第10話ータカトVS盗れリス?


その事実を伝えられたポーチに迫るように大声でそう言った。
「え、ええ」
「くっそ~、あのチビ、オレのアンパン勝手に食った上こんな卑劣な事をするとは~」
「・・タカト、アンパンと宝石を一緒に比べない方がいいですよ。タカトの買った安物のアンパンより、宝石はもっと価値あるものなんですから」
何気にフォーレのその一言はタカトの胸にぐさりときた。
「・・くそっ、このオレがいてこんな事態が起こるとは・・」
「デミアン・・」
「―悪トレスさん、それで盗まれたブローチってのはいくらくらいの価値があるんです?」
いつもの格好に戻ったスバルが冷静に鳩ポリスに事情を聞かれている悪トレスにそう聞いた。
「そうねえ・・、私もファンの方に貰った物だから詳しくは知らないけど、何でも珍しい鉱石を使ってるらしくて考古学的価値があるって言ってたから時価数億かしら」
「時価数億~!!?」
タカトとフシールが思わず口をそろえて叫ぶように驚きの声を上げた。
「・・び、びっくりした。耳元で怒鳴るなよ」
デミアンはゆっくりと息を整え、そう言った。
「時価数億あったら、生活費だけじゃなくてオレが住んでるアパートも新築できるかもな~」
「・・・・それ、子供が言うセリフなの?」
コーラルはそのスバルの何気ないセリフに苦笑いを浮かべながらぽつりと言った。

「Dラックゲートオープン!!」
デミアン、タカトが叫ぶといつも通りゲートを開いた。
「・・悪トレスさん達、ほっといていいのかな」
シエルのその言葉にデミアンが反応した。
「?シエル、どういう意味だよ」
「いや、だってさあんな状態の悪トレスとこんなんで別れて良いのかなって」
「・・まあ、そうだな」
「そうですね」
「―・・だからって、私達がどうこうできるわけじゃないでしょ」
「フシール?」
・・何か、いつになくクールだな。
「じゃ、行くわよ!」
その瞬間、タカト達は真っ白な光に包まれた!

次に目を覚めた瞬間、タカト達はヘルスゾーンの湯浴み天女が管理する露天風呂の真上にいた。
「いっ!?」
バシャアアアア!!
タカト達が熱い温泉の中に真ッさかさまに落とされた!
「きゃああああ!」
女性独特の甲高い声が鳴り響いた。
「な、何なの、貴方達は!?」
「え、えっと・・・」
デミアンが素早く湯浴み天女の手を掴み、
「お姉さん、僕と素敵なひとときを過ごしませんか?」
「はぁ!?」
「デミアン!」
「どうなされました、湯浴み天女様!!」
そこへ、ドタバタと不用泥棒と従業員が駆け込んできた。
「きゃあああ!こないで~!」
湯浴み天女が顔を真っ赤にしながら、熱い湯を不用泥棒に投げつけた!
「あっちい~!!」
「あれ、スバルは?」
タカトは湯の中にスバルの姿がない事に気づいた。
「オレ、ここ」
後ろの方を振り向いて見ると、なんとスバルはタオル姿の千舞道士にお姫様抱っこされていた。
「・・大丈夫か?」
千舞道士にじっと見つめられ、なぜかスバルは慌ててしまった。
「ええ、まあ、どうも有り難うございます」
「ずるいぞ!スバル、そんな綺麗なお姉さんに抱っこされて!」
「・・お前、どっちなんだよ」
「あの、いいかげん、スバル様を降ろしてくれませんか」
「・・あら、千舞道士さん、来てらしたの」
「―何よ、スバルッたら」
シエルは、なぜか不機嫌そうだった。
「?どうかしたのか?」
「別にタカトには関係ないわよ!」
「ふーん・・」

タカト達は、湯浴み天女に連れられ、客室にある広間へと通された。
「―へえ、あの盗れリスって、不用泥棒さんの娘さんなんですか」
クロノがちょこんとデミアンの横に座って、茶をすすりながらニコニコと笑いながら言った。
「・・ええ、まあ。ちっとも似てないでしょう。それに、オレはあいつから見たらただビクビク怯えている臆病者にしか見えないんだろうな」
「?どういう意味です」
「デミアン、オレのドラ焼きとるなよ!」
「いいだろ、別にお前さっき3個も食べたんだから!」
1個のドラ焼きをかけて、どたばたと隣で暴れるタカトとデミアンに、シエルはいらいらしていた。
「・・・本当に子供なんだから」と、フシールは呆れたように見ていた。
「実は、オレ今この聖魔和合界を襲っている奴ラ・・デザスターと仲間と一緒にあいつらが現れた日から戦いつづけてたんですよ。でも、ずっと負けっぱなしでオレらの戦力もギリギリになってきて・・。だから、オレ、オレ達が持っていた財宝や一族の土地を渡すかわりに命だけは助けてくれと頼みこんだんです」
「・・・そうだったんですか」
「盗れリスにはそれが卑怯みたくに思えたらしくて・・」
「・・それって、単なる親子げんか?」
今まで黙っていたスバルが、ジュースを片手に笑顔で不用泥棒に聞いた。
「・・ええ、まあ」
「じゃあ、仲直りしねえとな、おっちゃん!」
話に関わってなかったタカトがにんまりと笑って不用泥棒の肩を叩いた。
「・・そうですね」
そこへ、窓の方からカードがクロノに向かって差し入れられた。
「・・誰!?」
クロノが慌てて、窓のほうに走ると誰の姿も無かった。
「いない・・、逃げてしまいましたか」
木の下には、真っ逆さまに落ちて気絶している盗れリスの姿があった。
不用泥棒がそれを拾い上げると、
「・・これは、盗れリスからだ!!湯浴み天女様が保管なされているマガタマが入った水晶で出来たウサギの置き物を盗むってかいてある!」
「何ですって!?」
「・・・・・よく、こんなへたくそな字で分かるな」と、後ろからシエルとデミアンがぽつりと言った。
そのカードに描かれている字は幼稚園児が下手に書いたような、殴り書きだった。
「あ、不用泥棒さん、勝負申し込まれてますよ」
「?どこに・・。――あ、本当だ」
カードの裏には小さく「お父様、勝負!!」ミミズが通ったような字で描かれていた。バン、とタカトが力強く机を叩いた。
「タカト?」
「・・ふっふっ、オレに勝負持ちこむとはいい度胸じゃないか」
「・・いや、お前じゃないんだが」
「まっ、オレが当然勝つからな・・」
・・・どうやら、デミアンの声が聞こえていないようだ。
その時、力強く襖が開けられ、日本の武士の格好をした男がどかどかと入ってきた。
「――失礼、ここに昴天使スバルなるものがいるというのは本当か!?」
「あ、あの・・」
「私の名は探出武者!我が主君、暁里佐久耶の無念、その命で償ってもらうぞ!」
スバルは彼の体から微かな妖気みたいなものを感じた。
「!」
「お、おい、スバル・・お前、何かやったのか?」
「さぁね・・」
スバルはすくっと立ち上がり、探出武者の前に進み出た。
「タカト、じゃ盗れリスの事は任したよ」
「おお!」
「?何だ、貴様は・・」
「オレが、昴天使スバルだ。―オジさんもオレの命狙ってるの?やっぱり」
スバルは穏やかに笑いながら、神魔ガンを備えた。
「―・・無論」
探出武者は合わせたように剣をスバルに向かって、構えた。
「ちょっとちょっと、こんな所で戦いなんて・・」
湯浴み天女がそう言った瞬間、スバルは窓から身を乗り出し、木を伝って、探出武者に目配りしながら立ち去っていった。
「待て!逃げるか~、卑怯者~」
タカト達は呆然とぽかんと口を開けた状態になっていた。
「・・何なんだ」

とりあえず、タカト達は湯浴み天女にそのウサギの置き物を見せてもらえる事となった。その置き物は随分と警備も多く、24時間監視カメラがあちらこちらで備え付けられ、活動していた。
「・・準備万端だな~」
「見て、デミアン、鳩ポリスさん達までいるわ」
「本当だ、しかし鳩ポリスさん、フシールとはまた違った魅力があるよなv」
「デミアン・・(怒)」
「冗談っすよ」
デミアンがびくついた表情のまま苦笑いで睨むフシールに言った。
「・・タカト様、なぜ、探出武者はスバル様を狙ってきたんでしょうね」
「さあ、オレに聞かれても」
「――・・これです」
湯浴み天女が皆にウサギの置き物を見せた。
「へえ、これが・・」
ウサギの置き物からは、マガタマの放つ輝きがひっそりと見えた。
「――」
フシールはその輝きに思わず心を奪われそうになった。
「―では、とりあえず、ここに私の部下を何人か置きますので。いいですか?湯浴み天女さん」
「はい、わかりました」
「「あっ、オレ達も協力するよ!!」」
デミアンとタカトの声がはもった。
ミニ鳩ポリスの部下がそれぞれウサギの置き物の周りやその部屋の周辺、この母屋に配備され、タカト達も警戒心を怠らず、常に緊張感を持って活動していた。
不用泥棒はさすがに立場的にそこにいるとやばいので、客室に身を隠した。
タカトはきりっとした表情でウサギの置き物の前で剣を持って座りこんでいた。
ガチャン!!
1階のほうでその時何かが割れる音がした!その瞬間、全ての電源が一気に切られた!
「来たか!!」
ミニ鳩ポリスも念の為、数人の部下をその場に残し、タカトやデミアンの後を追った。
シエルも追いかけようとすると、窓が一斉に開いて風がザァ―と部屋の中を駆け抜けた。シエルが振り返ると、満月をバックに闇夜の中から盗れリスが現れた。
「盗れリス参上!さ、お父様勝負よ!」
盗れリスはビシッとポーズを取って格好良く決めた。
「―盗れリス?」
シエルは慌てて数人の刑事達と一緒にウサギの置き物の周りをガードした。
そこへ不用泥棒が部屋に入ってきた。
「・・盗れリス、オレを倒したいならいくらでも倒せば良い。しかし、マガタマはお前にはやらんぞ」
不用泥棒がキッと盗れリスを見据え、構えを取った。
「・・なっ、お父様、何よ、その態度!娘のあたしじゃ相手にならないというの!?それとも戦うのが怖いの!?」
「・・・・」
「―何で、黙ってるのよ!」
やっぱり・・、この人は・・。
盗れリスはぎゅっと歯を食いしばった。
盗れリスは不用泥棒に飛びかかった!
「!」
バン!
「来たな!盗れリス!」
「!!炎天大司タカト!」
「オレと勝負だ!!」







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