Laub🍃

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2010.10.08
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カテゴリ: .1次長
痛みを楽しさに変換出来れば、世界は幸せになる。
その真理に気付かない奴が世の中多すぎる。






「結婚して幸せに暮らしましたとさ」
愛という物語は、結婚をクライマックスにするようだ。

つまりそれが頂点でさえあればその後いくら下降しようとどうでもいいのである。
シンデレラの両親は結局後妻でトラブルが起こったし、
美女と野獣の父親はヘタレである。
ラプンツェルに至っては最初からクライマックスでその後両親の株は下降留まるところを知らない。




「あんたはそういう所本当父ちゃんにそっくりだよ」

「怒られるのは私なんだからね」

大体時計だってそうだ。違う所でできた部品がきちんと組み上がるのは綿密に事前の打ち合わせをしているから。

しかも摩耗の計算もしてだ。

そうでなければ沢山のまわりのお節介と言う名の補助部品や代替部品、苗字の変更という緩衝材兼接着剤が存在していなければならないのだ。

だからつまるところ物の創造という物語は物の破壊を前提として行われるものなのだ。
そう思えばどんな破壊も面白く思えるようになった。



今日も俺は破壊されたコンクリートのスケッチを行いながらそんなことを考える。
静かな表情のコンクリートが数センチ下では亀裂の餌食となりさらにその数センチ下では中身のぶつぶつした世界を曝け出している。
様々な大きさに分化する石の粒も面白いが、その合間をひそやかにねじ曲がりながらもしくは強固に突き破って出てくる蛇のような肋骨のような鉄筋は美しかった。

「育見くんは何に興味があるの?」

「はは、別に危険思想だとは思ってないから安心して。
 中身が曝け出されるのは大抵面白いものでしょう。
 そんな君に六時限目の特別講義のお誘い。
 ……ぶっ壊しますよ」

ぴらりと渡されたチラシには白黒が並ぶ。色なんざ必要ない、白黒の写真がいくつか乗っている。


戦争は悲惨。そうよく謳われるが、それは当事者と共感力の高い人だけの言葉であり。
つまりは今どきの若者らしく個人主義の俺にとってそのぼろぼろの姿は不謹慎ながら興味深いものでもあった。

流石に断末魔や金切り声は聞きたくねえが、無機物の悲鳴にはぞくぞくする。
いいとこどりだ。嗜虐性を満たしながら罪悪感なんていう水差しはない。





だけど、共感って回路がなんであるのかっつーたら、答えは今すぐに出せる。
同類と同じ道を歩まない為の警戒回路だろうな。


コンクリートの破壊試験じゃなくて、建物そのものの破壊。
充分に危ないもんはなくしてたんだろうが、目の前の花火を見るにそれは失敗だったようだ。
「綺麗」と「始末しそこねたガスがあったんだろうな」と「ヤバイ」が頭を過った。

母ちゃんの怒る様子と同じだ。

いつもどこに地雷があるのか分からずに、爆発したあとは何の弁解も許されずなんの説明もされないまま体に教え込まれたことが沢山ある。
だから誰にも説明できない爆弾が、母ちゃん譲りの爆弾が俺の中には沢山埋まっている。
それらは父ちゃん譲りの爆弾と相殺し合う事もあれば二つあわさって更に凶悪なもんになることも。

教授は無事かな。

吹き飛ばされた感覚、直後の痛み。
そんなことを考えながら、意識は途切れた。





俺は死にはしなかった。
天国でも地獄でもお断りかまされたんだろうな。

辿り着いた世界ではドンパチをやらかしまくっていたんではじめはそこで働いていた。
だが俺みたいな思想のねえ技術愛しかねえ奴は周囲からは恐れの対象になるようで、いつの間にか監禁されていつの間にか戦犯にされてたもんだからもー笑いしかでやがらねえ。


「……うわー、笑ってるよ。あのさ、お前自分の今の状況分かってる?」
「……ん?新しい尋問官かアンタ」
「お前みたいな技術馬鹿の尋問を続ける奴にはなれねえよ」

結構失礼なことを言いやがったその人はカナタと名乗り、牢屋を最小限でぶっ壊して俺を連れだした。

「お前みたいなやつに最適な場所と上司が居る」
「お前みたいな」
「倫理がなくても生きていける技術馬鹿」

真っ暗な空間をずっと歩いていくとその先に灯台みたいなものがあった。
近付いてみると案外近くに会ってちっちゃい灯台。

……いや、明り自体はそんなに少なくなかったんだ。その周囲を俺でさえぞくりとするほどのどでかい梟と何百羽もの烏が埋め尽くしていただけだった。

「もーおっそい!田中!」
「ごめんごめんて」
「田中さんだって都合があるんだから」
「加藤は黙っててくれる!?」
「あんたらも異世界にやってきた奴らなんだな?今後の俺の同僚か?」
「んなわけないでしょ!あんたらみたいなひっどい頭の奴なんてうちらの仲間には居ないもん!」
「そうか?」
「だから加藤は黙っててくれる?」

よくは分からないけど、どうにかまだ首の皮は繋がるようだ。

「そこではぶっ壊してもいいのか?」
「…………まあな」
「あーもーほんっと佐藤博士のとこに来る奴ってやだ!きもい!」
「その技術に助けられてる俺達が」
「だからうっさい加藤!」

よく分からないが、まだまだ楽しみは続くようだ。
笑み崩れる俺を、三人?は不気味そうに見つめていた。



to be continued... ?





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最終更新日  2017.05.03 15:28:14
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