なかちゃん@那覇の日々のくすりばこ

いっしょに学ぼう!SARSについて

いっしょに学ぼう!SARSについて

2003年の2月以降、中国・香港をはじめアジア各地はもとより、カナダでも患者が発見され、全世界的な社会問題となっているSARS(重症急性呼吸器症候群)。その流行が台湾に飛び火し、「国境の島」である沖縄では警戒が強まっていた折も折、SARSに感染した台湾人医師が関西地区を旅行していたことから、日本国内でも大騒ぎになりました。実は、このHPを見てくれている友人からも、「SARSのことを取り上げて」という要望がありました。ところが新興の感染症なだけに、僕も素人に近い状態。そこで悩んだ末、「いっしょに学ぼう」と銘打ってページをUPすることにしました。見てくれる人からも、いろんな質問をお伺いしたいので、自分で学びながらこの質問に答えていければ、と思っています。質問とかありましたら、掲示板にどんどん書き込んでくださいね。また、メールもお待ちしてます。HPのメール機能でよろしく!

①まずはお約束。SARSってどんな病気なの?
 SARSとはSevere Acute Respiratory Syndromeの略で、日本では、「重症急性呼吸器症候群」と呼ばれます。中国・広東省に端を発し、香港・北京など中国の他の地域にも拡大し、また、台湾・カナダ・シンガポール・ベトナムなど世界中のいくつかの国でも大きな問題となっている、新しく発見された感染症です。

②主な症状を教えて!
 主症状は38℃以上の発熱・咳・息切れ・呼吸困難などで、胸部レントゲン写真で肺炎または呼吸窮迫症候群の所見(スリガラスのような影)が見られます。また、頭痛・悪寒戦慄・食欲不振・全身倦怠感・下痢・意識混濁などの症状が見られることがあります。

③SARSの病原体について、詳しく教えて!
 SARSの病原体は、「コロナウィルス」と呼ばれるウィルスです。コロナウィルスとは、電子顕微鏡で見た時に、ウィルス表面から花弁状の突起が出ていて、太陽のコロナ(立ち上る炎のことですね)のように見えるウィルスのことです。今までも、ヒトに風邪様症状を起こすコロナウィルスの存在は知られていましたが、症状は軽~中程度であり、SARSのように重症な病気を起こすものは知られていませんでした。また、いくつかの動物においては、コロナウィルスの存在が知られていました。
 ところが、SARSウィルスは、従来のコロナウィルスとは遺伝子的にかなり異なるタイプのものです。いわば「新型」のウィルスです。どのようにしてこの世に現れたのかは不明ですが、コロナウィルスの中で、本来ヒト以外の動物にだけ感染するはずのものが、突然変異を起こしてヒトに感染することはあり得ます。また、ヒト感染性のコロナウィルスが突然変異をおこして、今までより「病原性が強くなる」=「重症な病気を引き起こす」可能性も否定できません。現在、WHO(世界保健機関)を中心に、急ピッチでSARSウィルスの解析を進めています。

④SARSの流行地域は?
 これは刻々と変化していきます。最新の情報はWHOのホームページや、国立感染症センターのホームページ、さらには厚生労働省や外務省のホームページでも随時更新しています。常に最新の情報を知っておくことが肝要ですね。

⑤いつくらいから発生したの?
 2003年2月に、上海・香港を訪れてベトナムのハノイに行った1人の人が呼吸器症状を示し、そこで入院しましたが、その後病院スタッフが同様な症状で発症し、その数は3月12日の時点で40人以上にのぼりました。また香港の病院でも、恐らく中国本土からの旅行者をきっかけにして、病院スタッフが同様な症状を示し、3月16日時点でここでも40人以上の患者数を記録しました。そこで、WHOは全世界に向けて警告を出すこととなりました。
 一方、中国・広東省では、2002年11月16日から2003年2月下旬までに、同様な症例が300人以上発生しており、肺炎クラミジアによる可能性があると発表されていました。そこで、これがSARSの始まりだったのでは?との疑いが持たれるようになりました。そこで、WHO調査チームが広東省で調査を行い、「SARSは2002年11月から中国・広東省で始まった」と発表しました。

⑥SARSはどのようにして感染するの?
 SARSウィルスは、SARSにかかっている人から周囲の人へと感染すると考えられ、動物を介して感染することを示す有力な証拠はありません。ただ、最近の報道発表で、生薬としても利用価値があるハクビシンを取り扱う業者は、SARSウィルスに対して抗体を持っているのではないかという報道がなされ、有力な因果関係を示すのではないかと注目されています。ただ、これまでの疫学的な検討から、もっとも感染の可能性が高いと考えられることは、SARS患者の看護・介護をしたか、それと同居をしたか、またはその体液や気道分泌物に直接触れたといった、「SARS患者との濃厚な接触があったこと」です。
 感染経路としては、患者さんに咳や肺炎などの呼吸器症状があることから、気道分泌物の飛沫感染が最も重要と考えられます。しかし、種々のSARS集団発生事例を検討すると、それ以外(手指や物を介した接触感染や、空気感染、糞便からの糞口感染など)の感染経路もあり得ると考えられています。

⑦感染経路の違いについて教えて!
病原体の主な感染経路には、飛沫感染と空気感染があります。
 咳やくしゃみなどをした時には、鼻やのどから分泌物が飛沫(しぶき)の形で飛散します。これはある程度の大きさがあるので、どこまでも飛んで行くのではなく、通常1m程度で落下します。これが落下前に直接吸い込んで、鼻やのどの粘膜から感染するのが飛沫感染です。飛沫は結膜に感染する場合もあります。インフルエンザや流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などはこのタイプです。
 それに対し、飛沫の水分が蒸発するなどして、非常に小さく軽いエアロゾル粒子(飛沫核)となった場合には空中に長時間漂い、また空気の流れに乗って長距離まで到達します。これが空気感染です。麻疹(はしか)、水痘(水疱瘡)、肺結核などはこのタイプです。

⑧マスク着用は効果があるの?普通のマスクではどうなの?
 SARSの感染経路は完全には解明されていませんが、今までの病院内あるいは家族内の集団発生では、飛沫感染が最も重要であると考えられます。ですから、適切なマスクの使用は有効な予防手段であると考えられます。SARSの予防に関してのデータはありませんが、患者さんと接触する場合や、伝播確認地域で人ごみに出る場合などでは、通常のマスクでも何枚か重ねて使用すれば、飛沫感染に対してある程度の予防効果があるものと推測されます。もちろん、一つのマスクをいつまでも使っていると、そこに付着しているウィルスによる危険も考えなくてはならず、状況に応じて頻繁に変えることが必要です。
 ところが、空気感染の可能性がある場合、通常のマスクで防ぐことはかなり難しくなります。SARS患者が発生している地域の医療現場では、空気感染に対して効果的なN95あるいはN100マスクが使用され、これが入手できない場合には外科用マスクが使用されます。N95やN100マスクは目が非常に細かく、空気感染に対しても効果的ですが、これを確実に装着すると息をしにくく感じ、長時間着用しての生活は通常困難です。したがって、通常の屋外での活動や歩行に際しては、N95やN100マスクをすることはお奨めできません。

⑨潜伏期間中の人、または治った人からもうつりますか?
 現段階では不明ですが、SARSコロナウィルスの感染を確実に判定できる検査法が確立し、広く使われるようになれば、これらの点も解明されることが期待できます。
 これまでの疫学調査からは、患者さんの多くは、医療従事者やSARS患者さんの家族などであり、二次感染したものであることがわかっています。また、そのほとんどは、患者さんが発熱・咳などの症状を呈しているときにうつっています。潜伏期間や症状がなくなってからうつることはあるとしても、その可能性は極めて少ないと考えられています。

⑩年齢や性別に関係あるの?
 これまでにSARSと診断された患者さんの多くは25~70歳で、また男女間には明らかな差が見られません。現在までの報告では小児患者は少ないのですが、その原因はよく分かっていません。

⑪予防接種(ワクチン)はあるの?
 残念ながら、ワクチンはまだありません。現在、ドイツなどでワクチンの研究・開発が始まっていますが、使用されるようになる前には、動物を用いた試験など、有効性や安全性について種々の検討を重ねる必要があります。世の中に上梓されるには、少なくとも2、3年はかかるとみていいでしょう。

⑫日本で普通の生活をしていれば、安全かな?
 ある国(あるいは地域)での伝播が確認された場合、その国(あるいは地域)ではSARSにかかる可能性があると考えられます。WHOの報告による現在の伝播状況については、感染症情報センターのホームページを開いて、「緊急情報:重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する情報⇒『最近の地域内伝播』が疑われる地域」で確認してください。ちなみに僕のHPからも、東京都健康局HP経由でジャンプできます。

⑬感染したら、必ず発病するの?
 同じ状況にいた人がすべて発病しているわけではないことから、感染しても発病しないことがあると考えられます。また、患者さんの診療に関わった医療従事者での発症率は、感染防御策がどの程度行われたかにもよりますが、初期の防御策があまり行われなかった頃には、60%前後とされています。ただ、この点もSARSウィルス感染を確実に判定できる検査法が確立し、それを使っての研究が進めば、より明らかになると期待されます。

⑭患者さんの使った物や、患者さんがいた部屋は消毒必要かな?
 残念ながら、病原体の感染経路が完全に解明されてはいないので、病原体を含む可能性のある血液や体液の付着する医療器具は、できる限り使い捨てのものにします。やむを得ず再使用する場合や、誤ってそれらが付着した床や家具などには、細菌・真菌・ウィルスに有効な広域スペクトルを持つ消毒剤を用います。患者さんが入院前に使用したものや、患者さんのいた部屋などでは、血液や体液のついたものはできるだけ捨てるか、前述の消毒剤で消毒します。
 なお、SARSコロナウィルスは、一般に用いられているさまざまな消毒剤で感染性がなくなると考えられています。具体的には、次亜塩素酸ナトリウムが望ましいですが、人の皮膚や粘膜などに使うことはできず、金属に対しても腐食性があります。そのような場合には70%~80%の消毒用アルコールも有効と考えられています。

⑮SARSにはどんな治療法があるのかな?
 有効な根治的治療法はまだ確立されていません。特に初期には、SARSとSARS以外の肺炎との鑑別が困難なので、一般の細菌性肺炎を対象として、抗生物質を中心とした治療を行うことになります。また、肺病変が進行する場合には、酸素両方や人工呼吸器での管理が必要な場合もあります。
 海外(特に香港)では、抗ウイルス剤のリバビリン(日本では、インターフェロンとの併用で、C型肝炎の治療に対し保険適用あり)の静脈内注射とステロイド剤の併用療法を行い、効果が期待できるとの意見も出たそうです。しかし、明確な効果が科学的に証明されたといえる段階ではありません。

⑯SARSにかかったら治るのかな?致死率はどのくらい?
 これまでにSARSの可能性があると判断された人のうち、10~20%の方が呼吸不全などで重症化していますが、80~90%の人は発症後6~7日で軽快しています。SARSの致死率については、以前は4~6%と考えられていましたが、WHOはさらに検討を行い、2003年5月7日に、全体として14~15%との推定結果を公表しました。しかしこれは年齢や基礎疾患の有無などによって、大きく異なる傾向にあります。

 さて、つい先日、WHOはSARS制圧を宣言したようですが、これが今後も続くのか、それとも本当に一過性のものだったのかは、まだ判断が分かれるところです。今後も、医療従事者として、注意深くこの動向を見守っていこうと思います。

そしてもう一つ心配な種が。先日結婚した僕の親友、実は夫婦ともども生活の場を台湾においています。医療従事者の立場で考えると、ホントに心配です。彼らにも、しっかりSARSのこと伝えなきゃ、って思います。


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