38、朝のできごと


それがここ無限フィールドにある聖なる神によって神聖な樹と魂に裁判を与えるまでに過ごす「庭園」を守護する神秘の女戦使の名。
可憐で美しい姿に、すべての者に癒しと導きを与えるような穏やかな笑顔。その反面、戦闘になるとまったくの別人といっていいほど凛々しく厳格でクールになり、罰を与える者にはキッチリと与えるという。
冥王となったアズ―ルはそうダーツから聞かされ、エリュシアテーラことエリアに仕える顔を隠した女官にその「庭園」につながる螺旋階段を登っていた。
今日は冥王アズ―ルとして一応挨拶しに来たのである。
―・・どんな人物なのだろう。
「まだ、着かないのか?」
「もうすぐでございます」
女官が指差す方向にランプがついた一枚のドアが姿を現した。女官はそっと古びた鍵をポケットから取り出して、鍵穴にいれ、扉を開いた。
パァッと、「朝」の光が一斉にアズ―ルの目に入ってきた。
「うっ」
「すぐになれます・・さぁ、こちらへ」
「あ、ああ」
アズ―ルはそう言われ、女官の後をついていった。
どこまでも広がって行く広大な敷地内にある庭園にアズ―ルは入ることとなった。
竜に似た動物が空を飛びながら笛を吹き、天使と悪魔の子供達の魂をつれて楽しそうにしていて、どこからか鳥のさえずりが聞こえてきた。
「―楽園って感じだな・・」
「ええ、ここは傷つき、悪しき魂を安らげる為の「楽園」です」
「!」
アズ―ルの何気ない一言が女官の耳に入っていたようで、アズ―ルは少し頬を赤くなった。
その時、パラパラと葉っぱがアズ―ルの頭上から降ってきた。
「?何だ?」
アズ―ルが顔を上げてみると、上呂を持った赤いチェックのワンピースを着た金髪のロングヘアの天使の少女がスカートをなびかせ、木の間に咲いている黄色い花に水を与えていた。
ツルッ
彼女が近くを飛んでいる蝶に気をとられ、足を滑らした。
「あっ」
―そして、宙へと投げ出された
「きゃああっ!!」
「エリア様!」
「!危ない!!早く、羽広げろ!」
「?・・え、あ、あの!?」
突然、聞こえてきた少年らしき声に落ちていく少女は思わず慌てて、羽を動かしたが上手く行かずそのまま落下し、アズ―ルの目の前に落ちた。
ビチャ・・
運悪く水溜りを顔にあびてしまった。
「・・大丈夫か?」
アズ―ルが心配そうに少女の近くに近寄ると、少女はハンカチでごしごしと顔と髪についた泥をふき取り、バッと顔を上げた。
そして、明るく輝くような笑顔をアズ―ルに向かって笑って見せた。
「えへへっ、恥ずかしいですね。初めて来た方にこんな所みしちゃて」
「いや、そんな事は・・」
「あら」
少女は何かに気付いたように覗きこむようなポーズでアズ―ルの顔をじーっと見た。深く透き通るような紫紺の瞳で覗きこまれ、アズ―ルは思わずときめいてしまった。
「・・な、何?」
「あなた、もしかして今日来られるっていう冥王アズ―ル様?」
「・・そうだが・・」
少女はパッと起きあがって、
「―ようこそ、来られました!私はこの「庭園」の主・慈命戦女エリュシアテーラと申します。よろしくです!」
・・・え。
アズ―ルは思わず気が抜けたような、意外そうな表情を見せた。
「・・・本当に?」
「はいっ」




© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: