14.池


水の匂いがしてティティは我に返った・・
「・・池・・いつの間に・・」
気がつくと宮殿内の池にたどり着いていた

セナトスとハルノートンが真剣を使って勝負をしていた場所だ
あの時セナトスは大胆にもハルノートンにネフェル王女が欲しいと言った・・
そしてティティはセナトスに対する気持ちを確信したのだ

「・・ついこの間のことなのに、随分前のことのようだわ・・・」

陽射しに照らされて水面が眩しい程にキラキラと輝いている
そのきらめきがティティの頬に反射する

これからどうしよう・・
王女自らが私に宮殿を出て行くように言ったのならともかく
侍女が勝手に宮殿を飛び出すなんてこと許されない
外出許可証もなく外に出ることすらできない・・・衛兵に捕まって終わりだ・・
今日はセナトス将軍のおかげでフリーパス状態だったけど・・
仮にうまく抜け出せたとして家に帰ってもすぐに父さんに連れ戻されるだけだ
おそらく想像以上の大金を役人に払って私を宮殿に入れてるはずだもの
何を期待したんだろう?
貴族か王族に見初められて・・・

「フフッ・・シャレにならないな・・」

ドサッとティティは岸辺に腰を下ろした
脚が震えていたからだ

膝を抱えるように座った
できるだけ小さくなりたかった・・

ネフェル様・・すごい迫力だった・・
産まれながらにして王女様だもんな・・今なんて実質女王様だし
そんな人が全身で血を吐くような叫びをぶつけられた・・
私みたいな平民、腰を抜かすのは当たり前だわ・・
ネフェル様を苦しめてしまった・・憧れの女性にあんなことを言わせてしまった・・
泣きたかったのはきっとネフェル様の方だ・・
私が泣いてる場合じゃにのに・・
ジワッと涙が瞳にたまる・・


どうしたらいいんだろう?宮殿を出たくても出れない。出ても行く所がない・・

一人で仕事見つけて働くしか・・ない・・
そうだ!その手があった!
体力には自信がある。住み込みで働けばいい!どこかの大商人の家とか!
よしっ!それでいこう!いくしかない!

でも・・抜け出せるの?ここは国で一番警備が厳重な所よ?
塀は高くて登れないし、荷物にまぎれてもしもバレたら何の関係もない荷物の持ち主まで厳罰になってしまうし・・・


池・・・・
この池って・・・どこから水を引き入れてるんだっけ?
宮殿の外を流れるナイル川からでしょう!!そこしか水源はない!
うまくいけば、そこから外へ抜け出せる?!
私一人くらい通れるでしょう!きっと!幼い頃からナイル川で遊んでたんだから
泳ぎは大丈夫だと思う!
ダメなら戻ればいい。とにかく誰かに見られる前に行動しなきゃ!

「えっと・・水の流れる方向は・・と・・」

ゆっくりと池に足を入れる
服が邪魔だな・・裾が足首まであるから上手くおよげないかも・・
ザブザブと進んで行く・・・

後ろでガサッと音がした
「何をしてるっ?!」

見つかった!!は、早くもぐらなきゃ!

「待てっっ!ティティ!!戻れっ!!」

その声は・・

「その池にはワニが・・」

ティティが振り返ろうとした瞬間、突然足場がなくなり、頭まで水の中へ入ってしまった


急に深くなってたっ!
あ、慌てるな!泳げるんだからっ!落ち着いて!
予想以上に服の裾が邪魔だ。その上水草が足に絡みついて身動きがとれない!
しかも、「ワニ」って聞こえたような・・

その時、力強い何かがティティの体を掴んだ
ワ、ワニ?!パニックを起こし、ジタバタ暴れるティティ
なんとか水面に顔が出た!
「た、助け・・助け・・・ガボガボ・・・」
力いっぱい暴れる!死にたくない!

「おとなしくしろっっ!!死にたいのかっ!!」

ワニがしゃべった・・・わけないか・・人か・・人だ・・・
相手が人とわかって、今度は必死にしがみついた
相手の骨が折れちゃうんじゃないかと思うほど力いっぱい抱きついた・・







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