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長押綴

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2012.01.01

　君達は、実験動物の生涯をご存じだろうか。

　実験動物は条件を調整され生まれ研究所で育てられ使用され廃棄される。
　実験されることが生まれてから死ぬまでの仕事。実験に使われる為に生み出される命をなくそうと言う話もあるみたいだが、実現するかどうかは怪しいよね。１００％ぶっつけ本番でＯＫが出るとか、治験可能っていうんならともかく。

　さて、君達はご存じだろうか。君達は実験のお蔭で生きられているということを。

　なにも君達の世界の中での「実験」だけをさしているわけじゃない。
　もっと大きな話だよ。

　僕の姿を見て、気付くことがあるよね。
　そう、僕は君だ。

　神様って信じるかい？ああそう、信じないか。
　まあ信じるかどうかはどうでもいい、居るんだよ、神様は。
　世界の管理人と言ったほうが正しいかもしれないけどね。
　神様っていうイメージとは――少なくとも君のイメージとは合致しないよ。君は神様なんていたら僕を救ってくれていたとか言うけど、神様は君に楽な生涯を送ることなんて望んじゃあいないんだから。あいつらはもっと自分勝手だよ。自分勝手な事ばかりするけど、この世界を狭いって言えるくらいには大きな存在だから神様と呼んでおこう。むしろ僕達があいつらの薦める人生を気に入れなかったのが不幸なのか、それともそれさえあいつらの手の内なのか――

　……そうそう、何の話だっけ。
　神様は居るんだよ。

　神様の日課が何か知っているかい？
　……世界を量産することさ。

　といっても、彼らは君の居るこの世界をあまりにあまりに愛してしまっているからね、別にパラレルワールド作るとかそういうんじゃない。他の世界は単なる実験場さ。

彼等は君達をより楽しく鑑賞するために、あるいは仲間内で見せ合う為に、わざわざ検証してから「どっちがいいか」なーんて言って推敲するのさ。

そこで実験用に生み出されるメモ書きが僕達。

君は抗わずにそのまま死んでいく「僕」。

よかったね、選ばれて。

でもねえ、僕、生きたいんだよね。

これまでの君の人生の選択、悩み所一杯あったよね？
それを君は「選択」の場面だと思うかもしれないけど、実際は違うんだ。

××ちゃんと焚火の近くで遊んじゃったりとか、
××くんの勧誘であの部活に入ったりとか、
××さんのことを目で追ってしまったりとか、

そういう無意識での選択の結果こそが「実験」でより面白い結果として選ばれたんだ。

君、勢いでフェンス乗り越えたよね。
僕は勢いで引き返したよ。

でもつまんないからぐしゃぐしゃぽいーってさ。
君の方が本物の展開に採用されちゃうって、僕達を作った神様は本当に性格悪いよね。

予定では君の死でお母さんは体調崩してお兄ちゃんはカウンセラーになって沢山の命を救うんだって。
その救われる命の中に神様のお気に入りがいるんだってさ。

いつ登場させるのかずっと温めてたけどやっと生かせるってさ。
笑うよね。

君は背景になる為に死ぬんだよ。
僕は背景を良くする為に消されるんだよ。

……ああ、そんな顔をしないでくれ。

最初、君をゴミ箱に放り込んで、代わりに僕が入るつもりだったけれど、
気が変わったよ。

『一緒にこの世界を壊そう』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「途中まではおっ？と思ったけど、ありきたりなオチにまとまったじゃないか」

「そう言うなよ、お前だってこの間ありきたりって駄目だし喰らってたくせに」

「しかし、俺らの作る世界の奴らに本当に俺等みたいな「心」が宿ってたら可哀想だよなあ」

「「心」っていえば、俺らの「心」も誰かに描かれたものだったりしてな」

「そんなのきりがねーよ」

「なあ、なんで俺達、「世界を弄ぶこと」がこんなに好きなんだろうな？」

どこまでが設定か、どこからが暴走か。
それは誰にも分からない。

ただ一つ言えるのは、

実験の目的が愛されていればいるほどに
それ以外と「断定された」ものはぞんざいな、無慈悲な扱いを受けるし――

落書きから「発展してしまった」ものは、いくら後で「失敗」だと思われても
今更描きなおすことなどできないのだ。

一方通行の、絶対的な『時間』と言う大きな存在に付着する　背景　が、もしかすると僕達を含んだ他の―――

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