第３話ーターゲットはプットモン！？

「腹減った～・・っ」
削り取られた峠道を歩いているメンバーの中で一番後ろにいた拓人がそんな事をぽつりと言った。
「・・すごい腹の音だな」
宗一郎は呆れた表情で拓人を見た。
「でも、昨日トゲモンの所でおかわりしまくってたよな」
「・・あたし、アレ見てて気持ち悪くなった」
「まあ、あんだけ食べたせいで逆にお腹すいてるんだろうね」
と、吉良、サラ、ミハエルがそれぞれ拓人に対する感想を述べた。
「まあ、拓人様トゲモンさんのお話だとあとちょっと行った所に村があるらしいから頑張りましょ」と、饗古が拓人の肩を軽く叩いて笑顔で言った。
「さっきからそう言ってるけど全然つかないジャンよ！お腹すいたお腹すいた！！」
拓人がランドモンと一緒にその場で駄々をこね始めた。
「やめんか！！みっともない！！」
と、吉良とサラからつっこみが入った。
サァァ・・
その時、吉良の耳に爽やかな水の音が聞こえた。そして、微かだが誰かがケガしていることを感じ取った。
吉良はゆっくりと、その音の方へと振り返った。
「？どうかしたの？」
「―誰か、ケガしてる・・」
吉良はそう言うと、近くにあった洞穴の中へと入って行ってしまった。
「！？ちょっと、吉良君？」
「あ、待てよ」
サラと宗一郎が慌てて吉良の後を追いかけた。
ゴォォォ―・・
激しく流れ落ちる滝の中で一体の角竜型デジモンートリケラモンが血塗られ、傷つけられた羽という痛ましい姿で意識を失っていた。
ガサッ
「誰だ！？」
トリケラモンはその音にはげしく反応し、飛び起きようとした。
そこには、吉良とプットモン、サラ達の姿があった。
「やっぱりいた・・大丈夫？」
「――キラ・・？キラなのか？お前」
トリケラモンがじっと吉良を見た。
「・・そうだよ。僕が天空寺吉良だ。よく知ってるね、君」
「――お前達は有名だからな・・こちらの世界では・・」
「・・・・」
「何？どういう事なの？知り合い？」
「橘さん、宗一郎とミハエルと一緒に村まで行って、トリケラモンの事知らせて応援呼んでくれないか？」
「う、うん、わかった！行こう、フローラモン」
サラとフローラモンは颯爽と走り出して行った！
「あっ、待ってよ、サラちゃん～」
「・・・・」
そんな宗一郎をミハエルはその後をついていきながら、呆れたように見た。
「―あれは・・」
デビモンに抱えられる様にして三角帽子を被った綺麗なブロンドヘアの少女が木々の間から双眼鏡でじっと拓人達の方を見た。
「ふぅん・・また、来たんだｖｖキラ」
「―退屈しなそうですね、リリカ様」
「そうね、デビモン」
その時、リリカのデジヴァイスにメールが来た。
「あら、ゼロからだわ」

拓人達は近くの村から来たガブモン達の助けによって、何とかナースモンとドクターモンにトリケラモンを見せる事ができた。
「・・・ふむ」
「あの、どうなんですか！？先生。トリケラモンは・・」
「大丈夫じゃよ。これくらいなら、一週間くらいで治るじゃろ」
トリケラモンから聴診器を外したドクターモンが優しく笑って答えた。
「よかった～」
那岐が本当に心のそこから安心したような笑顔を見せた。
「・・それにしても、お前、よくトリケラモンの居場所やケガしている事がわかったな。超能力？」
「・・オレが天才だからかもね」
拓人がそう言うと、吉良が気軽に笑って、上手くごまかした。
「・・は」
「へ、そんな奴助けたのかよ、ドクターモン」
「そうだよな～、人獣型に寝返った奴なんかそのまま見殺しすりゃよかったんだよ」
そこへ、ゴツモンとオオクワモンが悪態な雰囲気を漂わせて、ドカドカと入ってきた。
拓人は思わずムッとした表情になった。
・・何だ、こいつら。
「何よ、あんた達」
「悪い、気を悪くしたか？嬢ちゃん。でもな、そいつは裏切り者だから何を言ってもいいんだよ」
「・・裏切り者？」
「ああ、そいつートリケラモンはオレ達を裏切って、レディデビモンの手下にぺこぺこしてるんだぜ」
「？レディデビモンって、誰です？」
ミハエルは、ゴツモンの前に進み出た。
「ああ、それは・・・」
「きゃああ～！！」
ショコラクマモンの声が飛び入ってきた。
「トリケラモン、迎えに来てやったぞ～」
ドシン、ドシンと物音を立てミノタウルスモンが部下を連れて、とげつきの棍棒を持って入ってきた。
「・・ミノタウルスモン様」
「誰？」
那岐が隣にいるドクターモンに聞いた。
「――この村と対立しているレディデビモン側についた獣型デジモンで、そいつらのボスじゃよ」
「え、じゃあ」
「ったく、つまらない村だな。ん？」
ミノタウルスモンの目に拓人達の姿の目が入った。
サラ、宗一郎、那岐は思わず怯えた。
「・・・な、何よ」
「――てめえ、何でここにいやがる！？向こうの世界に帰ったんじゃ・・」
ミノタウルスモンはぐっと吉良の胸ぐらを掴んだ。
「・・少しは静かにしなよ。ここは病人がいる病室だよ」
「――来い！」
ミノタウルスモンは、吉良を無理やり引っ張っていって病室から出て行った。
「何なんでしょうね、サラさん」
「・・そ、そうね」

吉良はプットモンと一緒に村外れにある廃棄された鉄道のガードレールの上へと連れてこられた。
「危ないな～、こんな場所まで連れてきてどうするつもり？」
「ふざけるな！」
「・・まだ、アポカリモンの事根を持ってるのか？もう、いない・・いや、最初からいてはいけないデジモンなのに」
吉良の瞳は何処か冷静でとても冷たく輝いていた。
カッと、ミノタウルスモンは表情を強張らせ、巨大な斧を吉良に向かって放った！！
その瞬間、吉良のデジヴァイスが輝き、その斧をミノタウルスモンの所に跳ね返して、神々しい輝きがプットモンの身体の周りを包み込み、コードが現れ、プットモンの姿を一瞬見えなくした。
―プットモン、進化～、キュピモン～
プットモンの進化形態、小天使キュピモンがぽよっとした身体を地に足をつけ、その愛らしい笑顔をミノタウルスモンに向けた。
「吉良、いじめちゃだめですよ」
ミノタウルスモンは思わず胸がきゅんと鳴るのを感じた。
「ミノタウルスモン様！！」
そこへ、バットモンとブラックレオモンが駆けつけた。
ミノタウルスモンは慌てて気を取りなおし、吉良の周りを囲ませた。
「！」
「―・・吉良！！」
そこへ、拓人達も駆けつけた。
「！・・何で・・」
「お前、吉良に何してやがる！？」
「お前達、そのテイマ―とキュピモンを俺達の村まで連れていけ」
「は？なぜですか？」
「いいから、早くしろ！！」
「・・はっ」
―催眠効果！！
バットモンの目がカッと赤く輝いた。
バットモンは得意技の一つ、「催眠効果」で吉良とプットモンに発動させ、気を失わせた。ぐったりと力が抜けた吉良はブラックレオモンに荷物の様に抱えられ、そのまま眠り込んでしまった。
「吉良君！！」
サラは慌てて身を乗り出した。
「サラ！！」
―ファイヤーソウル！！
ミノタウルスモンがサラの足元にドッチボールほどの炎のボールを投げつけた！！
「・・きゃっ」
「危ない！！」
フローラモンが慌ててサラの身体を引き戻した。
「―あの小僧を返して欲しければ、明日の朝のオレの村で、てめえらのもつデジヴァイスと交換だ。・・ただし、この条件を飲まない場合は小僧の命はない者と思え」
それは、一方的過ぎる要求だった。
「・・てめえ、ふざけん・・」
拓人がカッとなったところを饗古が止めた。
「・・・本当にこのデジヴァイスを渡したら吉良様を返してくださるのね」
饗古が真剣な眼差しでミノタウルスモンを見とおした。
「ああ、・・オレは約束を折り曲げたりしないから安心しろ」
―・・いい目つきしてるな、この女。
「わかりました・・。では、明日お会いしましょう」
それを聞いたミノタウルスモンは頷き、手下を連れ、去っていった。
「・・お前」
おしとやかな印象の饗古に拓人は意外そうな表情で見た。饗古はにっこりと微笑んだ。

トレイルモンは大草原の中、レールの上を一生懸命走っていた。
どんやりとした曇り空を何となく見ていた故は、「一雨くるな・・」とぽつりと呟いた。

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