なかちゃん@那覇の日々のくすりばこ

病院薬剤師のお仕事紹介(15.8.25)

病院薬剤師のお仕事
錠剤棚調剤・製剤注射薬調剤(混合)

    病院薬剤師の仕事を始めて、まる3年が経とうとしています。ひととおりの
  業務は経験しているものの、毎日が勉強・勉強の日々…。いろいろな人間模様
  に遭遇するたび、喜ぶやらヘコむやら、って感じだけど、元気に仕事していま
  す。ここでは、そんな仕事の一端を紹介していきます。

  ①調剤業務
    病院や保険調剤薬局に勤務している薬剤師の、基本且つ最大の割合を占め
   るお仕事、それが「調剤」です。「調剤」の定義は、現在では、「医師や歯
   科医師から発行された処方箋に指示されている内容が適正か否かを確認した
   後、指示されている医薬品を、指示された使用法に適合するように調製し、
   患者様に医師の指示どおり正しく使用しながら交付するとともに、服用後の
   有効性と安全性を観察して医師と連絡を取りながら処方の修正を行う」こと
   とされています(「調剤指針」より)。
    ですから、アルミシート入りの錠剤やカプセルを必要数取り揃える(計数
   調剤)だけではなく、子供や高齢者のように錠剤が飲めない場合は、散剤
   (いわゆる「粉薬」ですね)やシロップを量って(計量調剤)出したり、1
   回に飲む薬の量が多い場合には、飲み忘れを防ぐため、機械を使って、1回
   分の量をパックして(一包化調剤)出したりもします。
    だけど、ただ取り揃えたり量ったりするのではありません。
    錠剤を粉砕して(業界用語「つぶし」)調剤したりすることもあります。
    ただ、薬剤の中には粉砕不可なものもあります。また、吸湿性が高いので
   一包化に向いてないものもありますので、その時は処方医に問い合わせをし
   て、納得してから調剤に入ります。調剤が終わった患者様のお薬については
   調剤した薬剤師とは別の薬剤師が、処方箋どおりに調製されているかをチ
   ェック(鑑査)して、それで間違いがないことを確認して、初めて患者様に
   お薬を渡します。その際にお薬の副作用や服用回数を説明します。その後、
   患者様の薬歴をまとめて、そこで調剤終了となります。
散剤分包機錠剤自動分包機
 さて、調剤も機械化・オンライン化されています。左は散剤分包機です。
 少ない量の粉薬を均一に分けるのに適しています。右は自動錠剤分包機で
す。これは、1回に服用する錠剤やカプセルをひとつつみにする機械で、い
ずれもオーダリングシステムと連動して、調剤業務の短縮に役立っています。

  ②製剤業務
    消毒剤の調製、吸入器用の吸入液の調製、調剤時間の短縮のため、予めよ
   く動くお薬を大量に調製しておく(予製)が主になります。無菌的な操作を
   必要とすることが多く、キャリアと技術も要求されます。

  ③注射薬業務
    注射薬の病棟への払い出しや在庫・使用期限のチェックが主な業務になり
   ます。注射薬は保存温度の制限も多いため、この業務には神経を使います。
   また、高価な薬品も多いため、在庫をあまり抱えないための工夫も必要にな
   ります。
    最近では、注射薬についても患者様一人一人の分をセットして病棟に上げ
   る(注射薬調剤)ことが多くなっています。また、抗癌剤の混合や、高カロ
   リー輸液の調製も薬剤師が行うことで、病棟でのリスクを軽減することに役
   立っています。

秘密兵器
  これは注射薬の調剤や、病棟の看護師からの問い合わせにもすぐ対応できる優
  れものです。ウチの薬局にある商品名をその都度書いています。これで2,000
  円はけっこうお買い得かも(^^)。

  ④病棟における業務
    病棟での薬剤師活動のうち、主なものは2つあります。まず1つ目の仕事
   は、入院患者様への服薬(薬剤管理)指導です。これは、主治医から依頼を
   受け、患者様の内服薬、外用薬、注射薬すべての使用状況を通じて、患者様
   に対する服薬の方法の指導や副作用や相互作用の聞き取り等を行い、その
   結果を主治医や看護師にフィードバックすることで、患者様に合った処方の
   設計をサポートしていく業務です。
    2つ目のお仕事は、病棟における薬剤管理業務です。病棟内の内服薬や
   外用薬・注射薬の常備分をチェックし、病棟内における在庫を減らし、期
   限をチェックすることで、廃棄することがないようにするものです。最
   近では、サテライトファーマシー(病棟内薬局)と称して、病棟に薬剤
   師を常時配置するところも見られます。施設によっては、無菌的な仕事が
   できるように、クリーンベンチをおいているところもあります。
服薬指導
まぁ、こんなイメージで僕は病棟に足を運びます。

  ⑤薬剤情報(DI)管理業務
   DI(Drug Information)業務は、調剤業務と並び、薬剤師の大きな割
  合を占めるお仕事です。病院の薬剤部(薬局)にはDI室を設置してあり、
  そこには必ず薬剤師が1人以上専任で常駐することが定められています。D
  I担当の薬剤師は医師や看護師からの、薬剤に関するさまざまな質問に答え
  ていきます。薬剤に関する情報は、製薬会社が発行するインタビューフォー
  ムに、その性質や物性、実験データなどが載っており、これを見ながら質問
  に答える形式をとります。また、月に1度ニュースを発行し、新しく採用さ
  れた薬や副作用の情報などを病院全体にフィードバックしていきます。

  ⑥薬品の発注・管理
   薬品の発注・納品・管理に関するすべての業務を行います。特に、麻薬や
  毒薬については、発注・納品から病棟への払い出しにいたるまで、すべてを
  厳重に管理していきます。また、血液製剤については、その使用状況を20
  年にわたって帳簿保管する義務があります。

  ⑦TDM(Therapeutic Drug Monitoring)
   薬物の中には、薬が有効に作用する濃度と、これ以上服用すると中毒を起
  こして、副作用などが発現しやすい濃度の差が少ない薬物があります。また、
  腎臓の機能や肝臓の機能が低下している患者様に対しては、これらの検査値
  を考慮して投与するお薬もあります。いわゆる「さじ加減」の難しい薬剤が
  これに当たります。これらのお薬には、けいれん止めの薬や抗生物質、臓器
  移植の際に用いる免疫抑制剤などがあります。薬剤師は、これらのお薬の血
  液中の濃度を測定して、どのくらいの量を投与すれば安全な薬物療法が行え
  るかをシュミレーションし、医師とともに患者様の処方を組み立てていき
  ます。

  ⑧院内感染防止対策への参加
   これは現在、私も参加しています。私はICTメンバーの一人です。さて、
  このICT、Infection Control Teamの略です。Infectionとは、ずばり
  「感染」の意味です。ニュースにも出てきましたが、メチシリン耐性黄色ブ
  ドウ球菌(MRSA)やセラチア菌などに病院内で感染することにより、入
  院されている患者さんが死亡するという痛ましい事故が発生しています。仮
  に院内感染が起こると、病院の経営の根幹にかかわるので、院内感染の防止
  は非常に重要です。その中で、薬剤師の果たす役割というのは、消毒剤の正
  しい使用方法の指導や、これらの情報を医療従事者に提供すること、また、
  抗生物質の安易な使用を防ぐためのマニュアル作りなどです。注射薬調剤の
  項でも触れましたが、無菌状態下における注射薬の混合も、汚染防止に一役
  買う業務であり、これらの業務はやりがいのあるお仕事です。

    余談ですが、鬼束ちひろは「天才」だと思う。院内感染の感じって、彼
  女の「Infection」の歌詞のように、爆破して砕け散るイメージそのままって
  感じだから…

⑨栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)
   この仕事は、最近になって考え方が普及してきました。患者様の栄養面にお
  けるサポートをチーム医療の面から行っていこうという考えの下、できあがっ
  てきています。このメンバーは、現在はICTのメンバーがそのまま兼ねてい
  るケースが多くなっています。それは、感染対策とも密接なつながりがあるか
  らです。特に、寝たきりの患者様にとっての一番の問題は、辱創(いわゆる、
  「床ずれ」ですね)です。これは、栄養状態を考慮することにより、かなりの
  割合で改善されることがわかってきています。薬剤師の役割は、静脈を通して
  栄養分を補給する際の栄養組成とその量を計算し、医師の処方設計に役立てる
  ことが第一になります。また日々変化する体内状態を検査値から把握し、その
  データを解析して、処方を後方から支援していく事を行います。

  ⑩治験に関する業務
   「治験」とは、新しい薬が世の中に出るまでに、この薬が有効かどう
   かを知るために、健常人や患者に対して、この新しい薬を投与するこ
   とにより、副作用などのさまざまなデータを集め、薬の承認のための
   資料作りを行う業務です。薬剤師は、治験に関して、治験を受ける患
   者の「インフォームド・コンセント」を通じた「患者の人権保護」と
   いったことはもちろん、それに伴い生じる膨大なデータのモニタリン
   グ・鑑査、スケジュール管理といったさまざまな実務を管理する役割
   として、「治験コーディネーター」の業務を行います。


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