成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2015.08.31
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カテゴリ: メディア掲載情報
8月28日(金)付けの『日本経済新聞(電子版)』、「消費を斬る」のコーナーの記事 「高速バス、東京~大阪間1900円も 新制度で競争激化」 。ご取材のお手伝いをさせていただき、またコメントもご紹介いただいた。同日午後には日経電子版のトップにどーんと掲載され、かなりのアクセスを集めた様子(会員登録で無料閲覧可)

この記事は、同社大阪経済部の永井次長による署名記事。永井さんは、私が楽天にいた頃、「楽天トラベル高速バス予約」での私の取組を最初に大きくご紹介くださった記者さん(当時は東京の消費産業部記者)。影響力ある媒体に大きく掲載いただいたことで、他の露出につながりビジネスにも大きく寄与した。個人名でお仕事をいただいている今の生き方のいわば原点になった記事だ。今では大阪の「デスク」として関西経済全般を見つめている同氏から「久しぶりにバスを書きたい」とご連絡をいただき、ご協力したしだい。

またあの頃を思い出せば、楽天の広報(PR)担当者が交替した時期。前の担当者とも仲良くやっていたが、特に新しい担当と考え方が合い積極的にメディア露出を続けた頃だ。メディアの件は一例でしかないが、多くの縁に恵まれここまで来たなあとあらためて実感した。

さてこの記事。「東京~大阪1900円」というとすぐ「安全性に懸念」という方が出てくる。以前にも書いたが、その論理自体は正しくない(先に言うと、後述するように私自身はこの安売りには反対なのだが)。なぜなら、東京~大阪のように、利用者の総数が多く、また多数の事業者が競合し、かつウェブ上で比較して予約する「空中戦」市場では、低価格の便に予約が集中し、該当便は平日でも満席になるからだ。全利用者が価格だけで選択しているわけではないが、価格重視という人は確実にいる。その利用が集中するだけで満席になるのだ。

「価格弾力性が大きい」市場なのだ。結果として、高い運賃で低乗車率に甘んじるより、1900円で満席にした方がよほど収益性が高い。彼らは週末など満席が確実な便では強気の価格を設定するから、通年での収益はそれなりになる。だから、「1900円なんかで売ったら安全投資への原資が出ないはずだ」という論理自体は正しくない、のである。ただし…

ここまでの説明には、前提条件が一つ欠けている。それは、「競合先の各事業者が同じような安売りを仕掛けてこなければ…」という条件だ。現状では、極端な安売りは特定の事業者に限られている。そのことは、記事中で掲載されている表を見ればよくわかる。たしかに最安値こそ2年前に比べ低下しているが、全体での客単価はわずかながら上昇しているのだ。一部の事業者だけが極端な安売りを行ない、異常なほどの乗車率をキープしている。だが、他の、特に規模の大きい事業者が安売り合戦に参戦すればどうなるのか。

結果、先に安売りをしていた事業者の乗車率は下がり、一方で客単価は2年前より大きく下がっているわけで、収益性は極めて低くなる。低価格戦略に当然つきまとうリスクだ。

まして、先陣切って安売りをしているのは、おおむね、ブランド力に劣る事業者だ。「楽天トラベル」など予約サイト、「夜行バス比較なび」など比較サイトの集客力を前提に高速バス事業に参入した人達である。利用者は「サイトの顧客」ではあるが、事業者のブランドを記憶し次回それを指名買いすることはない。他が安ければ浮気する。予約サイト主導で市場が作られた大都市間3路線(首都圏~仙台、名古屋、京阪神)の、典型的な姿の一つだ。



固定客を作り出すことに成功したのだ。もちろん彼らも、予約サイトとの付き合いをやめたわけではない。直販で埋めきれない座席は、予約サイトに提供し続けている。ただし、一部の座席数に限定され、極端な安売りまでして席を埋める必要はない。いくらブランド化にお金をかけたといっても、単価が高く乗車率も維持しているこれらの事業者の方が、安売り事業者よりは収益性が高いし、固定ファンを持つ方が事業の安定度が高い。もっとも、その彼らも、(かつて「既存」側が試みたように)「体力勝負」に持ち込んで小規模な安売り事業者を踏み潰すために徹底した安売り抗戦をしかけるという選択肢がないわけではない…

前者と後者の差はどこから生まれたのか。もう10年も彼らと付き合っている私の結論は、どうも、経営者の「生き様」の違いということのようだ。目の前に起こっている事象だけを見て、過去の自分の体験だけを元に、その場その場でできることを最大限に取り組む前者と、次に起こる事態を絵に描きながら、一見遠回りでも着実に対応、実行する後者。前者は前者で、必死でがんばっているんだろう。私の立場だけから言えば、滑稽にしか見えないけれど。

そして「既存」各社も、この安売り合戦を嗤えないはずだ。「既存」事業者の本丸たる高頻度昼行路線への後発参入はまだ少ないが、そのほとんどの事例で、自らの足元への後発参入が判明した途端、対抗値下げしか対応策が浮かばない…。当初はあれだけ反発した予約サイトについても、契約した瞬間、提供在庫の制限など忘れ販売は「お任せ」になっている…

高い視点から俯瞰して状況を観察し次に起こる事態を頭の中に絵を描きつつ、進むべき未来の実現に向け一歩ずつ階段を昇る。それこそが「経営」であるはずだ。ましてや、「移行組」のようなベンチャーならなおさらだ(もっとも、彼らに対し手とり足とりお手伝いをしようと思わないのは、やはり私の愛情が「既存」事業者に向いているからか)。そして、その言葉は、全くそのまま私自身の生き様に返ってくる。次に起こる事態を絵に描けているか。一歩ずつ、昇っているか。いや、それができないようでは、人生はつまらないだろう。





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Last updated  2015.08.31 07:34:06コメント(0) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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