べる生活は、なかなか辛いわよ?たまにおばさんから差し入れがあったけど。朝も一人、夜も一人、学校でも一人でコンビニのパンを食べて過ごすのって、ぜんぜん味気がないしつまらなかった。人が苦手なのに、わざわざ自分から「話しかけるな」なんて言っておきながら実際問題誰かと話したくて仕方がないのよね。だけどどうやって他人と話せばいいか、わかってるのかわかってないのか自信がなくて、結局一言も発さずに学校を出て、アパートに帰る。その繰り返しでいい加減嫌気がさしてたころに、図書館に入ったら貴方がいたのよ。おじいさんに「地下の書庫の鍵を閉めてくれって頼んだ男の子が帰ってこないから呼びに行ってくれ。」って言われてアノ場所にいったら、貴方が真っ暗闇の中で切羽詰った顔して。」
「・・・・・。」
「あの日貴方と初めてまともに話した、結構嬉しかったのよ。話せる人がいて。」
虫の鳴き声が、少しうるさい
「って、何はなしてるのかしら私。こんなことどうでもいいわ。・・・そういえば。貴方さっき斉藤さんの胸、凝視してたでしょう。」
「・・・・・!!」
あのとき視線を感じたと思ったら、ばれてたのか!前身の毛穴がぶわぁ、と開いて嫌な汗が出始める。
「別に見るなって言ってるわけじゃないわ。日ごろから私の胸だって結構見てるし、あつまさえ触って「柔らかい」なんていわれたし。」
「いや、あれは不可抗力って奴だろ。」
「不可抗力なら「柔らかい」発言は余計でしょうに。・・・・で、率直に言うけど貴方って斉藤さんくらいの胸が好みなの?」
・・・・ホントに率直だな。なんていえばいいんだよ。
「そういうわけじゃない。たまたま、だ。斉藤の胸か侘須我の胸か、どっちがいいかと聞かれたら間違いなく侘須我の胸だ。断言する。もし侘須我が斉藤サイズだとしても、俺はお前の胸が、好きだ」うわ、俺かなり酔ってる。
「!・・・・そんなことで断言しなくてよろしい。・・・一応私だって女の子なんだけど。女の子の前で言う言葉とは思えないわ。」
暗くてわからないが、絶対侘須我の顔は紅くなってるはずだ。ちょっと追い討ちをかけてみよう。
「今日の夜の話だけどさ。」
ビクっと侘須我が一瞬立ち止まる。
「ちょ、ちょっと鈎夜、私はまだ、というか準備とか」と思ったとおりうろたえる侘須我。こんなことを平気で聞けるってことは、かなり酔ってるな、俺。
なにやら言い訳を重ねる侘須我を無視して聞く
「布団は取り替えてお前はベッドで寝てくれ。で、俺はどこでもいいんだけど、侘須我は俺にどこで寝てほしい?三択。1、外 2、居間 3、ベッド」
「・・・・・2に決まってるじゃない。」
咲弥とかにいろいろ言われた後で「今日の話だけどさ」なんていわれたら、あせるのは当たり前でしょう。
今日は酔っているのか、いつもの彼なら言わないことを軽く言ってくるから調子が崩れてしまうし、別にそういうことをするわけでもないのに私の心臓は無駄に血液を送り出している。
割と綺麗に片付けられた彼の部屋でジャージとTシャツに着替えて座ってる今現在十時ジャスト。部屋の電気はもう消してある。
お風呂上りの顔の上気とはまた違う意味で顔が赤いのが自分でもわかった。なぜなら、
「なんで居間にベッドが合って、貴方と一緒の部屋で寝なきゃならないの・・・・?」
「・・・・・それは俺がもともと居間のベッドで寝ていて、もうひとつの部屋は人が寝れるような状況の部屋じゃない、ということだと思う。」
「自分の部屋を他人の部屋のように評価しないでくれる?いや、別にいいけど、ホントにいいのかな、これ。」
自慢じゃないけれど、いままで男の人と同じ部屋で寝た記憶は、まったく無い。
正直、どきどきしているし、寝られたものじゃない。
「ねぇ、貴方寝られる?」
「この状況で寝られる奴は、いないとおもうよ」
「じゃ、じゃあさ、オセロとか、ある?」
「・・・・いちおう、あるけど」
「オセロ、しましょうよ」
「・・・・・しましょうか」
こうして夜が白み始めるまで、鈎夜と二人で、オセロに興じてみた。なんていうか、深夜に男女がおんなじへやにいて、やってることがオセロだと、別の意味で変な気分になっていた。
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