第2話―君がオレのサポーター？

この前線基地Ｄゾーンのボス、均整のとれた身体を持つ魔章君ミツヒデが盃を片手に不可不思議な表情を浮かべ、膝を折り部下の1人、櫻陀公主シルヴィアの顔を見た。
「はい・・」
凛々しさと強い信念を持つこの女悪魔は自ら堕天使の道を選んだシエルの姉に当たる女性である。
「そうか・・あいつが誰かにあの力を与えたのだな・・」
「？―あの力とは？」
「お前には知らなくて良いものだよ、シルヴィア」
「はあ・・・」
「ほっ、報告に来ました鉄壁女王直属の汗ッ太です」
冷や汗っかきの暴守（ボーガン）がハンカチで汗をふきながらミツヒデの前に参上した。
「・・・落ち着きなさい。ミツヒデ様の御前ですよ」
「はっ、はい・・・！」
「で、報告の内容は？」
「・・・・・鉄壁女王様の元に預けられていた我らの秘宝が盗賊に盗まれました」
それを聞いて、ミツヒデの表情が驚愕で激変した。
「何！？」

―くどくどくど・・。
「～～・・・」
タカトは現在目の前で起こっている状況に大分不満を持っていた。
なぜか、正座をさせられていた。
タカトの目の前には、父親であるカンジ―の姿と、そのカンジーの服のすそをぎゅっと握り顔を覗かせている幼女の姿があった。
風礼天使ミラーナ、タカトの妹でタカトが大好きなおとなしい女の子だ。
容姿は、カンジ―とジャンヌをあわしたような感じだ。
「わかりましたかっ！次からは勝手な行動は控えて下さいよ！」
「・・は、はい」
・・ったく、面倒くさいな・・父さんは。
「怒ると怖いな～、カンジ―さんは」
と、デミアンが横たわるベッドの上に腰掛けるスバルがぽつりと呟いた。
そこへ、セバスチャンが濡れたハンカチをもって入ってきた。
「あ、連絡もうしたんですか？セバスチャンさん」
「は、はいッ。だんな様がすぐこちらにこられるそうで」
「え、タケルさんが・・？」
「ええ、仕事がこの近くだったらしくて」
「・・・父さん」と、タカトが目をキラキラさせてカンジ―の元に歩み寄った。
「―-それって、父さんとこの世界を救ったっていう英雄の星騎使タケルがここにくるってこと？」
わくわくして、楽しさが止まらないと言った感じの瞳でタカトが拳を握り、カンジ―を見上げながら言った。
カンジ―とスバルが「うわ・・」と言った感じでタカトを見た。
「・・え、ええ」
「オレ、外に出てようかな」
「えー、何でだよ～？せっかく、英雄に会えるってのに―」
「オレ、そーゆうの興味ないし」
スバルがそう言いながら、ドアをあけようとした瞬間、勝手に開き、
「――デミアン～！！」
「！？」
煌天使フシールが飛び込むようにスバルに抱きついてきた。
な、何、こいつ？
「フシール、そんなに急がなくてもいいと思うぞ～」
どこかのんきさが入った声がドアの向こう側から聞こえてきた。
「―この声は・・・、父さん？」と、そこでデミアンが目を覚ました。
「あ、デミアン」
そこで、フシールがバっと、スバルから離れデミアンの元に駆け寄った。
「―大丈夫？デミアン」
「うん、気絶してるだけだったらしいし」
？？？
「何なんだ、一体・・」
ガシャァァン！
タケルが持っていた鞘を落とし、表情を驚愕で一変させた。
「？タケルさん？」
「父さん？」
タケルはそのまま部屋に入ってきて、驚愕したままスバルの前にゆっくりと歩み寄った。
「・・・・ア、アズ―ル？」
「は？」
またも、スバルははてな顔になった。

「～何ですって！？間違いだったぁ？どう言うことよ！？オババ！！」
水晶球を持った見た目20代後半の美しいプロポーションを持った占女ヘアラにシエルは食って掛かった。
ここは、パラダイス☆スターゾーンから離れた位置にあるシエルが住んでいる∩桜花ゾーンである、ちなみに。
姿形が20代のままなのは、時間の魔法で老化を止めているかららしい。ちなみに、彼女はシエルの育ての親で、神官長の位を持っている。
「く・・首しめるな・・・、死ぬって・・」
「・・あ、ごめん。オババ・・つい、興奮しちゃて・・」
「・・・ったく」
ヘアラは息を整えながら、すっとシエルに1枚の写真を取り出した。
「？この子は？」
結構可愛い顔してるけど、おこちゃまじゃん。
「お前が探してた戦使にこれからなる炎天大司タカトだよ」
それを聞いたシエルがどんどん表情を変え、驚きの表情へと変わった。
「え・・・。ええ～～！！？この子が～！？うっそ～～」
やだ、私こんなお子ちゃまに仕えるの～？と、いかにも不満ありげにシエルが大声でヘアラに言い放った。
「・・お子ちゃまって、お前と同い年くらいだろ」
「女の子と男の子とじゃ、同い年でも全然違うの！」
「・・・」
ヘアラはそんなシエルを見ながら笑うしかなかった。
ゴォォォォォ～・・
そこへ、台風貴姫ミルミルが現れた。年は、シエルより年下に見える。自分の頭につけられた避雷振に磁力を与え、強力なエネルギー体を作ってシエルに向かって無邪気な笑顔なまま攻撃の一撃を放った！
「あはは～、しんじゃえ～！！」
「きゃああああああ！！」
「シエル、危ない！」

ドッカカカ――――ン！！

「！？シエルの家が爆発した？」
「・・なっ？」
シエルと同じゾーンに住む人々が空に上がった黒煙に驚きと困惑の声をあげた。
ビリビリ・・・
身体の周りにつけられた紫色の羽衣の能力で、宙に身体を浮かせているミルミルが傷つけられたヘアラとそれに「オババ！？」と悲痛な声を叫び、ヘアラの身体に抱きつくシエルの姿につまんなさそうにこんな声をあげた。
「なぁんだ、はずしちゃったぁ。つまんないおばさんなんかのスピリットなんかいらないのに～。それに、この子もはずれちゃんみたいだしぃ。転輪玉！」
ミルミルが黄色の水晶球を自分の手の上に現して、シエルにスッと差し出した。
「でも、役立たずなあんたのスピリットでも捧げれば、あのお方の復活に近づくのよね～」
「・・・な、何を・・」
「じゃあ、死んでね、桜華天女シエルお姉さまｖｖｖ」
「！！」
シエルに戦慄が走った！

――数時間後、カンジ―宅。
じ～～・・・。
先程から、ずっとタケルが目の前にいるスバルの顔を見ていた。
スバルは、沈黙を守って微妙な顔つきでいた。
「父さん？」
「タケルさん？」
「だんな様？」

「・・・すげえ・・、広い世の中だと思ってたけど、またこんな感じの顔に会えるなんて・・」
「・・・オレの顔、そんなにそのアズ―ルって人に似てるんですか？」
「え、うん、まあ」
雰囲気にすごく近いんだよな、目の色もまったく同じだし。
「―何してるんだ？2人とも」
その声を聞いた瞬間、スバルの身体が凍りついた。
・・・こ、この声は・・。
さっき締めたドアがゆっくりと開き、ロココが親しげな笑みを浮かべながら赤く長い髪を翻して現れた。
「・・あ、ロココさん？」
バンッ
スバルが突然ベッドの横にある窓を豪快に開いて、そこに身をかけ、
「オレ、うちに帰るわ！」
「？お前、どしたんだ、顔が真っ青になってるぞ」とデミアンはスバルに声をかけたが、スバルは気に留めず、外へと出ようとした。
ガッ
「！？」
「久しぶりだね、スバル君」
ニコニコとロココが笑みを浮かべながら、恐る恐る顔を向けてきたスバルに静かに言った。
「・・・お、お師匠様・・」
何で、あんなにびくついてるんだろとタカトは二人を見ていたが、ある少女の姿がタカトの目に映った。
ロココの後ろには、なぜかシエルの姿があった。
「？君、誰？ロココさんの知り合い？」
タカトが、黙っているシエルの元にゆっくりと歩きながらそう言った。
「私、あんたをこれからサポートする事になった桜華天女シエルっていうの、よろしく」
「・・え、君がオレのサポーター？」
タカトは不可不思議な表情を浮かべた。

「・・・戦使様」
扉をゆっくり開け、ふらりとした身体つきでリーノアが皆の前にその姿を現した。
「あっ、起きたんだ」
「うわ、すっごく可愛いじゃん！！き、君の名前は！？」と、リーノアの姿を見たデミアンが素早くリーノアの前に進み出て、その手を握って嬉しそうに言った。
フシールはそれを見ていて不満ありげな表情を浮かべた。
「聖天天女リーノアです・・あなたは？」
「オレ、聖魔悪魔デミアン！よろしくな！」
「・・・！では、あなたも！」
リーノアがハッとなって、デミアンの両手をぎゅっと握った。
「・・・え」
デミアンが頬を赤らめた。
「――お願いします。デミアン様、スバル様、タカト様、この世界を妖魔王から救う為に天魔晶の欠片であるマガタマを探す旅に出てください」
「「・・・・は？」」
タカトとスバルがはてな顔になった。
デミアンもだが・・。

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