Laub🍃

Laub🍃

2016.12.08
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カテゴリ: ◎2次表
僕は昔から胃腸の弱さに泣いてばかりいる。
 だから兄さんによく薬を煎じてもらう。
「ほら、できたぞ」
「ありがとう…」

 煎れてもらったお茶と一緒に飲み干す。

「はぁ……」

 でも、いつもそんなに効果はなく、

「うっ!!」

 ぐるるるる、といつものようにおなかが鳴り出すのだ。


 便所の中にまでツタを伸ばした朝顔を見る。
 僕は大抵夏によくお腹を下すから、その朝顔と僕は友達だった。

「はあ…冬や春には薬もよく効くのになぁ」

 綺麗な朝顔の青と空の青が目に痛い。

 今日も僕は、外で粗相するのが怖くて出掛けられない。つまらないな。でも、友達にあんな姿を見られたら恥ずかしくて爆発してしまう。そういうのを許容できるのも兄弟ならではなんだろう、兄さんには昔からよく迷惑をかけた。3歳上の兄さんが異様に面倒見がいいのもあって、いつもいつも甘えてしまう。そんな自分が昔から嫌だった。
 だからせめてもと、兄さんのお仕事の手伝いをする。

 ようやく腹痛が収まって部屋に戻ると、兄さんが何かをごりごりと擂り潰していた。

「兄さん、それなに?」
「あ、ああ、戻ったのか。…あるお客さんに頼まれた、専用の薬だよ。段々と毎年効かなくなってきているらしいから成分を濃縮する工夫ができないかと思ってな」
「大変だね…。どんなお薬なの?なんて名前?」
「……『彦星』だ。効果は……なんだと思う?」


 随分とロマンチックな名前だなあ。……けれど、なんだか少し不吉な。

「そう、ロマンある名前だろう?それで、効果はなんだと思う?」
「……うーん、わかんないや」

 一瞬、惚れ薬だとか思い浮かんだけど、そんなわけないよね。
 だって彦星と織姫は元から想い合っているのだから。
・・・ の「正当」な理由で持って、織姫のお父さんさえも納得させるような理由をつけて、出られないように離れられないようにーーーーーー

「…そうだな。お前はそれでいい」

 兄さんの薄っすらと半円を描いた目は、どこか熟れてしぼんだ朝顔みたいだった。





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最終更新日  2017.02.12 23:21:21
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