Laub🍃

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2011.08.10
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カテゴリ: .1次メモ
俺は勇者なのだと信じていた。
 幼い頃から神童と言われ、親や近所の皆俺に期待をした。
 少しばかりわがままを言っても、失敗しても、勇者なのだからと許された。
 それに応えるように俺も周囲に対し寛容になった。
 いずれ俺は勇者として有名になるのだ。
 その最たる証が、勇者にしか岩から抜けない剣だった。手に入れた当時の神々しい光を覚えている。幼い頃秘密の洞窟から持ち帰ったそれは、大事に俺の部屋に保管してある。

 天下一武闘会なるものが開かれた。勇者決定戦?馬鹿らしい、出るものか。
 俺の師になりたいと言う者が現れたが、剣を見せてくれと言うので断った。あの剣は俺のものだ。俺だけがあの光を見られるのだ。

 さまざまな誘惑になど負けない。俺は俺の信じる道を歩み、そのため鍛練するのだ。





 ドラゴンが現れた。いまこそ伝説の剣を抜く時だ!

ザリリリリッ

「……え?」
「ガギャアアアアアアアア!」

 ……錆びている?
 嘘だろう、おい、困る、なんでーーーーーー

 そうして村に現れたドラゴンは別の人が退治した。俺が見下していた番人の少年がそれを行ったのだ。

 俺はいたたまれず、村を出た。



 才能も刃も、使わなければ、手入れしなければ錆びるのは当たり前。


 ぼーっと歩いていると目の前に、ゾンビの大群に襲われる女性。
 こんなゴミのような俺でも、囮くらいの役には立つだろうか。

「ー!やった!!すごい!!」

 彼女が叫ぶのを、ただ茫然ときいていた。
 倒せた。鈍器のようなこれでも、まだ、使えたんだ。



 俺は錆だらけの剣を、ゾンビ達に向けた。
 少しだけ、剣があの時の光に包まれた気がした。





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最終更新日  2016.11.04 17:25:09
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