May 23, 2004
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その日のおねえはあるミッションを遂行するために、とある場所にいた。

しかし、今、目の前にあるものといったら、小さすぎて役にたたないものだらけなのだった。
ほかのものならともかく、このミッションだけは避けて通ることは許されない。
ため息を一つついて、おねえは目の前にぶら下がっている、小さすぎるブツの一つに手を触れた。
どうしてこうも違うのか?そう感慨にふけりながらあたりを見まわしてみた。
腕組をして考えこんでいるおねえとは違い、そこにいる人はみな、目の前にあるブツをカートにポイポイと放りこんでゆく。
モノは用途としては、そこにあるものとたいして差がない。
肝心の大きさが悲しいくらいに違いすぎるだけなのだ。

広いスペースを歩き回りおねえの足は疲労感を感じていた。
ああもう、トンズラしてしまおうか。
聞いてなかった事にしてしまおうか。
どっちにしろ、自分の使うものではないのだ。
おねえの脳裏に後ろ向きな考えが浮かんでは消えた。
これさえそろえば、帰れるっていうのに。
今日最後のミッションで、おねえは疲れていた。
と、そこへ現れた人を見ておねえは、これぞ天の助けだと思った。
今ここで聞いておかないと。もう、自分一人の力では、道が開けない。
そう確信したおねえは、意を決して、カラカラに乾いた口をこじ開け、その呪文のごとき言葉を発した。
「あのう。四角い形の、ないですか?」

「LLより大きいサイズのが欲しいんですけど」
そうなのだ。
おねえは今日、月イチの仕入れにきているのだった。
カッコよく言っているミッションとは、近所のお客さんに頼まれた、大きいサイズのパンツを探し、仕入れてくる事なのだった。
普段、店では取り扱ってはいない商品なので、いつもと勝手が違った。探す場所がわからない。

売り場のお姉さんは商品数のチェックのための伝票を小脇に挟むと、えーっと、と言いながら売り場を見回す。
「たしかこのへん……」下の段を指差すが、そこにあったのは形は四角でも、どう見てもMサイズの、おなかのあたりにピンクの飾りリボンのついたおしゃれパンツだった。
「こういうのじゃなくて、もっとこう、おばちゃんがはくような」
おねえもなんと言ってて説明していいのか、言葉が見つからない。
売り場のお姉さんは考え込んでいたが、しばらくして、
「ああ、それは!」
と、まるでひとりごとのように小さくつぶやくと、
「こっちです」とかわいいパンツ売り場を後にし、奥の方へ足早にかけてゆくのだった。
遅れまいと後を追う、おねえ。
「メリヤスの生地のものですね~」
前を向いたまま売り場のお姉さんは後をついてゆくおねえに聞いてくる。
メリヤス。
それは遥か昔におねえのおじいさんが良く使っていたなつかしい言葉だった。
Tシャツ地みたいな、すこし伸縮性のある生地。そういえばおじいさんは「メリンス」
とも言っていたっけ。懐かしさのあまり過去へと旅立とうとするおねえを現実世界へ引き戻すかのように、売り場のお姉さんは続けてこう言った。
「それって」<続>





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Last updated  May 26, 2004 11:43:32 PM


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