Laub🍃

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2011.02.18
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志津子が席を外した時、私達の席では一気にきついトークが開始される。
志津子はいつもそれに耐えられないからってそれを遮るか、話をそらそうとするからだ。
勿論この話の中にはそうさせる志津子への恨みも入っている。
酔いも手伝って、その話はなかなか止まる事はない。

でも、私も本当はそんな志津子が少し羨ましかった。
私は、何も言えず頷くだけだから。

いつも笑いの世界にだけ居る彼女が羨ましかった。
そこまで親しくなかったから、みんなの話にそうなんだと頷くことしか私には出来なかったけれど。奇想天外な噂だろうと、ありそうな失態だろうと。
彼女は自由で幸せに生きているように思えたのだ。




遅いなあ。
15分経過した。

他の子…特に何人かの子は志津子が居ない方がいいように振る舞うけど、私は…そうでもない。
だから、隣の朝未が心配するそぶりを見せたタイミングで、トイレに迎えに行った。

爆睡していたら、相当呑んでたし吐いてたらどうしようと、それだけを思っていた。

なのに。

「ふぅ…うぇぇ……」

志津子が、泣いていた。

え?

固まった。

え?





その姿、皆に見せたら。少しは印象変わるかもよ。
なんて、ちょっと思ったけど。言えなかった。


数分して、トイレットペーパーを引き出す音と、気合いを入れるかのように多分頬を叩く音がして、ドアが開いた。

「えっ…」
志津子は明らかに、『うわっ見られた』と言う顔をしていたので、私は今来たばかりと言う顔をして微笑んだ。


「う…うん…」

ふらふらと戻る彼女を支えながら歩く。
本当は彼女はそこまで酔っていなくて、ふらふらと歩く様子は身体じゃなくて心の様子を表しているのかもしれないなんて思ったけど、私にはどうにもできなかった。

あの子が、無理せずに笑っていられる世界なんてこの世界にはないのかもしれない。

それでも笑おうとする彼女は私は嫌いではなかったけど、好きとも言えなかった。
どことなく、どうしてみんながそこまで彼女に縛られるのか、彼女について語りたがるのか…
分かる気がしてしまった。





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最終更新日  2017.04.30 11:54:40
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