Laub🍃

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2012.04.20
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カテゴリ: .1次メモ
プディング=ア=ラモード。
 それが僕に与えられた名前。
北の魔王。
 それが近年僕に与えられた名前。


 先日、短命なことで有名な東の政権がまた代替をしたというので会合を開いた。
 私だって魔王になってから50年しか経っていないのに、代替を見るのは3回目だ。

「まぁーた結婚報告ですか。幸せな奴らはいいですねぇ」
「そんなこと言うなって」

 僕の一の部下・ハチコは、世の中の幸せそうな奴ら全員が憎いのだという。だからこそ闇に堕ちる僕のことも追ってきたようだったが、魔界は魔界で戦争の時以外はみんな案外楽しそうにしているからイライラカリカリばかりしている。いい人でも見付かるともう少し落ち着いてくれると思うのだが。


「・・・・・・そうだね」

 このイヤミにも、もう慣れている。
 彼は僕のことをずっと責め続けている。それでもいい。だって僕はそうなることを覚悟で、もっと言えば絶縁覚悟でこの子を一度見捨てたのだから。

 周囲の圧力、同盟先とこの子の折衝。それは別にどうでもよかった、構うほどのものではなかったしそれだけが原因ならば僕はずっとこの子を庇い続けていた。いつでも僕を楽しませてくれるこの子の道化気質は、僕にとって愛すべき、庇うべきものだった。きっと酷くまじめなこの子にとってはそんなつもりなかったのだろうけれど、まあ結果オーライといったところか。

 けれど、僕からの愛だけではやはりだめだ。この子は20そこそこで、これから未来が長く、もしかしたら僕のことなど必要としなくなる日が来るかもしれない。いや、来るべきだ。
 僕の呼びかけよりもずっと大事な誰かのために命を捧げるかもしれない。
 だからその時のために、こちらから手を離したのだ。

 ・・・と、今更何を言っても言い訳にしか聞こえないだろうことは分かっている。

 僕は、自分が大好きだ。そうして、自分のために頑張ってくれる飼い犬も大好きだ。そう、そんな飼い犬がいくら失敗したって、怒るほどのことではない。そう、僕はずっとこうだったのだ。

「あるがままの姿を受け止めて欲しいのならば、そちらも僕のあるがままの姿を受け入れられるか」

 あの日、泣きながら引きこもっていた彼に最後の別れをつげに言ったら、魔公爵になるというとち狂った提案をしに行ったら「どうせなら魔王にしましょう。今は北が狙い目です」とか言ってあっと言う間に制圧し僕に王座を渡してくれたこの子のことだから、きっとこの子は鎖を着けなければ動くことすらできないのだろう。

 そしてそれだけある力に反して、絶望的に自由意志が乏しい。操作してもらうことを愛だと思っている。

 愛してやろうじゃないか。
 従い続けることで愛を感じるお前と、従われることで愛を感じる僕。ちょうどいい。

「大丈夫、僕のペットである限りもう二度と見放さないから」
「どうだか」



 あの日の数ヶ月前、お前は変わりたいと言った。そうして変わったお前をも、私は愛せた。
 唯一の僕とお前の破滅は、いつかお前が僕を捨てる日が来ることくらいだろう。

 そうして僕は、そんなお前をも楽しみにしているのだ。
 いつか僕のために、そんな面白さを与えてくれ。





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最終更新日  2016.05.23 04:38:14
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