第11話ーランフェンとエリフェアの罠
「―貴様・・っ」
と言って、倒れていく探出武者の身体から赤い闇が吹き飛ばされる様にして出てきた。
その赤い闇からは邪悪そうな瞳が禍禍しいくスバルを睨んだ。
スバルは、蒼く透き通った光が吹き溢れる剣を振り下ろして、冷たい瞳のまま赤い闇を見た。
「良く俺がとり憑いているのがわかったな、さすが何万人の命を奪った忌み子なだけある」
赤い闇はにやりと微笑んだ。
「―・・消えろ」
スバルは赤い闇を引き裂いた。
「・・・じゃ、タカト達の所戻るか」
その頃、タカトと盗れリスは一対一で取っ組み合いをしていた。
盗れリスがキックをかわそうとしたら、次はタカトに目潰しの薬をくらわしたり、タカトは盗れリスの隙をついて剣を振りかざしたり・・。
「・・・・」
それを見ていた不用泥棒は真剣な表情になって、二人の間に入り、戦いを一方的に止めさせた。
「不用泥棒さん！？」
「お父様！？」
「・・無駄な戦いはやめなさい。２人とも」
そこへ、鳩ポリス達も戻ってきた。
「ちっ」
盗れリスは数人の警官を武術で倒すと、メタルヨーヨーでウサギの置き物を包んでいたガラスケースを割って、器用にウサギの置き物を奪い取るとそれを自分の手に引き寄せた！
「盗れリス！！」
「・・これは、ランフェン様達のために使ったほうが、強い人達が使った方が夜のためよ！！」
盗れリスは自信満々に言い放ち、鳩ポリスの部下の警官やシエルやフシールを押しのけ、用意していた巨大な風船に飛び乗り、！
「―・・ランフェン？」と、警官の一人が不思議そうに首を傾けた。
そして、次の瞬間、風船に向かって針を投げると、それが偶然にもあたり、一気に空気が抜け、力が抜けた様にふらふらとゆっくり落ちていった。
「きゃあああああ～、嘘～！？落ちる～」
ドドーン！！ドサドサ！！
ウサギの置き物は無事だったが、盗れリスはいかにも漫画的な落ち方をしていた。
「・・・古典的だな」
ぽつりとデミアンが言った。
それを千里眼でリゾートホテルの屋外プールで見ていた少女ーエリフェアがいた。
「・・・思ってたとおり、おまぬけな方ね」
「最初から期待はしてなかったけどね★」と、プールの中からビキニ姿のランフェンが飛沫を散らしながら、楽しそうに言った。
「バカとはさみは使いようって言いますものね」
「そうね」
ランフェンとエリフェアはクスクスと笑った。
陽光が差しこみ、盗れリスは澄んだ空気の部屋の中ふっと目を覚ました。
「・・ここは」
盗れリスが目を覚ますと、そこには湯浴み天女、不用泥棒の姿があった。
「お父様！？」
盗れリスは素早く体勢を整えようとしたが、打ち身のせいで身体がいう事を聞かず、再び毛布へと倒れこんだ。
「・・盗れリス」
「お父様、・・私を助けたの？」
「そりゃあ、娘だから当然だろう」
不用泥棒は笑顔でそう言い切った。
「でも、マガタマを盗もうとするのはどうかと思うぞ。あれは、お前が扱えるものじゃない」
「どういう意味？」
「マガタマは、心にやましいモノを持った者や欲望に縛られた者の場合、強大な力を与える代償に人生そのものを狂わし、全てを壊す。だから、マガタマは清い心の者の純粋な思いに浸しておいた方が良いのだ」
「でも、強いものが世界を引っ張るのは真理だわ。お父様が、そう教えてくれたんじゃない」
「それは、そうだが・・」
「私は強くなりたいの。誰よりも強くて格好良い怪盗とか、英雄とかになりたいの・・！だから、ランフェンさま達デザスターの仲間になるの！」
「盗れリス！」
その部屋の前では、心配そうにはらはらとした様子のタカト達が扉の隙間からその部屋の中を伺うようにして覗いていた。
ただ一人、クロノの隣にいるスバルは不用泥棒親子の事なんてまるで興味が無い様に呑気に欠伸をしていたが・・。
「・・仲直りできるといいんだけどな」
「ああ、ケンカしてる所なんか見てて嫌な気分にしかならないもんな。な、フシール」
「ええ、そうね」
その時、突如扉が開かれ、マガタマを持った盗れリスは爆弾を取り出すと壁が薄そうな倉庫に投げ込んだ！物凄い轟音といっしょに刑務所が揺れた！
物凄い強風がタカト達辺り一体を包み込んだ！
シエルは、森林へと消えて行く盗れリスの姿を煙の中から微かに捕えると、「待って！」と言って追いかけた！
「待てよ、シエル！」
タカトに続いて、フシール達も追いかけていった！
盗れリスは、不用泥棒と技術を争いながら、ランフェン達と約束したこの町で一番でかい展望台へと森を駆け抜けていった！
「・・しつこいな、お父様は・・っ」
苛立ちを隠さず、チッと盗れリスは舌を巻いた。
盗れリスの目に、展望台で景色を眺めているエリフェアの姿が入った！
「エリフェア様！」
「―盗れリス」
エリフェアは優しげで親しみのある笑みを浮かべて、盗れリスを迎えた。盗れリスは、エリフェアの前に降り立った。
「あれ、ランフェン様は？」
「後、ちょっとで来るわよ。マガタマはちゃんと持ってきたの？」
「はい、これです！！」
盗れリスはいかにも嬉しそうに表情を明るくすると、エリフェアにマガタマを見せた。
・・あの顔は。
不用泥棒はふいに表情を変えた。タカト達も追いついて、その場面に出くわした。
「盗れリス！その娘から離れろ！」
「――・・え？」
「これで、貴方の役目は終わったわ」
「エリフェア様？」
そこへ、毒破師ランフェンが、怪しい笑みを浮かべたまま、毒草が入った扇を持って空中に突如現れ、盗れリスに毒針をその扇から何本も向け、切り裂こうとした！
「！？ランフェン様！何で！？」
「―――・・盗れリス！！」
その瞬間、不用泥棒の声が辺り一体に鳴り響いた！！
真っ赤な血が盗れリスの目の前で広がり、血塗れになった不用泥棒はその場へ倒れこんだ。
「お父様！」
盗れリスは血相を変え、不用泥棒の元へと駆けつけた。
「・・・盗れリス」
不用泥棒は盗れリスをかばったぐったりとした身体になっていた。
「・・何で」
「―子供を守るのは、親の役目だからな。・・大丈夫か？盗れリス」
「・・お父様っ」
盗れリスはぎゅっと不用泥棒の身体に抱きついた。
「ふん、下らない男・・。２度も同じことを繰り返すなんて」
「そうよね、私達が珍しく見逃してあげたのに。弱い奴が強い私達にたてつこうとするからいけないのよ」
「・・お前ら、それ、どういう意味だ？」
そこへ、ランフェンの前にデミアンが進み出た。
「あんた達、親子の里を滅ぼし、財産を奪ったたのは私達よ。まあ、あんなしょぼいとこ、簡単に崩れたけどね」
ランフェンがクスクスと笑いながら、楽しげに言った。
「あの時のあんた、不用泥棒のまぬけ顔はっきりいって、笑えたわ。ほんと、弱虫をいじめるのは楽しいわ」
「・・・よくも！！」
不用泥棒がランフェンに襲いかかった！
「あ、こら！」
「近づかないでよね。駒だったくせに」
ランフェンは、スッと邪眼で盗れリスを圧倒的エネルギーで弾き飛ばした。その身体をスバルが受けとめた！
「・・・・」
スバルは厳しい目つきでランフェン達を見た。
「あら、怖い～。お姉さま、行きましょう。これ以上、こんな奴らに付き合う必要はないわよ」
「そうね、行きましょうか」
ランフェンとエリフェアは寄り添う様に身体を密着させると、ゲートを開いてその場を立ち去ろうとした。
「待ちなさいよ！」
シエル、フシールとタカトがその瞬間、ランフェン達を自分達の方へ引き寄せようとした。
その瞬間、強烈な電磁波が２人の身体を通り過ぎていった！
「「・・・きゃああああああ！」」
「うわあああああああ！！」
「タカト！シエル！フシール！」
「―・・お父様」
不用泥棒が病院で目を覚ました時には、赤い夕暮れに染まる時刻だった。
「・・盗れリス」
「よかった、お父様が目を覚まして・・・。あのまま、目覚めなかったらどうしようと思ったよ」
盗れリスは、嬉しそうに涙ぐんだ。
「それと・・」
「？」
「ごめんなさい！！」と、盗れリスは力強く謝った。
「ごめんなさい、私、お父様の事誤解してた・・・！ごめんなさい、いっぱい酷い事言って！！」
それを聞いた不用泥棒は呆然とした表情を見せた後、優しく微笑んだ。
「・・・いいよ。オレも悪かった」
「ううん。私が悪いの・・・。お父様は、・・・世界一強くて、格好いいわ！」
「・・じゃあ、またオレの元で修行してみるか？」
「・・・うん！！」
「その前に今回の事があるからそっちを早く片付けないとナ」
盗れリスはとびっきりの笑顔を浮かべた。
その光景を同じ病室で見ていたタカト達はと言うと―・・。
「・・よかった～、仲直りできて」
タカトとシエルは穏やかな笑みを浮かべた。
「本当ですね・・・」
「やっぱり、いいなぁ。家族って」
「そうだね、フシール」
皆、何だか感激してるようだ。
「スバル様もそう思いますよね？」と、クロノはスバルに近づき、笑いながら尋ねた。
「――・・ばからしい。ってか、何かだんだん見ててあほらしいモノを見せられた気分だよ。オレは、早く、この場を去りたい」
スバルは本当に呆れたような、しょうがなさそうな表情を浮かべ、視線をソラして言った。
「オレ、ほんわか系苦手なんだよ」
「・・・スバル、お前本当感情冷めてるよな～」と、気分を害したように言った。
「それはどうも・・。タカト、早く次のマガタマを探しに行こうぜ」
「あ、ああ」
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