紅蓮の記憶 銀の海の胡蝶(十二国記)


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キャラクター紹介
神山拓人―15歳になったばかりの中学3年生。巧州国の王に庚麟によって選ばれるが本人はまだ知らない。元・陸上部のエースだったが、足に故障を起こし辞退した。その事に付いては複雑な思いを持っている。性格は、活発的でそれなりの正義感を持ち、時々わがままで子供っぽくなる性格。恋愛に関しては鈍い所があり、いまいち女性の扱いが下手である。

神山姫乃―16歳の高校一年生。拓人の実の姉。弟の拓人に少々過保護・・弟思いな一面を持つ。明るく前向きでしっかり者な性格で、面倒見がいい。強気な反面、いじけやすい。小学生の時に蒸発した母親に今も複雑な思いを抱いている。弟達と一緒に十二国に流される。

八代彼方―拓人と姫乃の幼なじみ。もうすぐ15歳。普通の人には見えない者の姿が見えたり、話す事ができ、また人の感情の一部を読み取れるという不思議な能力を生まれつき持ち、周りから敬遠されてきた。この年のわりに落ち着きさを持っていて、物事を他人事のように捉える所があるマイペースな性格。無頓着な風なわりにお人好しな一面を持つ。

天宮葵―姫乃の部活での後輩。14歳。運動神経抜群であるが、実はかなづち。自分の事を「僕」と呼ぶイギリス人とのクォーターの少女。性格は純粋で無邪気で天然ボケな一面がある。小学生の頃飛行機事故で両親を失い、瀕死の傷を負ったが奇跡的に助かった過去を持ち、現在叔母夫婦に引き取られて暮らしている。

廉祥(八代祐岐)―彼方の実の弟。14歳。6歳の時に虚海に流され、十二国に来た。
芳国の恵州坂県に在住。周りから見ると無口で無愛想で、傍若無人な一匹狼タイプなのだが、なぜかほっとけないタイプらしい。本人はその事にあまり気付いていない。
庚麟―巧州国の麒麟で、女性。拓人を王に選定したものの、離れ離れになってしまう。おっとりして優しげで天然ボケのような発言をする性格だが、物怖じしなく策略家な一面を持つ。王である拓人には、深い愛情と期待を抱いている。
峯麒―芳極国の麒麟で、男性。麒麟では珍しい水色の髪を持っていて、現在、蓬山で大切に女仙達と女怪に育てられている・・はずだが、蓬山から家出して、現在彼方と旅をしている。             
             序章
空と大地が反転した。
観客席で見ている父や姉の姿もゆらりと揺れた。
拓人はその時何は起こったのかはっきりいってわからなかった。
拓人は両隣の選手にはさまれ、長距離のコースを走っていて、やっとその選手達の間から抜け出た所で突然足に激痛が走った。
さっき踏まれた右足に激痛が走り、感覚がなくなり気がついた時には拓人は足を押さえてその場に倒れこんでいた。
「3番の選手が倒れたぞ!!救急班、急いで駆けつけろ!」
「は、はいっ!」
真っ青な空の下、やけに運営委員達が騒いでいた。
「・・・・っ」
・・・って・・、いてえ・・・。スゴク痛い・・。一体、何が起こったんだ?
・・・起きないと・・、オレは皆に部活の仲間に期待されてるんだから・・。
それにしても・・、周りうるさいな・・・。
彼、神山拓人は陸上部で上級生にも期待されるほどのエース的存在で、10年に1度しか生まれない逸材であった。
その事が拓人を一層頑張らせ、実力の倍のちからをいつも出させていた。だから、彼は期待を裏切らないためにも、こんな所で踏み止まるわけにはいかなかった。
拓人は身体を何とか動かそうとしたが足の激痛のせいで動く事ができなかった。
「拓人!!」
それを見た姫乃が急いで拓人の元に駆けつけた。
「~~!!」
痛みが一層拓人を襲った。
「・・くっ」
拓人は再び床にその身を倒れこむ結果となった。

「―残念ですが・・」
病院に運び込まれ、拓人が医者に言われた事はただの骨折だと思っていた拓人にとって、冷たく冷えたものだった。
「・・・え?」
「ですから、神山さん。貴方は2度と陸上はできません・・アキレス腱が切れているんです」
「そ、そんな冗談を・・。オレ、だって陸上部でまだまだやりたい事だってあるし・・。いやだなあ、先生ったら」
あははと軽く笑って見せたが、どうもうそとも思えず拓人は苦い表情を浮かべていた。
「・・・・」
「・・・は」
医者はもう一度言った。
「残念ですが・・」
「・・!!」

世界の中心に蓬山と呼ばれる聖地がある。麒麟が生まれ、王の選定をする祟山の東岳の山頂、蓬虚宮。
そこに6年かけて成長した麒麟がいた。
「お待ち下さい、康麟様」
麒麟に仕える女仙の一人、美華が巧州国の麒麟、康麟の姿をやっと見つけて声をかけた。
「あら、美華、どうしたの?そんなに息を切らして」
康麟がゆっくりとした笑顔を浮かべながら使令であるサライの顎を撫で、穏やかな口調でそう言った。
柔らかく優しい光が彼女達を包んでいた。
「どうしたのではありません、康麟様。今すぐ、我らの元に戻ってください。貴方様の選定を受けたい方々がすでに広場に集まっています」
康麟はまたニッコリと微笑んだ。
巧州国に接するのが令巽門、一年に1度しか開かない四令門の一つである。蓬山に訪れて、麒麟に天意を諮ることを「昇山」と言う。
今日は、その2日目だった。
「わざわざその人達に会う必要は無いわよ、美華」
「・・・と、言いますと?」
「王気を感じたんです。それもかなり遠くの方から」
「!!」
康麟は、使令ーサライを跳躍させ、日の光に躍り出させた。サライは、鮮やかな蓬虚宮の屋根の上へと駆け上がっていった。
「それでは、美華。行ってくるわね、私、王に会いに行くわ」
康麟ははっきりそう言った。



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